富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
1,198 / 3,215

別荘へ

しおりを挟む
 早乙女達に新居(ワハハハハ!)を紹介した翌日の金曜日。
 朝食後に早乙女達は帰り、俺たちは別荘に向かった。

 「ロボいるかー」
 「はーい!」

 毎回確認するようにしている。
 前は「紅六花」ビルに忘れて、可愛そうなことをした。
 今は荷台の「響子ベッド」に入っている。

 「よし、行くぞー!」
 「「「「はーい!」」」」

 ハマーを発進させる。




 高速を乗り換えて行き、上信越自動車道を走っていた。

 「タカさん、ちょっと運転しますよ!」

 亜紀ちゃんが言った。

 「あ?」
 「私、運転だけなら出来ますから」
 「何言ってんだよ」
 「大丈夫ですって! 見てて下さい」

 亜紀ちゃんはまだ免許を持っていない。
 9月下旬の誕生日なので、月末から教習所に通いたいと言っている。

 「だって、亜紀ちゃん、全然動かしたこともないだろう」
 「タカさん! 私、タカさんの隣でいつも見てるんですよ!」
 「まあ、そうかもしれないが」
 「もう全部分かってます! アヴェンタドールだって運転出来ますって」
 「いや、あのな」

 亜紀ちゃんがしつこく俺にせがんだ。

 「お願いしますー」
 「分かったよ!」

 まあ、運動神経のいい亜紀ちゃんだ。
 咄嗟の時に運転することも必要かもしれない。
 俺はサービスエリアに寄り、交代した。

 「次のサービスエリアまでな!」
 「やったぁー!」

 亜紀ちゃんは、本当にスムーズに発進させた。

 「おお、言うだけあるな」
 「エヘヘヘヘ!」

 笑顔で高速に乗る。
 アクセルを踏み込んで、すぐに周囲の車と並行して走るようになった。

 「亜紀ちゃん、上手い!」
 「アハハハハハ!」

 後ろで子どもたちも見ている。
 誰も心配はしていない。

 俺のスマホが鳴った。
 早乙女からだった。

 「石神、今どこなんだ?」
 「今別荘に向かってる途中だ。何かあったのか?」
 「ちょっと話したいことがあるんだ。でも運転中なら後でもいい」
 「いや、今亜紀ちゃんが運転してるから大丈夫だぞ?」

 俺は喋ってから、しまったと思った。
 一応あいつも警察官だ。
 案の定、怒り出した。
 亜紀ちゃんは運転席で上機嫌でハマーを操縦している。
 ギアに手を掛けた。
 俺の電話を気にしている。
 タイヤが軋む、物凄いスキール音がした。

 「亜紀ちゃん! 下がってるよ!」
 「亜紀ちゃん! 前に走ってぇ!」
 「あ、これバックなんだ」
 
 亜紀ちゃんの額を引っぱたいた。
 ハマーは激しく横滑りし、俺がハンドルを横から合わせて何とか横転せずに止まった。
 亜紀ちゃんが深呼吸をして、また走らせる。
 俺は次のサービスエリアで折り返すと早乙女に言った。

 「お前! 何やってんだ!」
 「だって、タカさんがギアチェンジするのがカッコ良くて!」

 もう一度引っぱたいた。
 サービスエリアでハマーを停めさせる。
 もう、一瞬も目を離さなかった。

 「お前を信じた俺がバカだった!」
 「すみません……」

 俺は早乙女に電話した。
 早乙女は李愛鈴に「アドヴェロス」へ誘ったと話した。
 俺たちはそんなことも話していたが、慎重に身辺調査をしてからのはずだった。
 あいつはきっと、李愛鈴に情を掛けてしまったのだろう。
 そういう優し過ぎる男だ。
 俺の認識が甘かった。
 
 とにかく、もう話してしまったことだ。
 俺はタマを送ることを決めた。
 最初からタマを使えば話は早かったのだが、なるべく妖魔を簡単には使いたくない。
 もう妖魔の力が必要なのは分かってはいるが、安易にあいつらを頼りたくは無かった。
 それは人間と妖魔の思考形式が異なるためだ。

 妖魔は力を行使することに、一切の躊躇が無い。
 人間がやり過ぎだと感ずることも、妖魔には関係ない。
 やると決めれば何億人でも殺し、人間が絶対に避けるような酷いことも平然と行なう。
 クロピョンは世界経済が傾くような巨大なダイヤモンド鉱脈を俺に与えた。
 まあ、俺も資源獲得で散々利用しているのだが。

 それでも、俺の中では必要なことに限定しようとはしている。
 調子に乗っていることもあるが、大体はそうだ。

 早乙女に幾つかの指示をし、電話を切った。

 「少し早いが、ここで食事にするか」
 「「「「わーい!」」」」

 食事に関して、うちの子らも一切の躊躇は無い。
 そして化け物のように喰う。





 俺は車の中でロボの食事を用意し、子どもたちに先に行かせた。
 11時過ぎのフードコートは、既に結構混み始めていた。
 すぐに場所は分かった。
 既に大量の食事が集められつつある。
 俺は少し離れた席で食べようとした。

 「タカさーん、こっちですよー」

 亜紀ちゃんにでかい声で呼ばれた。
 身体の大きな俺が一番喰うのだろうという目で見られた。

 亜紀ちゃんがニコニコした顔で、俺の前にカレーを置いてくれる。
 子どもたちはまだ食事を集めている。
 掲示板に番号が出ると何人かで取りに行く。
 その間に、テーブルの食事はどんどん減って行った。

 皇紀が外から入って来て、懸命に食べ始めた。

 「お前、どこ行ってたんだ?」
 「外の屋台でケバブと唐揚げを頼んでました」
 「そうか」

 一切の見逃しの無い子どもたちだった。

 食事を終え、コーヒーを飲んだ。
 子どもたちはアイスクリームを買いに出た。
 またバカみたいに買って来た。

 「早乙女さん、何かあったんですか?」

 亜紀ちゃんが聞いて来たので、俺は李愛鈴を仲間にしたがっているとみんなに話した。

 「そうですか。私は信頼できる人だと思いましたが」

 亜紀ちゃんが戦闘の中で感じたことだ。
 きっと正しい判断なのだろう。

 「「モハメド」ちゃんが手を出そうとしませんでしたからね。愛鈴さんが守るのが分かったんでしょう」
 「そうだろうな。亜紀ちゃんもいたしな」
 「私もそうですけど。でもオーガタイプの攻撃を片手で防ぐなんて、結構なものだと思いますよ」
 「まだ全力でもないだろうしな」
 「はい」

 部位変形をする者がいることは分かっている。
 でもそれは、全力ではない。
 俺は分かっていた。

 李愛鈴は、自分が化け物になってしまったことを悲しんでいる。
 早乙女もそこに同情し、先走ったのだろう。

 李愛鈴の全力を確認する必要がある。
 でもそれは、彼女が全身を変形させなければならない。
 
 写真を見たが、美しい女性だった。
 その悲しみは深いだろう。
 しかし、俺たちはやらねばならない。

 「デミウルゴス」はその人間の個人的な願望や資質によって怪物化を展開することが分かっている。
 オーガタイプと呼んでいる鬼のような姿になる者が多いのは、恐らく多くの人間に共通した資質なのだろう。
 李愛鈴のような、爬虫類タイプは少ない。
 ヘビのような形は幾つかあるが、李愛鈴は両腕が鋭い鉤爪があったと言う。
 ヘビは人間が見慣れている動物なので、その姿を取ることは分かる。
 でも李愛鈴はそうではない。





 李愛鈴は、「ダイナソータイプ」という特異な存在だった。
 俺たちはこの後でそれを知り、その強力な破壊力に驚くことになった。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

処理中です...