245 / 3,215
第一回石神家「子育て」会議
しおりを挟む
子どもたちのカレー大食い大会をよそに、俺と栞は考え込んでいた。
「タカさん、栞さん、カレー無くなっちゃいますよ!」
優しい皇紀が声を掛けてくれる。
もう三度も蹴りを入れられているのに。
「皇紀ちゃん! 余計なことを言わないで!」
また蹴られた。
別に俺たちはお替りしなくてもいいんだけどな。
食後の片づけをみんなでしている。
俺は栞を送るために外に出た。
「ちょっと途中で軽く飲んで来るから」
「はい、行ってらっしゃい!」
二重人格から戻った亜紀ちゃんが笑顔で送り出してくれた。
「どこかでちょっと飲みましょう」
「うん、飲まないといられないわ」
俺たちは近所の肴が美味い居酒屋へ入る。
静岡の港から食材が直送されるので、本当に新鮮で美味い。
最初から熱燗を頼んだ。
「まず、整理しましょう」
「うん」
「一つ目は、双子の今後について」
「そうだね」
「二つ目は、それに関連しますが、双子の言っていた『虚振花』の先がある、という話」
「それは重要ね」
「三つ目は、亜紀ちゃんのこと」
「うーん、それが大問題なのよねぇ」
栞は寿司をつまんでいる。
なんだ、お腹が空いているのか。
「まず一つ目ですが、これはもう習得した技はしょうがないですね」
「そうなんだけど、気になるのは他に何ができるのかということね。それと、あの「幹部」たちのこと。その子たちの仕上がりも気になるよ」
「俺も同じです。今度、花岡さんの道場で見てみますか」
「うん、それがいいと思う。技の種類によっては、本人に危険なこともあるから」
「分かりました。じゃあ、双子に話しますよ」
俺はカレイの煮付けを一口食べ、熱燗を流し込む。
最高に美味い。
「株の件はどうするの?」
「ああ、それは取り敢えず放置ですかね。先物はやらないようにさせれば、問題ないでしょう」
「そうね」
「元金まで溶けちゃっても、問題はないですから」
「なるほど」
一つ目の問題はこれでいい。
栞は寿司を食べ終わり、刺身の盛り合わせを注文する。
この店の魚介の美味さが分かったようだ。
俺は焼き鳥を頼んだ。
「じゃあ二つ目ですが、これは花岡さんに聞かないと」
「そうよね。うーん、もう石神くんには話しても問題ないかな」
栞はヒラメの切り身を口に入れ、驚きの表情を見せた。
熱燗を飲むと、ニコニコしている。
「あのね、あの『虚振花』は、花岡の長い歴史で編み出された、一つの頂点なのね」
「はい」
それはそうだろう。
恐らくは、銃器や砲に対抗するためのものだ。
航空機にも、ある程度は有効なのかもしれない。
「だから、それ以上となると、実は想像もつかないのよ」
「あの技の有効範囲と距離はどの程度なんですか?」
栞は俺の質問に、しばらく沈黙していた。
「ちょっと、それは答えられないかな」
やはりそうか。
「そうですか。俺は、それらが飛躍的に拡大する方法を、双子が手にかけていると思うんですが」
「!」
「まあ、これは双子自身に聞いてみましょう」
「分かった」
「じゃあ、三つ目」
「あー」
熱燗が空になったので、俺は追加を頼む。
「なんで亜紀ちゃんは、出来ちゃったんですか?」
「それは私が聞きたいことです! 石神くんが答えてください!」
栞が拗ねた。
「えーと、天才だから?」
「ぶー!」
なんだよ。
「双子ちゃんは天才よ。間違いない。ほんのちょっとの手ほどきで、あそこまで行っちゃうんだもん」
「そうですね。双子が話していたのは、チャクラのことですよね?」
「うん。まあ、花岡ではちょっと違う体系なんだけど、概ね解釈は同じね。むしろ、どうしてチャクラを動員したのかが不思議なくらい」
「手当たり次第に俺の本を読んでますからねぇ」
「ほら! やっぱり石神くんが原因じゃない!」
俺は、まあまあと言いながら、イカも美味しいですよ、と言う。
栞は刺身のイカの甘みに驚き、親指を立てた。
「「ムーラダーラ」って、一番下にある「根のチャクラ」のことですよね」
「ああ、石神くんって何でも知ってるのね」
「でも、双子はその下にあるって」
「それは話せない」
栞が拒絶する。
イカの刺身を追加する。
「じゃあ質問を変えますが、双子が天才なのは、二人の特殊な能力に関係していますよね?」
「それは間違いないわ。だからその能力で、花岡を超えるかもしれないのよね」
「それで亜紀ちゃんは」
「化け物ね」
「「うーん」」
俺たちは腕組みをして考えた。
「あり得ないのよ、あれは。手ほどきどころか、ちょっと双子の動きを見てただけじゃない」
「そうですよね」
「もちろん、私の実家でちょっと型を教えたわよ? でも、それだけの材料で、なんで奥義まで簡単に会得するの?」
栞も混乱している。
俺はイカを食べろと言う。
「もう話しちゃうけど、亜紀ちゃんが壊した格子窓ね。あれは20ミリの鉄芯が入ってました!、はい、何か言うことはありますか!」
装甲車を破壊できるレベルか。
「花岡さん」
「なによ!」
「ちょっと落ち着いて聞いて欲しいんですが」
「私は酔ってないわよ!」
「亜紀ちゃんと双子が協力したら、どうなります?」
「!!!!」
ほんのりと赤くなっていた栞の顔が、一気に蒼褪める。
俺も自分で言っておきながら、背筋が寒くなった。
「とにかく、この話は俺たちだけの秘密ということで」
「そうね、分かった。私も花岡の家には話さない。絶対に誓うから」
「お願いします」
「近いうちに、うちの道場に子どもたちを集めて」
「ええ、明日はどうですか?」
「もちろん」
俺たちは店を出た。
会計で、大将が「綺麗な奥さんですね!」と言い、栞は喜んでチップに一万円札を差し出した。
栞の家の前で、「また行こうね!」と言われた。
まだ、日常は残っているか。
「タカさん、栞さん、カレー無くなっちゃいますよ!」
優しい皇紀が声を掛けてくれる。
もう三度も蹴りを入れられているのに。
「皇紀ちゃん! 余計なことを言わないで!」
また蹴られた。
別に俺たちはお替りしなくてもいいんだけどな。
食後の片づけをみんなでしている。
俺は栞を送るために外に出た。
「ちょっと途中で軽く飲んで来るから」
「はい、行ってらっしゃい!」
二重人格から戻った亜紀ちゃんが笑顔で送り出してくれた。
「どこかでちょっと飲みましょう」
「うん、飲まないといられないわ」
俺たちは近所の肴が美味い居酒屋へ入る。
静岡の港から食材が直送されるので、本当に新鮮で美味い。
最初から熱燗を頼んだ。
「まず、整理しましょう」
「うん」
「一つ目は、双子の今後について」
「そうだね」
「二つ目は、それに関連しますが、双子の言っていた『虚振花』の先がある、という話」
「それは重要ね」
「三つ目は、亜紀ちゃんのこと」
「うーん、それが大問題なのよねぇ」
栞は寿司をつまんでいる。
なんだ、お腹が空いているのか。
「まず一つ目ですが、これはもう習得した技はしょうがないですね」
「そうなんだけど、気になるのは他に何ができるのかということね。それと、あの「幹部」たちのこと。その子たちの仕上がりも気になるよ」
「俺も同じです。今度、花岡さんの道場で見てみますか」
「うん、それがいいと思う。技の種類によっては、本人に危険なこともあるから」
「分かりました。じゃあ、双子に話しますよ」
俺はカレイの煮付けを一口食べ、熱燗を流し込む。
最高に美味い。
「株の件はどうするの?」
「ああ、それは取り敢えず放置ですかね。先物はやらないようにさせれば、問題ないでしょう」
「そうね」
「元金まで溶けちゃっても、問題はないですから」
「なるほど」
一つ目の問題はこれでいい。
栞は寿司を食べ終わり、刺身の盛り合わせを注文する。
この店の魚介の美味さが分かったようだ。
俺は焼き鳥を頼んだ。
「じゃあ二つ目ですが、これは花岡さんに聞かないと」
「そうよね。うーん、もう石神くんには話しても問題ないかな」
栞はヒラメの切り身を口に入れ、驚きの表情を見せた。
熱燗を飲むと、ニコニコしている。
「あのね、あの『虚振花』は、花岡の長い歴史で編み出された、一つの頂点なのね」
「はい」
それはそうだろう。
恐らくは、銃器や砲に対抗するためのものだ。
航空機にも、ある程度は有効なのかもしれない。
「だから、それ以上となると、実は想像もつかないのよ」
「あの技の有効範囲と距離はどの程度なんですか?」
栞は俺の質問に、しばらく沈黙していた。
「ちょっと、それは答えられないかな」
やはりそうか。
「そうですか。俺は、それらが飛躍的に拡大する方法を、双子が手にかけていると思うんですが」
「!」
「まあ、これは双子自身に聞いてみましょう」
「分かった」
「じゃあ、三つ目」
「あー」
熱燗が空になったので、俺は追加を頼む。
「なんで亜紀ちゃんは、出来ちゃったんですか?」
「それは私が聞きたいことです! 石神くんが答えてください!」
栞が拗ねた。
「えーと、天才だから?」
「ぶー!」
なんだよ。
「双子ちゃんは天才よ。間違いない。ほんのちょっとの手ほどきで、あそこまで行っちゃうんだもん」
「そうですね。双子が話していたのは、チャクラのことですよね?」
「うん。まあ、花岡ではちょっと違う体系なんだけど、概ね解釈は同じね。むしろ、どうしてチャクラを動員したのかが不思議なくらい」
「手当たり次第に俺の本を読んでますからねぇ」
「ほら! やっぱり石神くんが原因じゃない!」
俺は、まあまあと言いながら、イカも美味しいですよ、と言う。
栞は刺身のイカの甘みに驚き、親指を立てた。
「「ムーラダーラ」って、一番下にある「根のチャクラ」のことですよね」
「ああ、石神くんって何でも知ってるのね」
「でも、双子はその下にあるって」
「それは話せない」
栞が拒絶する。
イカの刺身を追加する。
「じゃあ質問を変えますが、双子が天才なのは、二人の特殊な能力に関係していますよね?」
「それは間違いないわ。だからその能力で、花岡を超えるかもしれないのよね」
「それで亜紀ちゃんは」
「化け物ね」
「「うーん」」
俺たちは腕組みをして考えた。
「あり得ないのよ、あれは。手ほどきどころか、ちょっと双子の動きを見てただけじゃない」
「そうですよね」
「もちろん、私の実家でちょっと型を教えたわよ? でも、それだけの材料で、なんで奥義まで簡単に会得するの?」
栞も混乱している。
俺はイカを食べろと言う。
「もう話しちゃうけど、亜紀ちゃんが壊した格子窓ね。あれは20ミリの鉄芯が入ってました!、はい、何か言うことはありますか!」
装甲車を破壊できるレベルか。
「花岡さん」
「なによ!」
「ちょっと落ち着いて聞いて欲しいんですが」
「私は酔ってないわよ!」
「亜紀ちゃんと双子が協力したら、どうなります?」
「!!!!」
ほんのりと赤くなっていた栞の顔が、一気に蒼褪める。
俺も自分で言っておきながら、背筋が寒くなった。
「とにかく、この話は俺たちだけの秘密ということで」
「そうね、分かった。私も花岡の家には話さない。絶対に誓うから」
「お願いします」
「近いうちに、うちの道場に子どもたちを集めて」
「ええ、明日はどうですか?」
「もちろん」
俺たちは店を出た。
会計で、大将が「綺麗な奥さんですね!」と言い、栞は喜んでチップに一万円札を差し出した。
栞の家の前で、「また行こうね!」と言われた。
まだ、日常は残っているか。
3
あなたにおすすめの小説
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
Lucia(ルシア)変容者たち
おまつり
恋愛
人は、ときに自分の中に「もう一人の自分」を抱えて生きている。
それがもし、感情の揺らぎや、誰かとの触れ合いによって、男女の姿を入れ替える存在だったとしたら――。
カフェ『リベラ』を営むリアと、雑誌編集者の蓮。
二人は、特定の感情を抱くと性別が変わる「性別変容者」だった。
誰にも明かせない秘密を抱えながら生きてきた彼らは、互いの存在に出会い、初めて“同類”として心を通わせていく。
愛が深まるほど、境界は曖昧になる。
身体と心の輪郭は揺らぎ、「自分とは何者なのか」という問いが、静かに迫ってくる。
一方、過去に囚われ、自分自身を強く否定し続けてきたウェディングプランナー・景子と、まっすぐすぎるほど不器用な看護学生・ユウ。
彼らもまた、変容者として「変わること」と「失うこと」の狭間で、避けられない選択を迫られていく。
これは、誰の記憶にも残らないかもしれない“もう一人の自分”と共に生きながら、
それでも確かに残る愛を探し続けた人々の、静かなヒューマンドラマ。
※毎日20時に1章ずつ更新していく予定です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる