富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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早乙女の新居(武神ピーポン、ついに!)

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 家に戻り、亜紀ちゃんにミントティを淹れるように言った。

 「石神! やり過ぎだ!」
 「そんなこと言うなよ。俺も精一杯喜んでもらおうと」
 「なんだ、あのロボットは!」
 「武神ピーポンな! 凄いだろう!」
 「凄すぎだ! それに、あの家だって、ああ! 家じゃない、あんなもの!」
 
 早乙女が珍しく本気で怒っている。
 子どもたちは下を向いて笑っている。

 「親友」
 「え?」
 「俺がお前のために、必要のないことをやったことがあるか?」
 「え、いや、それは」
 
 早乙女が戸惑う。

 「綺羅々との戦いで、俺はお前にM82を与えた。人間ならバラバラになるような対物ライフルだ。でも俺はお前に使わせた。その結果はどうだった?」
 「ああ! あれが無ければ危なかった! そうだったよ!」
 「二日酔いのお前に、俺は美味いフルーツを持って行った。お前、他に何か口に出来たか?」
 「そうだ! あの美味い桃とネクタリンが、俺の身体に染み入った! 石神のお陰だ!」

 「そうだろう? ポルシェはちょっと贅沢だったかもしれないけど、雪野さんと楽しくドライブ出来ただろう?」
 「それもそうだった……」
 「まだ、ご祝儀は使う機会もないだろうが、お前は危険な仕事を引き受けてくれた。どうだ?」
 「石神、俺が間違っていた。お前は、いつもいつも、俺のことを、俺のためを考えてくれていた! 忘れたわけじゃないんだ!」
 「いいよ。まあ、お前に少しも話しておかなかった俺も悪いんだからな」
 「石神! お前は全然悪くないよ! 俺が間違ってたんだぁ!」

 早乙女は立ち上がって泣きそうな顔になっていた。
 子どもたちは全員後ろを向いて、肩を震わせていた。

 「石神さん」
 「はい」

 雪野さんが笑いを堪えて俺に言った。

 「でも、あの家は立派過ぎるように思います」
 「雪野さん! 石神が全部考えてくれたんだよ! あの家に住もう!」

 俺も笑いを堪えた。

 「早乙女、よく言ってくれた。まあ、雪野さん。家なんてものは使えばいいだけですよ。後で中を案内しますから。きっと気に入ってくれますよ」
 「はぁ」
 「掃除なんかは、ちゃんと家事用のアンドロイドを用意してます。雪野さんは早乙女を支えて、子どもたちをちゃんと育てることを考えればいいんです」
 「そうですか」
 
 俺は早乙女に向いた。

 「それにな、早乙女」
 「ああ」
 「お前の敵は通常の防衛システムでは対応出来ない相手だ」
 「あ、ああ、そうだな」
 「もちろん、うちと同様の防衛システムはあるよ。でもな、妖魔相手では通用しない。だから、あれだけ大きな建物にもなったんだ」
 「そうなのか!」
 「神聖な大聖堂を模したのも、そういう意味なんだよ」
 「なるほど!」

 うそ。

 「武神ピーポンだってそうだ。ジェヴォーダンの襲撃に対応出来るのは、どうしてもあのサイズだ」
 「そうだったか!」

 俺たちがいるので、全然必要ない。

 「そりゃ、普段の暮らしにはちょっとだけ贅沢な部分もあるよ。でも、お前も雪野さんもこれから生まれて来る子どもたちも、そのくらいの贅沢をしてもいい仕事、使命を持ってる」
 「うん!」
 「贅沢に溺れるお前たちじゃないだろう?」
 「その通りだ!」
 「だったらな」
 「分かった、石神!」

 こういう男で楽しい。
 雪野さんも諦めたようだ。
 もう作ってしまったものだから、今更断れない。
 何よりも、俺に全部任せた二人だ。
 文句を言うな。

 「夜の方が雰囲気があるんだ。夕飯の後でまた行こう」
 「石神、世話になる!」
 「いいんだよ、親友!」
 「うん!」

 子どもたちが一斉にトイレに行くと言って出て行った。
 廊下の向こうで盛大な笑い声が聞こえる。

 



 夕飯までの間、早乙女と雪野さんはロボピンポンをし、みんなで人生ゲームをした。
 夕飯は、海鮮フレンチだ。

 甘エビと銀杏のジュレ。
 オマール海老と野菜のビネガー・サラダ。
 ホタテと貝のポタージュ。
 甘鯛のムニエル。
 スズキのポワレ。
 アワビの香草焼き。
 サクラエビシートのカツレツ。
 海鮮出汁の野菜リゾット。
 メロンのシャーベット。

 「あれ、イワシは?」
 「最後に出るよ」
 「そうか」

 子どもたちが笑った。

 ゆっくりと食事をし、楽しく話した。
 ロボも様々な海鮮に喜んだ。
 食べ終えると、雪野さんの傍を離れない。

 暗くなり、俺たちはまた新居に移動した。




 「綺麗ですね」

 外塀のライトアップを見て、雪野さんが言った。

 「本当だね。夜に帰るのが楽しくなるよ」
 
 早乙女も感動したようだ。

 「電球の交換とか、家の仕様はまとめてあるからな。あとで楽しみながら読んでくれ」
 「ああ、分かった」

 正門はブロンズだ。
 まあ、強度は無いが、見栄えを優先した。
 両脇の門柱にはブロンズの化粧張りのライトが灯っている。
 リモコンで門を開けた。
 静かに両側に収まって行く。

 「普段は脇の通用口でな。いちいち待ってるとだるいからな」
 「ああ」

 二人は呆気に取られている。

 建物までは、ピンコロの道が通っている。
 車が出入りするので、そのようにした。
 幅5メートルで、両脇には龍の髭が植えてある。
 庭の植栽は、また今度説明しよう。

 玄関は高さ5メートルのガラスのスリットのある木製のドアだ。
 重量はあるが、油圧を使って開閉を軽くしている。
 子どもでも軽い。

 玄関を入ると、後ろの塔まで伸びる2階まで吹き抜けのアーチの通路になっている。
 部屋は左右に振り分けてある。
 幅8メートルの壮大な通路だ。
 早乙女達は圧倒されていた。
 皇紀以外の子どもたちも驚いている。

 「なんだ、これは……」

 三人のメイド服の女性が出て来る。

 「お待ちしておりました」
 
 家事用アンドロイドだ。
 
 「ラン、スー、ミキだ」
 「え?」

 似せている。

 「食事も作れるし、掃除洗濯、その他家の管理補修までこなすからな。マッサージも赤ん坊の世話も、何でも一通り出来るぞ」
 「はい?」
 「これだけでかい家なんだ。必要だろう」
 「そ、そうか」

 早乙女も呑まれている。
 左右の部屋を簡単に案内し、突き当りのエレベーターで3階まで行った。
 3階は100畳の大ホールをメインに、主に生活空間になっている。
 メインキッチン、リヴィング(30畳)、バスルーム、化粧室、寝室などだ。
 まあ、大体ここにいることになるだろう。
 雪野さんも、3階の作りを見て安心したようだ。
 
 全部を見せていると時間が足りないので、塔の方へ移動した。
 左側の、最上階のガラス張りの部屋を見せる。
 広さは50平米くらいだ。
 子どもたちも感動した。

 「ここを寝室にするとムードがあるんだけどな」
 
 照明をダウンライトだけに落した。
 夜景が見える。

 「素敵ですね」
 
 雪野さんがうっとりして言った。

 「二人で夜に酒でも飲むといいですよね」
 「はい」
 「「ザ・オトメンズ・ポエム」のスタジオとしてもいいよな」
 「ああ」

 気に入ったようだ。

 反対側の塔も見せる。
 こちらは壁と窓が半々に回してある。

 「こっちはもうちょっと落ち着いた雰囲気だからな。好きなように使えばいいよ」
 
 一度、居住部分の屋上に出た。
 4階部分がセットバックしており、広いテラスとしても使える。
 半分ほどにガラスの天井がある。

 「武神ピーポン! 起きろ!」

 俺が叫ぶと、武神ピーポンがゆっくりと動き、こちらを見上げた。
 髑髏の両目が赤く灯っている。

 「雪野さん、「ピーポン」と呼び掛けて下さい」
 「ピーポン!」

 両目が点滅した。
 早乙女にもやらせる。

 「これで音声登録が終了です。これから、二人の命令に従いますから」
 「え!」

 「右手を挙げるように言ってみて下さい」
 「ピーポン! 右手を挙げて!」

 武神ピーポンが右手を挙げた。

 「早乙女、「斬魔スラッシュを見せろ」と言え」
 「え? 「ピーポン! 斬魔スラッシュを見せてくれ!」」

 武神ピーポンが腰の大刀を一気に抜き、空中を物凄いスピードで薙いだ。
 眩しい赤い光の帯が刀身から伸び、夜空に向かって飛んで行った。
 ゴウという風切り音が響いた。
 子どもたちも驚いていた。

 「今の斬撃で、ジェヴォーダンはおろか、高位の妖魔も斃せる。そのために、武神ピーポンが必要なんだ」
 「石神……」

 まあ、他のシステムでもいいのだが。

 


 俺は家具などは相談して決めようと言った。
 もちろん、俺の出費だ。
 一部の家具は、既に入れてある。
 書庫の本棚や、各部屋の収納などだ。
 まあ、早乙女たちも自分で揃えたいだろうから、そこは相談だ。

 早乙女と雪野さんは嬉しそうに二人で話していた。
 やっと受け入れてもらったようだ。
 実際に生活のイメージがついたためだろう。
 広すぎる部屋や使わない部屋も多いだろうが、そのうちに二人で考えて行くと思う。

 最後に、地下を案内した。
 地下1階は音響ルームだ。
 うちほどではないが、いいオーディオや映像システムを組んだ。
 地下2階は機械室と、緊急脱出システムだ。

 「ここは非常に硬い防備だが、万一の場合はうちへ通じる通路がある。迷わず使ってくれ」
 
 俺はリニアモーターカーを見せた。
 使い方はまた説明する。

 「10人乗れる。うちまで20秒で着ける。まあ、歩いてもいいんだがな。数分だ。とにかく、防衛システムは優秀だが、襲われたらすぐにここに来て使ってくれ。うちからも駆けつけるが、避難しておいて欲しい」

 「石神……」

 皇紀が駅の駅名標のようなものを作っていた。

 《早乙女家 ⇒ 絶対安全「石神家」》

 雪野さんが、看板を撫でていた。

 「これで何があっても絶対安全ですね」
 「うん!」




 早乙女が嬉しそうに笑った。 
 俺たちもファイティングポーズをした。

 みんなで笑った。  
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