富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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時過ぎるとも、恋はなお戻らず

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 クリスマス・パーティをした翌日の日曜日。
 俺は院長夫妻を送った。
 お二人が大好きな、ルーとハーも一緒だ。

 お二人は、夕べ沢山食べ過ぎたと、朝食は召し上がらなかった。
 俺はお昼にでもと、稲荷寿司を作ってお渡しした。

 「石神、本当に楽しかった。ありがとう」
 「いいですって。院長と静子さんには、今後もまたああいうものにお誘いしますからね」
 「ああ、頼む」

 そんなに良かったか。
 今までお年を考えてあまり誘わなかったが、考えを変えよう。
 機会を設けて、別荘もいいかもしれない。
 
 「私たちもね、この年になってあんなに楽しいことで笑えるとは思ってもみなかったわ」

 静子さんも言う。

 「何を言ってるんですか! お二人ともこれからですよ! 士王が生まれて、成人して、結婚して子どもを生んで、その子が養老院に入るまで見守って下さい」
 「長すぎる!」
 
 院長が言い、みんなで笑った。

 「大丈夫ですよ。院長は長生きするお顔です」
 「お前、そういうのも分かるのか?」
 「はい! だって、数万年前のネアンデルタール人にそっくりじゃないですか!」
 「お前ぇー!」

 静子さんが大笑いした。

 「長く生きてらっしゃいますよねー!」
 
 院長は俺を殴ろうとしたが、生憎シートベルトで届かなかった。




 院長のお宅に付き、俺たちはちょっと上がって行けと言われた。
 でも、お疲れかもしれないので、断って帰った。

 「タカさーん。どっか行くぅー?」
 ルーが言った。

 「そうだなぁ。折角お前らを乗せてるんだからなぁ」
 「じゃあ、どこに行こうか」
 ハー。

 「どこにって言うか、何を喰いたいのかじゃないのか?」
 「「ワハハハハハ!」」

 俺はルーに電話させ、三人で外で食べると伝えさせた。

 「亜紀ちゃんがね、自分も行くから場所を教えろって」
 「「最後の晩餐」に挑戦すると言え」
 
 「亜紀ちゃんがいいって」
 「おし!」

 三人で話し合い、ドライブがてらに横浜中華街の陳さんの店に行くことにした。
 どうせなら、帰りに乾さんの店にも顔を出そう。

 


 「トラちゃん、いらっしゃい! 最近よく来てくれるね!」
 陳さんが笑顔で出迎えてくれた。

 「陳さんの店は本当に美味しいですからね。乾さんにも会えるようになったし、つい来たくなるんですよ」
 「その二人は、御子さん?」
 「はい。一番下で、瑠璃と玻璃と言います」
 「綺麗なお名前ね。じゃあ、今日も一杯食べてってね」
 「今日は驚きますよー!」
 「アハハハハ。いつも驚いてるよ」

 俺は個室ではなく、一般の席を頼んだ。
 陳さんは個室が空いていると言ったが、断った。
 こいつらの食べっぷりを、他の客にも見せて評判にしようと思ったのだ。
 その代わり、広い席を頼んだ。

 俺は双子に好きな物を頼めと言った。
 メニューを見ている間に、俺の注文も伝える。
 
 フロア係が注文を取りに来た。
 次々に言う注文数と量に驚く。

 「必ず全部食べるから。ああ、順番は任せるから、そちらの都合でやって下さい」
 「か、かしこまりました」

 陳さんが来た。

 「トラちゃん、幾ら何でも食べすぎよ。お金も大変だよ」
 「大丈夫ですよ。食欲もお金も、心配いりません」
 「分かったよ。でも、途中でもやめてね」
 「ありがとうございます」

 まあ、何品か持って来て、心配は何もいらないと分かってもらえた。
 敢えてゆっくりと皿を片付けてもらい、他の客を驚かせた。

 「おい、時々「美味しいー」って叫べ」

 双子がそのようにし、陳さんたちを喜ばせた。
 俺も時々叫ぶ。
 何故か双子がフカヒレを頼まなかったので、俺が三皿スープを頼んだ。
 美味かったのか、双子は20皿追加した。

 「タカさん!」
 「あんだよ」
 「フカヒレって、美味しいんだね!」
 「前にそんな話をしなかったか?」
 「だって! 無人島で食べた時、ゲキマズだったよ!」
 
 俺は笑って、フカヒレがどうやって出来るのかを話した。

 「そのまま喰ったら不味いよ。そういう食材は幾らでもあるんだ」
 「「なるほど!」」
 「お前らがよくやる、イノシシの喰い方だってなぁ。もっと美味く喰う方法はあるんだぞ?」
 「「エェー!」」
 「当たり前だろう。料理っていうのは文化なんだからな。これまで人類が何万年も積み上げて来たものなんだ」
 「「ふーん」」
 「いいから今日は目一杯に喰え!」
 「「はーい!」」

 本当に物凄い量を喰った。

 タピオカココナッツを陳さん自ら持って来てくれた。

 「すごかったね」
 「「「ワハハハハハハハ!」」」

 俺がタピオカココナッツをまだ何杯か頂きたいと言うと、笑って「じゃあ、それはお店のおごり」と言ってくれた。
 俺はテーブルで会計させてもらった。
 450万円だった。
 ちゃんと現金で払う。




 「タカさん、うちに料理の本も一杯あるよね?」
 ルーが言う。

 「ああ、俺が好きだからな」
 「タカさんに教わってたから、あんまし本は読んでこなかった」
 「そうか」

 「これからは一杯読むね」
 ハーが言った。

 「まあ、お前らもそこそこ作れるからいいんだけどな。でも興味を持ったのなら、幾らでも読めよ」
 「「うん!」」

 「料理の仕方で全然変わるんだね」
 「そうだな」
 「私たちの、アレもそうだよね」
 外では迂闊に「花岡」の名前は出さない。
 
 「まあな。でもそれは何でもそうなんだよ。人間だって、何がダメだって、他のことで目が出ることだって多い」
 「そっかー」

 「タカさんは、そういう人を知ってる?」
 「そうだな」

 双子が笑って顔を見合わせた。

 「どうした?」
 「「はい!」」

 俺に二人で太いストローを抜いて向けた。

 「なんだよ?」
 「「お話しください!」」
 「亜紀ちゃんかよ!」

 俺は笑って話してやった。
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