314 / 3,215
終結。そして日常。
しおりを挟む
翌朝、俺と六花は、またよしこが用意してくれた朝食を食べていた。
俺が美味かったと褒めたヨーグルトは、ボウル一杯あった。
俺たちは、また裸で食べている。
よしこがニコニコとして、出て行った。
「なあ、あの時は勢いもあったから聞かなかったんだけどよ」
「はい?」
「お前が「タイガー・レディ」なのは、まあいいや。でも、そうしたら俺は「タイガー」なんじゃねぇのか?」
「ああ、はい。英語は嫌いなので」
六花は、十枚焼いてくれた目玉焼きのうち、七枚目を食べている。
俺は一枚を食べて、六花のために残していた。
「じゃあ、なんで自分は英語なんだよ」
「だって、恥ずかしいじゃないですか」
「何が?」
「「虎のヨメ」だなんて。響子にも悪いですし」
六花は、ちょっと赤くなって言う。
よく分からんが、分かった。
まあ、ジェイは「虎のように凶暴な女」というニュアンスも含めていたのだろうが、それは黙っている。
「しかし、あの時のお前はカッコよかったよなぁ」
夕べも何度も言ったが、俺はまた六花を褒めた。
褒めるたびに、六花が強烈に締め付けてきた。
「「紅を見せろ!」かぁ。最高だよな。惚れ直した!」
「エヘヘヘ」
六花は嬉しそうに笑った。
でも、本当に六花のあの雄叫びで、全員が自分を取り戻したのだ。
斬の殺気は、弱い心を確実に破壊する威力があった。
俺たちはライダースーツを着て、部屋を出る。
ホテルの出口で、シーマが待っていてくれた。
タケの店では、「紅六花」」の全員が揃っている。
駐車場で各々のマシンの横に立ち、俺たちを待っていた。
「六花、みんなに最後に言ってやれよ」
「はい!」
六花と俺は、自分たちのマシンの横に立った。
「お前ら! お前らの「紅」は確かに見せてもらったぁー!」
『オォーーーゥ!』
「あの「紅」はぁ! 絶対に忘れねぇ!」
『オォーーーーゥ!』
「ありがとぉーーー!」
『オォーーーーーーーーゥ!』
俺はマシンの横で土下座をした。
それを見て、六花も同じくする。
俺たちは立ち上がり、マシンに火を入れて走り去った。
後ろで見送る連中の怒号と歓声がいつまでも聞こえた。
あいつらのことも、絶対に守る。
俺はそう誓った。
六花とはマンションの前で別れた。
握手を交わしただけで、お互いに何も言わなかった。
俺は家には帰らずに、栞の家に向かった。
「お帰りなさい」
門を開けて、栞は俺を引き入れてくれた。
「上がって」
リヴィングでコーヒーを出される。
挨拶以外には言葉はなかった。
「終わった」
俺がそう言った。
「そう。怪我人は?」
「一人もいません。花岡の家でも」
「そう」
栞には、俺が実家に行くことを告げていた。
六花を連れて行くことも、「紅六花」」を連れて行くことも、斬にけじめをつけることも。
命の遣り取りになるかもしれないことは、言葉にせずとも、二人とも分かっていた。
結果的には、誰も傷を負わず、誰も死ななかった。
「斬のじじぃが、凄まじい殺気を放ちましたよ」
「「虎砲」ね」
「そういう名前ですか。何人か気を失いかけた」
「そうならなかったの?」
「ああ、二度目のアレは、更に強烈でしたけど。六花が気合を入れて、みんな立ち上がりました」
「信じられない!」
栞は、あれは相手の意識を奪う技だと言った。
それに耐えるのは、命を捨てるつもりの人間だけだと。
戦場で言う、「死兵」だけだと。
「人間、動物はみんな自己保存本能があるよね。それを逆手に取る技なの。特殊な振動波で生命の危機を感じさせて、交感神経を激しく乱すのよ」
「なるほど」
「それ以外におじいちゃんは何もしなかったの?」
「俺が「した」からですね」
「まさか」
「「はなおかバスター」を使いました。悪いですけど、東の塀は今はありませんよ」
「……」
「花岡が必死に磨き上げた「虚震花」が、まさか他人に奪われ、しかも強化改良されるなんて」
「「はなおかバスター」は、広域殲滅が可能ですからね」
「一体、石神くんは……」
俺は電話をかけた。
「おい! 生きてるかぁ!」
『……』
「なんか言え! 俺のスンゴイ技でびっくりゲロか?」
『お前』
「なんだ、心臓が止まりそうか! 笑えるぜ!」
『あれはなんだ』
「あ? 教えてやっただろう。「はなおかバスター」だ」
『ふざけたことを』
「おい、けじめはついたぞ。これ以上はやめておけ」
『花岡を舐めるな。「虚震花」だけが奥義ではないわ』
「そうだな。でも、俺が簡単に奥の手を見せたと思うのか?」
『!』
「お前にも、何かできることがあるのかもしれん。でも、こっちはそれ以上のことをするからな」」
『……』
「教えてもいいぞ」
『なに!』
「俺たちの下につけ。そうすれば教えてやるし、今まで以上の力を持たせてやる」
『……』
「よく考えておけ。俺はじじぃのことは、それほど嫌いじゃないぞ」
『……』
俺は電話を切った。
「ありがとう」
栞が頭を下げた。
俺は栞を抱いた。
本音を言うと、夕べの六花に散々搾り取られて辛かった。
「これから、どうなるのかな」
ベッドの上で、栞がそう言った。
「さあ」
「石神くんは平気なの?」
「そうですね。何が起きても平気かな」
「どうなってるのよ、その頭は」
俺たちは少し笑った。
「みんな、絶対に守りますよ」
「できるの?」
「できなきゃ、みんなで死ぬまでです」
「……」
「双子がね」
「うん」
「顕さんの家で、奈津江の姿を見たそうですよ」
「えっ!」
「どういう女性だったか、詳しく後で確かめたんです。間違いなく、奈津江でした」
「そんな……」
「だから、死んだっていいんですよ。それが分かってれば、人生はオーケーです」
栞は泣きながら微笑んでいた。
俺たちは、唇を重ねた。
お互いに、自然にそう魅かれた。
「そういえば、こないだ亜紀ちゃんに「一オッパイ」と言われました」
「なんなの、それ」
奈津江が一度だけ、俺に胸に触らせた話をする。
「その話を聞いて、亜紀ちゃんが自分もどうぞって」
「触ったの!」
「アハハ、触りませんよ」
「そう。絶対にやめてね」
「はい。でも、毎日牛乳を飲んでいると言ってました。オッパイ単価を上げるんだそうですよ」
「?」
「花岡さんのアドバイスでしょう?」
「え、あ、ああ! 双子ちゃんにそんなことを」
「どうなるのかは分かりませんが、オッパイ単価が一番高いのは、きっと花岡さんのままですよ」
「……」
「「一オッパイ」してみる?」
栞は赤くなって、そう言った。
俺が美味かったと褒めたヨーグルトは、ボウル一杯あった。
俺たちは、また裸で食べている。
よしこがニコニコとして、出て行った。
「なあ、あの時は勢いもあったから聞かなかったんだけどよ」
「はい?」
「お前が「タイガー・レディ」なのは、まあいいや。でも、そうしたら俺は「タイガー」なんじゃねぇのか?」
「ああ、はい。英語は嫌いなので」
六花は、十枚焼いてくれた目玉焼きのうち、七枚目を食べている。
俺は一枚を食べて、六花のために残していた。
「じゃあ、なんで自分は英語なんだよ」
「だって、恥ずかしいじゃないですか」
「何が?」
「「虎のヨメ」だなんて。響子にも悪いですし」
六花は、ちょっと赤くなって言う。
よく分からんが、分かった。
まあ、ジェイは「虎のように凶暴な女」というニュアンスも含めていたのだろうが、それは黙っている。
「しかし、あの時のお前はカッコよかったよなぁ」
夕べも何度も言ったが、俺はまた六花を褒めた。
褒めるたびに、六花が強烈に締め付けてきた。
「「紅を見せろ!」かぁ。最高だよな。惚れ直した!」
「エヘヘヘ」
六花は嬉しそうに笑った。
でも、本当に六花のあの雄叫びで、全員が自分を取り戻したのだ。
斬の殺気は、弱い心を確実に破壊する威力があった。
俺たちはライダースーツを着て、部屋を出る。
ホテルの出口で、シーマが待っていてくれた。
タケの店では、「紅六花」」の全員が揃っている。
駐車場で各々のマシンの横に立ち、俺たちを待っていた。
「六花、みんなに最後に言ってやれよ」
「はい!」
六花と俺は、自分たちのマシンの横に立った。
「お前ら! お前らの「紅」は確かに見せてもらったぁー!」
『オォーーーゥ!』
「あの「紅」はぁ! 絶対に忘れねぇ!」
『オォーーーーゥ!』
「ありがとぉーーー!」
『オォーーーーーーーーゥ!』
俺はマシンの横で土下座をした。
それを見て、六花も同じくする。
俺たちは立ち上がり、マシンに火を入れて走り去った。
後ろで見送る連中の怒号と歓声がいつまでも聞こえた。
あいつらのことも、絶対に守る。
俺はそう誓った。
六花とはマンションの前で別れた。
握手を交わしただけで、お互いに何も言わなかった。
俺は家には帰らずに、栞の家に向かった。
「お帰りなさい」
門を開けて、栞は俺を引き入れてくれた。
「上がって」
リヴィングでコーヒーを出される。
挨拶以外には言葉はなかった。
「終わった」
俺がそう言った。
「そう。怪我人は?」
「一人もいません。花岡の家でも」
「そう」
栞には、俺が実家に行くことを告げていた。
六花を連れて行くことも、「紅六花」」を連れて行くことも、斬にけじめをつけることも。
命の遣り取りになるかもしれないことは、言葉にせずとも、二人とも分かっていた。
結果的には、誰も傷を負わず、誰も死ななかった。
「斬のじじぃが、凄まじい殺気を放ちましたよ」
「「虎砲」ね」
「そういう名前ですか。何人か気を失いかけた」
「そうならなかったの?」
「ああ、二度目のアレは、更に強烈でしたけど。六花が気合を入れて、みんな立ち上がりました」
「信じられない!」
栞は、あれは相手の意識を奪う技だと言った。
それに耐えるのは、命を捨てるつもりの人間だけだと。
戦場で言う、「死兵」だけだと。
「人間、動物はみんな自己保存本能があるよね。それを逆手に取る技なの。特殊な振動波で生命の危機を感じさせて、交感神経を激しく乱すのよ」
「なるほど」
「それ以外におじいちゃんは何もしなかったの?」
「俺が「した」からですね」
「まさか」
「「はなおかバスター」を使いました。悪いですけど、東の塀は今はありませんよ」
「……」
「花岡が必死に磨き上げた「虚震花」が、まさか他人に奪われ、しかも強化改良されるなんて」
「「はなおかバスター」は、広域殲滅が可能ですからね」
「一体、石神くんは……」
俺は電話をかけた。
「おい! 生きてるかぁ!」
『……』
「なんか言え! 俺のスンゴイ技でびっくりゲロか?」
『お前』
「なんだ、心臓が止まりそうか! 笑えるぜ!」
『あれはなんだ』
「あ? 教えてやっただろう。「はなおかバスター」だ」
『ふざけたことを』
「おい、けじめはついたぞ。これ以上はやめておけ」
『花岡を舐めるな。「虚震花」だけが奥義ではないわ』
「そうだな。でも、俺が簡単に奥の手を見せたと思うのか?」
『!』
「お前にも、何かできることがあるのかもしれん。でも、こっちはそれ以上のことをするからな」」
『……』
「教えてもいいぞ」
『なに!』
「俺たちの下につけ。そうすれば教えてやるし、今まで以上の力を持たせてやる」
『……』
「よく考えておけ。俺はじじぃのことは、それほど嫌いじゃないぞ」
『……』
俺は電話を切った。
「ありがとう」
栞が頭を下げた。
俺は栞を抱いた。
本音を言うと、夕べの六花に散々搾り取られて辛かった。
「これから、どうなるのかな」
ベッドの上で、栞がそう言った。
「さあ」
「石神くんは平気なの?」
「そうですね。何が起きても平気かな」
「どうなってるのよ、その頭は」
俺たちは少し笑った。
「みんな、絶対に守りますよ」
「できるの?」
「できなきゃ、みんなで死ぬまでです」
「……」
「双子がね」
「うん」
「顕さんの家で、奈津江の姿を見たそうですよ」
「えっ!」
「どういう女性だったか、詳しく後で確かめたんです。間違いなく、奈津江でした」
「そんな……」
「だから、死んだっていいんですよ。それが分かってれば、人生はオーケーです」
栞は泣きながら微笑んでいた。
俺たちは、唇を重ねた。
お互いに、自然にそう魅かれた。
「そういえば、こないだ亜紀ちゃんに「一オッパイ」と言われました」
「なんなの、それ」
奈津江が一度だけ、俺に胸に触らせた話をする。
「その話を聞いて、亜紀ちゃんが自分もどうぞって」
「触ったの!」
「アハハ、触りませんよ」
「そう。絶対にやめてね」
「はい。でも、毎日牛乳を飲んでいると言ってました。オッパイ単価を上げるんだそうですよ」
「?」
「花岡さんのアドバイスでしょう?」
「え、あ、ああ! 双子ちゃんにそんなことを」
「どうなるのかは分かりませんが、オッパイ単価が一番高いのは、きっと花岡さんのままですよ」
「……」
「「一オッパイ」してみる?」
栞は赤くなって、そう言った。
3
あなたにおすすめの小説
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる