富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
297 / 3,215

KYOKO DREAMIN Ⅱ

しおりを挟む
 「ホーク・レディはどうなったの!」

 アラスカの「タイガー・ホール」で、作戦司令室が混乱していた。
 司令官のプロトンは、作戦空域から送られてくるデータを睨みながら、部下たちを叱咤している。
 現在「ホーク・レディ」はロシア近辺にいるはずだ。

 「5分前にロシアの最新鋭戦闘機集団が全兵装を解放しました! およそ二百機からの一斉攻撃です!」
 「フェロン(Felon:重罪人)か」

 マッハ20を超える未知の推進システムと、1000キロメートル先からの先制攻撃を可能とする、ロシアの第六世代戦闘機だった。
 NATO軍からは「重罪人」と呼ばれ、その超絶の性能が恐れられていた。

 「コウキ・システムは!」
 「ほぼ同時に起動! しかし衛星リンクの一斉攻撃は、すべてを防ぎ切れませんでした」
 「巡航ミサイルの8割が中性子爆弾であった模様! ホーク・レディの殺傷を目的としていたと思われます!」


 「なんてこと!」


 「現場付近は電磁波障害のため、情報収集ができません!」
 「すぐに救出部隊を! 誰が行けるか!」
 「落ち着け、ヨーコ!」
 プロトンの右腕、ビッグ・フォレストが叱責する。

 「でも、あいつはあたしらの大事な友達だ」
 「分かってる。でもホーク・レディだって只者じゃない。俺たちの「命」が認めたネームドの実力者だぞ!」
 「そんなこと! でも」
 「いいか、まずは情報収集だ。お前の量子コンピュータは何でもできるだろう?」

 「うん。よし、現場の1000キロ周辺での情報を徹底的に解析する」

 「そうだ、クールになれ」
 「ありがとう。少し熱くなり過ぎた」

 プロトンの肩にビッグ・フォレストの大きな手が置かれた。
 プロトンは、その手に自分の手を重ねる。




 「3秒前に、ロシアの戦闘機集団が消滅!」
 「なに!」

 「周辺に強力なプラズマの拡散を確認! これはホーク・レディです!」
 「映像は取れるか!」
 プロトンは満面の笑みを浮かべ、涙を流した。

 「いえ、今も超高速移動をしているらしく、解析はできません」
 「いや、いい。やっぱり生きていたかぁ!」
 「攻撃と同時にマッハ800で移動したんだろう。あいつの速さは「虎」以外に追いつけないもんな」
 「良かった、良かったよ!」

 プロトンとビッグ・フォレストは抱き合って喜ぶ。





 「ホーク・レディから通信です」
 「よし、つなげ!」

 「ああ、プロトン。そちらではもう状況は分かっていると思うけど」
 「もちろんだ。でも一時は冷や汗をかいたぞ」
 「アハハ! なんだ、心配してくれたの?」
 「当たり前だ」

 「あんなの。プラズマジェットだって言っても、所詮は幼稚園よ。こっちは「虎」の奥義を授かってるんだからね」
 「そうだったな。柄にもなく狼狽えてしまった」
 「ありがとう。やっぱりあなたは親友ね」

 「よせよ」

 「これからロシアの全空軍基地を叩こうと思うんだけど、許可してもらえるかな」
 「いや、ロシアはディアブロ・アキに任せるから。あなたは引き続き各国のミサイルの状況を監視して」
 「え、アキちゃんが出るの? あちゃー、ロシアもかわいそうに」
 「でも、一瞬で終わるんだ。ある意味じゃ慈悲深いよ」
 「そうかもね。でも「審判」で生き残る人が一人もいないなんてねぇ」

 「仕方がないさ。ロシアは≪汚染≫が一際高い。南米はドラゴン・レディに任せるから随分と生き残る人間は多いだろうがね」

 「ヨーロッパは予定通り?」
 「ああ」
 「じゃあ、そっちも全滅かぁ。もう一度パリでフレンチが食べたかったな」
 「お前が自分で作ればいいじゃないか」
 「私は料亭の娘よ! 頭がおかしくなったって、フレンチは作らないの」





 作戦行動中の司令部で、日常会話が交わされている。
 しかし、全員がにこやかにそれを聴いていた。

 「アフリカは大体残るみたいよ。まあ、「自然」がほとんどだけどね。いい店が残ることを期待してなさい」
 「分かったわよ。じゃあ、また任務に戻るね!」
 「ああ、気を付けてな」






 


 「ほんとに気を付けて……、アレ?」

 「なんだ、響子。何か言ったか?」
 まだ眠い。

 「なんかね、危なかったの」
 「何がだ?」

 「あのね、うーん、なんだっけ」
 「俺が知るわけないだろう」

 タカトラが笑ってる。
 六花が、その後ろでタカトラの肩に手を乗せてニコニコしている。
 いつも仲がいいな。

 「でもよかったな」
 「だから何がだよ」

 「なんか、そんな気がする」
 「ヘンな奴だな」

 タカトラがベッドに腰かけて頭を撫でてくれる。
 六花が、タカトラにくっつきながら、ウェットティッシュで顔を拭いてくれる。

 よかったぁ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

Lucia(ルシア)変容者たち

おまつり
恋愛
 人は、ときに自分の中に「もう一人の自分」を抱えて生きている。  それがもし、感情の揺らぎや、誰かとの触れ合いによって、男女の姿を入れ替える存在だったとしたら――。  カフェ『リベラ』を営むリアと、雑誌編集者の蓮。  二人は、特定の感情を抱くと性別が変わる「性別変容者」だった。  誰にも明かせない秘密を抱えながら生きてきた彼らは、互いの存在に出会い、初めて“同類”として心を通わせていく。  愛が深まるほど、境界は曖昧になる。  身体と心の輪郭は揺らぎ、「自分とは何者なのか」という問いが、静かに迫ってくる。  一方、過去に囚われ、自分自身を強く否定し続けてきたウェディングプランナー・景子と、まっすぐすぎるほど不器用な看護学生・ユウ。  彼らもまた、変容者として「変わること」と「失うこと」の狭間で、避けられない選択を迫られていく。  これは、誰の記憶にも残らないかもしれない“もう一人の自分”と共に生きながら、 それでも確かに残る愛を探し続けた人々の、静かなヒューマンドラマ。 ※毎日20時に1章ずつ更新していく予定です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...