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Healing With The Angel
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「久遠さん! また「小柱」ちゃんが来たわよ!」
「ああ、ほんとだ!」
6月下旬の土曜日。
雪野さんと朝食を食べていた。
「小柱」ちゃんは時々屋敷の中を飛んでいる。
俺たちのいる場所まで来ることも多い。
「カワイイですね」
「そうだね」
二人で笑って見ていた。
やがて「小柱」ちゃんは俺たちに気付き、近づいて来た。
テーブルの上に降りて、こっちを観ている。
「おはよう! 元気かな?」
「小柱」ちゃんはトコトコと俺の方へ歩いて来て、羽をパタパタして見せた。
元気だということだろう。
その後で雪野さんの前でも羽を動かし、怜花のベビーベッドの上にも降りて、何かを確認してから飛び去った。
「そういえば、六花さんがもうすぐ出産のはずだね」
「可愛らしいお子さんでしょうね!」
「ああ! 石神も綺麗な顔だし、何しろ六花さんは次元が違う美人だしね」
「あら、あなたもそう思うんです?」
「え! いや! 僕は雪野さん以外は興味は無いよ!」
雪野さんはおかしそうに笑った。
「はい、知ってますよ」
俺も笑った。
「もう、困るよ」
「ウフフフフ」
二人とも、まさか石神が死に掛けているとは思わなかった。
数日待っても、石神からは何の連絡も無かった。
「雪野さん、おかしいね」
「そうですね。もう予定日を五日も過ぎてますけど」
「雪野さんも遅くなったけど、ここまで延びるとは」
「はい。石神さんにご連絡しては?」
「うん。でも……」
「はい……」
生まれたのならば、すぐに連絡してくれるだろう。
俺もそうして欲しいと頼んでもいる。
しかし、連絡がないということは、少なくともまだ生まれていないということ。
それは、出産が遅れているのであれば問題はない。
でも、それならばそうだと一言言ってくれるのではないか?
だったら、もう一つの可能性。
とても考えたくない可能性。
石神は六花さんの妊娠を本当に喜んでいた。
あいつは自分のことをあまり他人に話さない。
他人の手を煩わせることが大嫌いな男だ。
だからお祝い一つなかなかやらせてもらえない。
気を遣わせるのが嫌なのだ。
栞さんとの子どものことも、未だに何もさせてもらっていない。
まあ、特殊な事情で会ってもいないのだが。
だから、六花さんとの子どものことでは、絶対に何かさせて欲しいと思っていた。
俺は石神の親友なのだから。
もちろん雪野さんもそのつもりでいる。
それが、万一不幸なことになっていたとしたら……。
そうなったら、あいつの悲しみはどれほどか……。
思い余って、俺は雪野さん石神の家に行ってみると言った。
どういうことであっても、真実を知っておかねばならない。
俺なんかが石神を慰めることなど出来ないだろうが、それでも何でもしたい。
でも、あまりにも可哀そうだ。
あんなに子どもを欲しがっていた二人なのに。
なんであいつには、いつもこんなに悲しい出来事が。
俺は木曜日の晩に、石神の家に行った。
午後6時。
「早乙女さん!」
亜紀ちゃんとロボさんが玄関に出迎えてくれた。
「ごめんね、こんな時間に」
「いいえ! どうしたんですか?」
「いや、ちょっとね」
「まあ、入って下さい」
俺は頭を下げて中に入れてもらった。
「よう!」
石神がいた。
しかし、大分憔悴していた。
肉がげっそりと落ち、顔色も青白い。
目にもいつものあの強い力が弱まっているような気がする。
やはりそうだったのか。
「い、石神……」
俺は言葉を喪った。
何と言って石神を慰めていいか分からなかった。
「おい、どうしたんだ? ああ、悪いな、ちょっといろいろあってさ」
「石神!」
「まあ、座れよ。丁度今、食事が終わったところなんだ。ちょっと仕事は休んでいてさ」
「お前……元気を出せよ」
「無理言うな! 大変だったんだよ。ああ、お前には話しておこうかな」
「いいよ、今は無理して俺なんかにまで気を遣うな」
「え? そういうことじゃねぇんだけど。まあ、とにかく座れよ」
亜紀ちゃんがコーヒーを持って来てくれた。
俺は涙が出た。
不味いとは思いながらも、石神の心を思うともう止められなかった。
慰めなければと思いながら、俺は聞きたくなかった。
石神が悲し過ぎる。
「おい! お前泣いてんのかよ!」
「……」
「何があった! 俺に話せ!」
「いや、お前の子どもが……」
「あ? ああ、そういえば話してなかったな!」
石神が笑顔を作った。
顔が引き攣っていた。
「いや、その話はいいんだ。俺は何と言えばいいのか……」
「亜紀ちゃん、俺のスマホ!」
「はーい!」
「ん?」
石神が足を引きずりながら、俺にスマホの画像を見せてくれた。
「悪かったな。お前には連絡するって言ってたもんな。ちょっと大変なことがあってよ。ほら、「吹雪」だ。カワイイだろ!」
「へ?」
「まあ、まだ新生児だからなぁ。でも、毎日六花みたいに綺麗な顔になってくんだぞ! 俺も二日しか見れなかったけどな! アハハハハハ!」
「子ども、死んだんじゃ?」
いきなり頭を殴られた。
「お前! ぶっ飛ばすぞ!」
「やってるじゃないか!」
石神の攻撃はモハメドさんも守ってくれない。
「何言ってやがんだぁ!」
「だって! お前、いつまでも連絡してくれないから。俺はてっきり……」
「あ? あ、ああ、そうか。そうだよな」
石神は笑って何があったのかを話してくれた。
石神家の本家の方でいろいろあったそうだ。
俺は石神の子どもが無事だったことが分かり、本当に嬉しくなった。
「うちに飲みに来てくれよ!」
「いいよ。家でのんびりしたいんだ」
「そんなことを言わずにさ! 雪野さんも心配してたんだ!」
「あー、そうかぁ。お前たちには悪いことしたよなぁ。じゃあ、ちょっとだけな」
「うん!」
石神家のみんなでうちに来てくれた。
途中で歩きながら、雪野さんに連絡した。
雪野さんも大喜びで、用意をすると言ってくれた。
「おい、ちょっと顔を出すだけだぞ。茶の一杯も貰ったら帰るからな」
「それでもいいよ。でも、本当に良かった!」
「うるせぇ、バカ!」
石神は笑っていた。
歩くのが少し辛そうだったが、それでも来てくれた。
亜紀ちゃんが横で肩を貸している。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇから家で寝てるんだろう!」
「あはははは」
門を潜り、玄関へ向かった。
玄関を開けると、「柱」さんと「小柱」ちゃんが待っていた。
「げ!」
「石神が来るのが分かるんだね」
「やめろよ」
ロボさんが手を挙げると、「柱」さんも手を挙げた。
仲が良い。
「柱」さんが石神を見て心配そうにしている。
手を伸ばして、石神の身体に触ろうとする。
「おい、大丈夫だって。すぐに治るよ。今はちょっと痛いけどな」
身体を何度も摩って石神と一緒に歩いた。
石神の顔が何故か硬直している。
「小柱」ちゃんはずっと石神の頭の上を回っていた。
何故か亜紀ちゃんが石神の腕を押さえていた。
「タカさん、ダメですって!」と小声で言っていた。
なんなんだろう?
エレベーターで3階に上がり、雪野さんが紅茶を淹れてくれた。
「石神さん、おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう。ごめんね、連絡をしてなくて」
「いいえ!」
石神が、石神本家でのことを詳しく話してくれた。
ルーちゃんとハーちゃんも一緒に説明してくれる。
相当な腕の剣士たちで、石神が当主になったことが分かった。
今後、妖魔との戦いで力強い味方になるということも。
「いっそ「アドヴェロス」で預かってもらおうかな」
「いや、石神が話して動いてもらった方がいいだろう」
「まあ、そうかもな。とても他人と協調するような連中じゃねぇしな」
石神が凄まじい鍛錬をさせられたと聞いた。
何度も真剣を身体に突き刺され、斬られたということだ。
「その傷がまだ癒えてねぇんだ」
「そうか、大変だったな」
「ああ、何度もブチ切れそうになったぜ」
雪野さんが、紅茶のお替りを淹れに立った。
「あ!」
小さく叫び、リヴィングの入り口を指差した。
「小柱」ちゃんが飛んできていた。
「小柱」ちゃんは真直ぐに石神の方へ飛んできて、胸に停まった。
「なんだ?」
《スポ》
「おい!」
「「「「「「「!」」」」」」」
「にゃ!」
「小柱」ちゃんが突然石神の胸の中に埋まってしまった。
頭がちょっとだけ出ている。
「なんだこりゃぁー!」
石神が慌てて叫んでいる。
他の子どもたちも驚いている。
「タカさん!」
「亜紀ちゃん! 早く抜け!」
「え! 大丈夫なんですか?」
「あ?」
「だって、完全に入っちゃってますよ!」
「あ、ああ」
「気分は悪くないですか!」
「ああ、なんか平気」
「タカさん!」
「お、おう!」
みんな、どうしようもなく見ているしか出来なかった。
「「「「「「「あ!」」」」」」」
「柱」さんも来た。
「タカさん!」
「あ、あいつは絶対に俺に入れるんじゃねぇぞ!」
「は、はい!」
亜紀ちゃんが「柱」さんを止めようとした。
「あぁー!」
そのまますり抜けてしまった。
すぐに戻って掴もうとする。
全然触れない。
ルーちゃんとハーちゃんも向かった。
柳さんが石神の前に立ちふさがった。
皇紀くんもだ。
ロボさんはそのまま。
全員、誰も「柱」さんに触れなかった。
「おい!」
石神が立ち上がった。
「柱」さんが石神の胸の「小柱」ちゃんの頭を叩いた。
《こん》
《すぽん》
「「「「「「「「……」」」」」」」」」
抜けた。
「柱」さんは「小柱」ちゃんを抱いて、一礼して部屋を出て行った。
「い、石神?」
「あ! 痛みが消えた!」
「た、タカさん、良かったですね」
「うーん」
みんな半笑いで良かったと言っていた。
石神は帰り際に「柱」さんと「小柱」ちゃんに礼を言って帰った。
後日、これから暑くなるからと、エレベーターホールにクーラーを取り付けてくれた。
「柱」さんが時々、リモコンを操作するようになった。
「ああ、ほんとだ!」
6月下旬の土曜日。
雪野さんと朝食を食べていた。
「小柱」ちゃんは時々屋敷の中を飛んでいる。
俺たちのいる場所まで来ることも多い。
「カワイイですね」
「そうだね」
二人で笑って見ていた。
やがて「小柱」ちゃんは俺たちに気付き、近づいて来た。
テーブルの上に降りて、こっちを観ている。
「おはよう! 元気かな?」
「小柱」ちゃんはトコトコと俺の方へ歩いて来て、羽をパタパタして見せた。
元気だということだろう。
その後で雪野さんの前でも羽を動かし、怜花のベビーベッドの上にも降りて、何かを確認してから飛び去った。
「そういえば、六花さんがもうすぐ出産のはずだね」
「可愛らしいお子さんでしょうね!」
「ああ! 石神も綺麗な顔だし、何しろ六花さんは次元が違う美人だしね」
「あら、あなたもそう思うんです?」
「え! いや! 僕は雪野さん以外は興味は無いよ!」
雪野さんはおかしそうに笑った。
「はい、知ってますよ」
俺も笑った。
「もう、困るよ」
「ウフフフフ」
二人とも、まさか石神が死に掛けているとは思わなかった。
数日待っても、石神からは何の連絡も無かった。
「雪野さん、おかしいね」
「そうですね。もう予定日を五日も過ぎてますけど」
「雪野さんも遅くなったけど、ここまで延びるとは」
「はい。石神さんにご連絡しては?」
「うん。でも……」
「はい……」
生まれたのならば、すぐに連絡してくれるだろう。
俺もそうして欲しいと頼んでもいる。
しかし、連絡がないということは、少なくともまだ生まれていないということ。
それは、出産が遅れているのであれば問題はない。
でも、それならばそうだと一言言ってくれるのではないか?
だったら、もう一つの可能性。
とても考えたくない可能性。
石神は六花さんの妊娠を本当に喜んでいた。
あいつは自分のことをあまり他人に話さない。
他人の手を煩わせることが大嫌いな男だ。
だからお祝い一つなかなかやらせてもらえない。
気を遣わせるのが嫌なのだ。
栞さんとの子どものことも、未だに何もさせてもらっていない。
まあ、特殊な事情で会ってもいないのだが。
だから、六花さんとの子どものことでは、絶対に何かさせて欲しいと思っていた。
俺は石神の親友なのだから。
もちろん雪野さんもそのつもりでいる。
それが、万一不幸なことになっていたとしたら……。
そうなったら、あいつの悲しみはどれほどか……。
思い余って、俺は雪野さん石神の家に行ってみると言った。
どういうことであっても、真実を知っておかねばならない。
俺なんかが石神を慰めることなど出来ないだろうが、それでも何でもしたい。
でも、あまりにも可哀そうだ。
あんなに子どもを欲しがっていた二人なのに。
なんであいつには、いつもこんなに悲しい出来事が。
俺は木曜日の晩に、石神の家に行った。
午後6時。
「早乙女さん!」
亜紀ちゃんとロボさんが玄関に出迎えてくれた。
「ごめんね、こんな時間に」
「いいえ! どうしたんですか?」
「いや、ちょっとね」
「まあ、入って下さい」
俺は頭を下げて中に入れてもらった。
「よう!」
石神がいた。
しかし、大分憔悴していた。
肉がげっそりと落ち、顔色も青白い。
目にもいつものあの強い力が弱まっているような気がする。
やはりそうだったのか。
「い、石神……」
俺は言葉を喪った。
何と言って石神を慰めていいか分からなかった。
「おい、どうしたんだ? ああ、悪いな、ちょっといろいろあってさ」
「石神!」
「まあ、座れよ。丁度今、食事が終わったところなんだ。ちょっと仕事は休んでいてさ」
「お前……元気を出せよ」
「無理言うな! 大変だったんだよ。ああ、お前には話しておこうかな」
「いいよ、今は無理して俺なんかにまで気を遣うな」
「え? そういうことじゃねぇんだけど。まあ、とにかく座れよ」
亜紀ちゃんがコーヒーを持って来てくれた。
俺は涙が出た。
不味いとは思いながらも、石神の心を思うともう止められなかった。
慰めなければと思いながら、俺は聞きたくなかった。
石神が悲し過ぎる。
「おい! お前泣いてんのかよ!」
「……」
「何があった! 俺に話せ!」
「いや、お前の子どもが……」
「あ? ああ、そういえば話してなかったな!」
石神が笑顔を作った。
顔が引き攣っていた。
「いや、その話はいいんだ。俺は何と言えばいいのか……」
「亜紀ちゃん、俺のスマホ!」
「はーい!」
「ん?」
石神が足を引きずりながら、俺にスマホの画像を見せてくれた。
「悪かったな。お前には連絡するって言ってたもんな。ちょっと大変なことがあってよ。ほら、「吹雪」だ。カワイイだろ!」
「へ?」
「まあ、まだ新生児だからなぁ。でも、毎日六花みたいに綺麗な顔になってくんだぞ! 俺も二日しか見れなかったけどな! アハハハハハ!」
「子ども、死んだんじゃ?」
いきなり頭を殴られた。
「お前! ぶっ飛ばすぞ!」
「やってるじゃないか!」
石神の攻撃はモハメドさんも守ってくれない。
「何言ってやがんだぁ!」
「だって! お前、いつまでも連絡してくれないから。俺はてっきり……」
「あ? あ、ああ、そうか。そうだよな」
石神は笑って何があったのかを話してくれた。
石神家の本家の方でいろいろあったそうだ。
俺は石神の子どもが無事だったことが分かり、本当に嬉しくなった。
「うちに飲みに来てくれよ!」
「いいよ。家でのんびりしたいんだ」
「そんなことを言わずにさ! 雪野さんも心配してたんだ!」
「あー、そうかぁ。お前たちには悪いことしたよなぁ。じゃあ、ちょっとだけな」
「うん!」
石神家のみんなでうちに来てくれた。
途中で歩きながら、雪野さんに連絡した。
雪野さんも大喜びで、用意をすると言ってくれた。
「おい、ちょっと顔を出すだけだぞ。茶の一杯も貰ったら帰るからな」
「それでもいいよ。でも、本当に良かった!」
「うるせぇ、バカ!」
石神は笑っていた。
歩くのが少し辛そうだったが、それでも来てくれた。
亜紀ちゃんが横で肩を貸している。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇから家で寝てるんだろう!」
「あはははは」
門を潜り、玄関へ向かった。
玄関を開けると、「柱」さんと「小柱」ちゃんが待っていた。
「げ!」
「石神が来るのが分かるんだね」
「やめろよ」
ロボさんが手を挙げると、「柱」さんも手を挙げた。
仲が良い。
「柱」さんが石神を見て心配そうにしている。
手を伸ばして、石神の身体に触ろうとする。
「おい、大丈夫だって。すぐに治るよ。今はちょっと痛いけどな」
身体を何度も摩って石神と一緒に歩いた。
石神の顔が何故か硬直している。
「小柱」ちゃんはずっと石神の頭の上を回っていた。
何故か亜紀ちゃんが石神の腕を押さえていた。
「タカさん、ダメですって!」と小声で言っていた。
なんなんだろう?
エレベーターで3階に上がり、雪野さんが紅茶を淹れてくれた。
「石神さん、おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう。ごめんね、連絡をしてなくて」
「いいえ!」
石神が、石神本家でのことを詳しく話してくれた。
ルーちゃんとハーちゃんも一緒に説明してくれる。
相当な腕の剣士たちで、石神が当主になったことが分かった。
今後、妖魔との戦いで力強い味方になるということも。
「いっそ「アドヴェロス」で預かってもらおうかな」
「いや、石神が話して動いてもらった方がいいだろう」
「まあ、そうかもな。とても他人と協調するような連中じゃねぇしな」
石神が凄まじい鍛錬をさせられたと聞いた。
何度も真剣を身体に突き刺され、斬られたということだ。
「その傷がまだ癒えてねぇんだ」
「そうか、大変だったな」
「ああ、何度もブチ切れそうになったぜ」
雪野さんが、紅茶のお替りを淹れに立った。
「あ!」
小さく叫び、リヴィングの入り口を指差した。
「小柱」ちゃんが飛んできていた。
「小柱」ちゃんは真直ぐに石神の方へ飛んできて、胸に停まった。
「なんだ?」
《スポ》
「おい!」
「「「「「「「!」」」」」」」
「にゃ!」
「小柱」ちゃんが突然石神の胸の中に埋まってしまった。
頭がちょっとだけ出ている。
「なんだこりゃぁー!」
石神が慌てて叫んでいる。
他の子どもたちも驚いている。
「タカさん!」
「亜紀ちゃん! 早く抜け!」
「え! 大丈夫なんですか?」
「あ?」
「だって、完全に入っちゃってますよ!」
「あ、ああ」
「気分は悪くないですか!」
「ああ、なんか平気」
「タカさん!」
「お、おう!」
みんな、どうしようもなく見ているしか出来なかった。
「「「「「「「あ!」」」」」」」
「柱」さんも来た。
「タカさん!」
「あ、あいつは絶対に俺に入れるんじゃねぇぞ!」
「は、はい!」
亜紀ちゃんが「柱」さんを止めようとした。
「あぁー!」
そのまますり抜けてしまった。
すぐに戻って掴もうとする。
全然触れない。
ルーちゃんとハーちゃんも向かった。
柳さんが石神の前に立ちふさがった。
皇紀くんもだ。
ロボさんはそのまま。
全員、誰も「柱」さんに触れなかった。
「おい!」
石神が立ち上がった。
「柱」さんが石神の胸の「小柱」ちゃんの頭を叩いた。
《こん》
《すぽん》
「「「「「「「「……」」」」」」」」」
抜けた。
「柱」さんは「小柱」ちゃんを抱いて、一礼して部屋を出て行った。
「い、石神?」
「あ! 痛みが消えた!」
「た、タカさん、良かったですね」
「うーん」
みんな半笑いで良かったと言っていた。
石神は帰り際に「柱」さんと「小柱」ちゃんに礼を言って帰った。
後日、これから暑くなるからと、エレベーターホールにクーラーを取り付けてくれた。
「柱」さんが時々、リモコンを操作するようになった。
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