富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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ジェシカ、蓮花研究所へ

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 7月第三週の土曜日。
 俺はジェシカをハマーに乗せ、蓮花の研究所へ向かった。
 今日から三連休だ。

 「わざわざ送って頂いてすみません」
 「いいんだよ。俺も向こうでやることがあるしな」
 「そうですか」

 俺は一度横浜へ向かう。
 
 「ちょっと寄る所があるんだ」
 「はい、分かりました」

 ジェシカに、子どもの頃に世話になった人の店に行くと言った。

 「乾さんと言ってな。バイクの輸入代理店とか修理をしている人なんだ」
 「そうなんですか」

 俺は乾さんとのことを話し、ディディというアンドロイドを預けている話をした。
 ジェシカは驚き、感動し、楽しみだと言った。
 1時間ほどで、乾さんの店に着いた。

 「トラ!」
 「乾さん!」

 「お前、最近はあんまし来なくなりやがって!」
 「すいません。ちょっと用事が多くて」
 「お前はいろいろ顔を突っ込み過ぎなんだよ」
 「ここもその一つなんですけどね」
 「ここはもっと来い!」
 「アハハハハ!」

 乾さんの隣でディディが微笑んでいる。

 「石神様、今日はお手数をお掛けします」
 「いいよ、俺も会いたかったしな」

 俺は乾さんたちに、ジェシカを紹介する。
 ジェシカがディディを見て驚いていた。

 「石神さん! これほどの技術とは!」
 「乾さんには本当に世話になったからな。本気でやった」
 「ああ! 昨日お話し下さったことですね!」
 「そうだ。誰かのためにと思えば、人間は相当なことが出来るんだよ」
 
 乾さんが俺たちを店の中へ案内した。

 「乾さん。ジェシカもアンドロイドなんですよ」
 「なんだって!」
 「ウフフフ」
 「分からないでしょ?」
 「ああ、全然分からん! トラ、お前凄いな!」
 
 俺たちはコーヒーを頂いた。
 ジェシカの前にもちゃんと置かれる。
 ディディが淹れたからだ。
 ディディにはジェシカが人間だと分かる。
 ジェシカがコーヒーを飲むのを、乾さんが驚いた。

 「ディディは本当に良くやってくれるんだ」
 「はい。時々蓮花から、乾さんがディディを大事にしてくれてるって聞いてますよ」
 「もちろんだよ! ディディは俺の家族なんだからな!」
 「そう言ってもらえると、俺も嬉しいですよ」
 
 ディディは乾さんの隣に座っていた。
 以前なら無かったことだ。

 「じゃあ、ディディを頼むな」
 「はい。俺がちゃんと送り届けますよ」
 「ああ」
 「ジェシカもこれからいますしね」
 「え、そうか」
 「さっき言ったでしょう。ジェシカの専門はアンドロイドだって」
 「え? あ、ああ! お前!! 俺を騙したな!」
 「アハハハハハ!」

 乾さんは怒ったが、それでもジェシカにディディをくれぐれもとお願いしていた。
 ディディを後部座席に乗せ、俺たちは出発した。
 ディディは身長2メートルを超えるが、ハマーの中ならば大丈夫だ。

 ジェシカは車の中で、ディディと話していた。
 様々な質問から、ディディのAIの性能を確認していった。

 「石神さん! ディディは凄すぎですよね!」
 「そうか」

 メンテナンス作業の内容も聞きたがった。

 「実は消耗部品と言うのは、それほどは無いんだ。だから、もっと長いスパンでやってもいいし、何なら不調が起きてからでも十分なんだよ」
 「それでは?」
 「ディディ、ジェシカは仲間だ。話してやれ」
 「はい。私は主に戦闘データの更新を受けています」
 「え!」
 「蓮花様の研究所では、毎日ブランやデュール・ゲリエたちの戦闘データが蓄積され、解析されています。それらの最新のものに更新することと、それを元にした戦闘訓練を致しております」

 「ディディは乾さんの仕事や生活を助ける役割もあるけどな。万一の時には乾さんを守る役目もある」
 「そうなんですね」
 「俺なんかに関わってしまったからな。もしかすると、乾さんまで狙われる可能性もある。だからだよ」
 「分かりました。私も早くディディさんのメンテナンスに関われるようになります」
 「宜しくな。でも、ディディの最大の役目は別なことなんだ」
 「なんですか?」

 「私は、乾様を愛するために生まれました」
 「!」

 ディディが言った言葉に、ジェシカが驚いた。

 「乾さんってな、結構いい男だし優しいんだけど、女性を近づけないんだ。まあ、若い頃のある事があってな。ああいう人だから、周囲の人間にはみんな慕われてんだよ。でも、女性がいない」
 「じゃあ、そのために」
 「そうなんだけどよ。俺は最初はディディを通じて女性との交流に抵抗が無くなるように考えてたんだ。でもよ、蓮花が何を勘違いしたのか、ディディに女性としての機能を全部付けやがった。喋り方から優しさや何からな。セックスの機能まで付けたんだから、俺が驚いたよ」
 「え!」
 「俺はディディで慣れてちゃんと女性とのって思ってた。だけど、もうディディを貰ってもらおうってなぁ」
 「はぁ」
 「ディディ、乾さんと毎日だよな!」

 俺の曖昧な言い方にも、ディディはちゃんと理解する。

 「はい。ご無理をなさらないようにとお願いしているのですが」
 「お前が大好きなんだよ。好きなようにさせてやれ」
 「はい」

 ジェシカは驚いたが、微笑んでディディを見た。

 「ディディ、あなたは幸せなのね」
 「はい!」




 俺たちは途中のサービスエリアで食事をした。

 「アメリカとは違いますね。こういう施設があるとは」
 「ハイウェイは一般道と厳密に区分けされているからな。長い道程でこういうものが必要なんだよ」
 「なるほど」
 「まあ、味はちょっとなぁ」
 「そうですか、美味しいですよ!」

 ジェシカはカレーを食べた。
 俺の家でカレーを食べて、一挙に嵌った。
 俺もカレーだ。
 まあ、一番間違いはない。

 蓮花の研究所には二時ごろに着いた。
 入り口に蓮花が出迎えてくれ、いつものようにミユキと前鬼、後鬼が護衛で付く。

 「石神様、お待ちしておりました。ジェシカ・ローゼンハイムさん、ようこそ」
 
 ジェシカが蓮花に挨拶する。
 
 「随分と立派な施設なんですね」
 「世界最高峰の研究をしておりますからね」
 「楽しみにして来ました」

 俺たちは本館に入り、ディディは自分で別な場所に向かった。

 「ミユキたちも元気そうだな」
 「はい、お陰様で!」

 三人とも、一段と肉体が引き締まっている。
 俺たちは、食堂に入った。
 蓮花がコーヒーとチーズケーキを出して来た。

 「ミユキが石神様に召し上がって欲しいと、自分で作ったんですよ」
 「そうか。美味そうだ」

 ミユキが顔を赤くして、大したものではないと言った。
 俺は一口入れてみた。
 悪くはない。

 「ミユキ、美味いぞ!」

 ミユキが喜ぶ。
 ジェシカも美味いと言った。

 「石神さん。私、分かりました」
 「そうか」
 「「愛」が全ての根源なんですね」
 「そうだ。俺たちはそれを知っている」
 「はい!」




 ジェシカが顔を輝かせていた。
 この世で最も大事なことを知った。
 ジェシカは、これから頼りになる人間になるだろう。

 俺は確信した。
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