富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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麗星、大サービス Ⅲ

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 「麗星さん、頼むからもう泣き止んで下さいよ」
 「すいませんでした」

 麗星は俺の隣で俯いていた。

 「俺は麗星さんには本当にお世話になってると思ってるんですから」
 「そんなことは」
 「本当ですって! 麗星さんのお陰で、レイが死んだ時だって何とか自分を保てたんですし。他にもいろいろな情報を貰ったり手助けしてもらって。麗星さんがいなければ、俺たちは到底ここまで来れませんでしたよ」
 「でも……」
 「大体、「王」と何とかやっていけるのは、麗星さんのお陰なんですよ?」
 「わたくしの?」
 「そうですよ! いろいろアドバイスしてもらったり、教えて頂いたことで何とかやってるんです。そもそもモハメドだってタヌ吉だって、麗星さんが教えてくれたんでしょう」
 「そうでしたが」
 
 麗星は少し落ち着いて来たようだ。
 俺が事実を突きつけ、自分の中で咀嚼していた。

 「これからも頼みますよ。今回も柳のお陰で分かった吉原龍子の遺産をちゃんと管理することだって、麗星さんがいなければ俺たちには無理です」
 「はい、それは必ず!」
 「御堂の家だって、アラスカの基地だって、麗星さんがいろいろしてくれたじゃないですか。本当に助かっているんです」
 「でも、石神様は御自分で産土の神を呼び出されて」
 「そんなことは! あれだって、麗星さんのアドバイスで呼んだものでしょうが!」
 「は、確かにそのようなことも……」
 「麗星さんが俺には必要なんです! これからもずっと!」
 「はい! 石神様!」
 
 決して嘘ではないのだが。

 「愛しているんです! 麗星さん!」
 「わ、わたくしもぉー!」

 麗星が抱き着いて来た。
 まあ、そうするために、隣に座らせた。

 唇を重ねた。

 「さあ、もう少し飲みましょう。麗星さんと一緒に飲むのは楽しいや」
 「はい!」

 麗星はまだ若い。
 それなのに、唯一の道間家の血筋ということで、無理矢理当主に納められた。
 自由に家の外で暮らそうとしていた女が、重過ぎる責任を押し付けられた。
 しかも、自分の父親が敵となり、勝つ見込みの無い戦いを強いられた。

 しかし、麗星は決して諦めることなく、その重責を何とかしようとしてきた。
 並大抵のことではない。

 俺も同じだ。

 俺たちは、無謀な戦いを始め、それを何とかしようとしてきた。
 俺たちは、そういう戦友だ。

 「俺も麗星さんも、勝てない相手と戦おうとしてきました。そして俺たちは出会った。俺たちは互いを認め、今こうやってようやく糸口を掴もうとしている。俺には絶対に麗星さんが必要です」
 「わたくしも! 石神様が必要なんです!」
 「良かった」
 「はい!」

 俺たちは楽しく語り合った。
 そして麗星が、フランスの留学(遊学)時代のことを話した。

 本当に、どうでもいい内容だった。

 その夜、麗星は俺の部屋で寝た。

 「石神様」
 「はい」
 「わたくし、石神様に「初めて」を差し上げることが出来ず」
 「いえ、そういうことは別に」
 「ですから」
 「はい」
 「わたくしの「後ろ」の初めてを是非もらっていただきます」
 「……」

 普通に愛し合った。





 翌日。
 朝食の後で早乙女の家に麗星と行った。
 豪勢な邸宅(?)に、麗星が驚く。

 「これは何ですの?」
 「まあ、こういうのが好きだったんじゃないですか?」
 「あのロボットは」
 「俺たちの年代って、「巨大ロボ」が大好きなんですよ」
 「はぁ」

 早乙女が玄関まで出て来て、俺たちを中へ入れた。
 広大な通路を歩く。
 麗星がまた呆然として天井を見た。

 奥のエレベーターに近づくと、麗星が硬直した。

 「ぷぷぷぷぷ!」

 柱だろう。
 面倒なので抱きかかえてエレベーターに乗せた。

 「おい」
 「なんだ?」
 「あの柱よ、やっぱあそこは不味いんじゃねぇか?」
 「うーん」
 「あんだよ?」
 「数日前にさ。俺もそう思って移動したんだ」
 「それで?」
 「翌朝に、あそこに戻ってた」
 「!」
 「ほら、右の塔の最上階っていいじゃないか。あそこへ置いたんだけどな」
 「よく持てたな」
 
 俺は自分で運んで分かっている。
 二百キロはあった。

 「ああ、モハメドさんが手伝ってくれた」
 「なるほど」

 まじか!

 「なあ、エレベーターのボタンをどう押したのかな」
 「俺に分かるわけないだろう」
 「お前が持って来たんじゃないか」
 「まあ、そうだけどな」

 うちに置かなくて良かった。

 3階のリヴィングで降り、雪野さんが紅茶を淹れてくれた。
 一口飲んで、震えていた麗星が落ち着いた。
 改めて挨拶をする。

 「じゃあ、モハメドを見てもらうか」
 
 俺はモハメドに「隠れている」ように命じていた。
 
 「モハメド、出て来てくれ」
 《はーい!》

 早乙女の肩から、モハメドがテーブルに降りた。

 「ぷ! ぷ! ぷ! ぷ! ぷ!」

 「おい! 隠れろ!」
 《はーい》

 俺は茶請けに出されたクッキーを麗星の口に突っ込んだ。
 数分後に、麗星が意識を取り戻す。

 「い、石神様」
 「大丈夫ですか?」
 「あれが「鬼猿王」でございますか!」
 「そのようですね。他にも《髑髏王邪々丸》とも呼ばれていたようですが」
 「あぁ! 確かにうちにある『少年妖怪大図鑑』に、そのような名が!」
 「少年?」
 「はい! 少年画報社の特別出版でございます。数多くのあやかしが載っておりますのよ?」
 「そうですか」

 なんだ、そりゃ。

 「確か、死の王であり、大陸で無数の人間を殺した後に日本へ渡って来たとか」
 「そうなんですか」
 「先ほど、一瞬でわたくしの「死」が掴まれました」
 「え?」
 「わたくしが道間の者と分かったのでしょう。少々脅されたようです」
 「麗星さんを? おい、モハメド!」

 《はーい》
 「お前、麗星さんを脅したのか!」
 《すみませーん! 前に早乙女さんを騙してお金を巻き上げたようでしてー》
 「人間同士のことで、お前が出しゃばるな!」
 《わかりましたー》

 モハメドは消えた。
 麗星が蒼白になっている。

 「大丈夫ですよ。言い聞かせましたから」

 まあ、新幹線代などは大した金額ではない。
 それに、麗星なりの思い遣りもあってのことだ。
 早乙女に、俺のために何かをさせるということだ。

 「あの、早乙女様」
 「はい?」
 「先日、お買い上げの壺のことですが」
 「ああ! あの持っているとお金が貯まるという!」
 「なに!」

 「あの、代金はお返し致します。あれはわたくしのご結婚祝いということで」
 「いえ、そんな!」
 「おい、麗星!」
 「はい!」
 「すぐに金を返せ!」
 「すみませんでしたぁー!」

 問い詰めると、200万円で売ったらしい。
 俺も知らなかった。




 昼食を一緒にという早乙女達を断って、家に帰った。

 「麗星さん!」
 「申し訳ございません!」
 「道間家って、お金に困ってるんですか?」
 「いいえ」
 「じゃあ、どうして!」
 「わたくしのお小遣いが……」
 「幾らなんですか」
 「月に10万円……」

 十分だと思うが。

 「穴があったら入りたい……」

 俺は「震花」で50センチの穴を空けた。

 「……」

 麗星が、そこにしゃがんだ。





 俺は大笑いし、麗星を引っ張り上げた。

 まったく、楽しい女だ。

 腕を組んで歩くと、麗星は嬉しそうな顔をした。
 俺も笑顔になって一緒に家に帰った。
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