富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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再び、虎と龍 Ⅳ

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 「今日はどちらへ行くんですか?」
 「ああ、沼津に行こうと思ってる」
 「そうですか」

 「お前、沼津って全然知らないだろう!」
 「アハハハハ」
 「笑って胡麻化すな」
 前に栞と行った場所だ。
 柳に美味い寿司を喰わせたかった。
 6時近いが、まだ日は落ちていない。

 まず、以前に行ったカフェに入った。
 夕暮れまでの時間を潰す。

 「昨日、双子ちゃんが迎えに来てくれたじゃないですか」
 「ああ、大丈夫だったか?」
 「ええ。本当に頼りになって。最初に石神さんに言われたからって、喫茶店に案内してくれたんです」
 「ああ」

 「なんでも頼んでいいって言われてミルクティを飲もうと思ったんです」
 「あいつらはクリームメロンソーダだろ?」
 「そうなんですよ! でも私がミルクティを飲むって言ったら「じゃあクリームメロンソーダはやめよう」って言うんで。私もクリームメロンソーダにしたんです」
 俺は笑った。

 「あいつらはいつもクリームメロンソーダなんだよ。喫茶店じゃ、それが一番美味いって信じてるのな」
 「でも美味しいですよね」
 「まーな。俺がたまには飲みたいって頼んだら、双子も乗っかってきて。それからずっとクリームメロンソーダよ」
 柳が笑った。

 「みんな石神さんが大好きなんですね」
 「そうなのかなぁ」
 「亜紀ちゃんも、昨日はフレンチを作ってくれましたけど、あれも石神さんが作ったからなんでしょ?」
 「まあ、鷹が来た時にな」

 「亜紀ちゃんが言ってました。鷹さんがすごく喜んでたから、自分もしたかったって」
 「そうか」
 「みんな石神さんに感謝してるし、憧れてるんですよね」
 「それは分からんが、あいつらにひどい目に遭わされることも多いからな」
 「そうなんですか?」

 「こないだなんてさ。代車で借りたフェラーリぶっ壊されたんだ」
 「えぇー!」
 「双子がイモビライザーを止めようとして、ハンドルからメーターまで全部めちゃめちゃにしたのな。しょうがなく買い取ったんだよ。もちろんすぐ廃車な」
 「そ、それは」

 「4000万円だったからなぁ。他にも、俺の部屋の大事な絵を踏みつぶしたしなぁ」
 「あ、あのリャドの絵ですか?」
 「そうだよ。それで俺が怒るからって家出したのな」
 「あー!」
 俺たちは笑った。
 徐々に夕暮れが近づいてきた。


 「双子は元気一杯というか、もう悪魔みたいになることもあるんだ。でもな、コワイものが苦手なんだよ」
 「そうなん、あ! 前に怖い映画見せられましたよね!」
 「アハハ。家出した時にも罰で、もっと怖い奴を見せたのな」
 「どうなりました?」
 「二人とも、口から泡を吹いて失神した」
 「アハハハハ!」

 「カワイイですね」
 「ああ、みんなカワイイよ。俺はこんなだから、子育てなんてまっとうにはできねぇ。でもみんないい子に育ったな。山中たちの躾が良かったんだなぁ」
 「石神さんだって頑張ってますよ」

 「俺は無茶苦茶だよ。山中に顔向けできないよなぁ」
 「そんなことないですよ」
 俺は笑って言う。

 「まあ、唯一、退屈なことだけはねぇな」
 「ほんとに!」
 二人で笑った。




 俺たちは店を出て、公園を抜けて水門の展望台に上った。
 夕陽に照らされた海面が美しかった。

 「素敵な場所ですね!」
 柳は、外の景色に見とれていた。

 「なあ、柳」
 「なんですか?」
 「俺は本当に、ちゃんとやってるかな」
 柳が不思議そうな顔で見ている。

 「さっきも言ったけどさ。俺は本当に山中の子どもたちを預かって、不味かったんじゃないかと時々思うんだ」
 「そんなことないですよ」
 「でも、普通に育ってればもっとあいつらは幸せだったんじゃないかってな。まあ、金は俺が出すけど、もっとまともな人間に育てられればって思うんだよ」

 「そんな」

 「俺は本当に好き勝手なことしかしない。そのせいで、あいつらは「普通」が分からなくなったんじゃないかと思うよ」
 「確かに普通以上ですけど」
 「俺が拳銃で撃たれたのはもう知ってるだろ?」
 「はい」

 「もしかしたら、狙われたのは子どもたちだったかもしれないんだ。そんなことを思うと、本当に俺のいい加減さが怖いんだよ」
 柳が後ろから俺を抱き締めてくれた。

 「そんなこと、絶対にありませんよ!」
 「そうかな」
 海は、静かに暮れて行った。
 見えなくなっていく景色の中で、一つずつ灯がともっていく。

 「なあ、柳」
 「はい」
 「お前、早く来て俺を助けてくれ」
 「はい」
 「お前は御堂と澪さんたち、御堂家のあの素晴らしい方々に育てられた」
 「はい」
 「お前を頼りにしているぞ」
 「はい」




 「なあ、柳」
 「なんですか?」
 「お前、やっぱりオッパイが小さいな」
 膝で尻を蹴られた。

 「もう、知りません!」



 俺は笑いながら柳の横に並び、肩を抱き締めた。
 
 「もう、ほんとに石神さんはぁ!」
 頬にキスをする。

 「女性の扱いが上手過ぎですよ」






 小さな声で柳が言った。
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