富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
1,676 / 3,215

蓮花研究所 慰安旅行 Ⅱ

しおりを挟む
 「蓮花さん! ちょっとはしゃぎ過ぎですよ!」

 出発して間もなく、全員におにぎりが配られた。
 蓮花と研究所員たちで作ったものだ。
 各バスに積み込まれ、全員が食べる。

 蓮花は嬉しそうに頬張り、後部座席の並びに座っていた後鬼に「これは美味しいから」と差し出した。
 後鬼は礼を言って受け取り食べた。
 悲鳴を上げて涙を零した。

 「ね! 美味しいでしょう?」
 「ワサビじゃないですか!」
 「アハハハハハハ!」
 
 ミユキに食べさせてあげると言い、鼻に押し付けたり、前鬼にはオチンチン・ウインナーを口から付き出して食べろと言った。
 呆れながらも、嬉しそうな蓮花に、みんなが笑った。

 バスガイドがいないと言って、蓮花が自分で前に行ってマイクを持った。
 
 「みなさま! 右をご覧ください。山でございます。左も山でございます! 群馬は山だらけでございます!」

 歌を歌い出した。
 『銀座の恋の物語』だった。
 前鬼が呼ばれ、無理矢理デュエットをさせられた。
 歌い終わって、前鬼が頬にキスをされた。

 「もう! 着く前に疲れてしまわれますよ!」
 「大丈夫! ちゃんと「Ω」の粉末を持って来ています」
 「それは遊びで使うものではありません!」
 「オホホホホホホ!」

 ジェシカとミユキの二人で何とか宥め、蓮花は後ろのシートで眠った。
 
 「随分と楽しそうですね」

 蓮花の前で二人席を独占しているシャドウが嬉しそうに笑った。

 「でも、ほら。やっぱりお疲れなんですよ。もうグッスリです」
 「はい」

 蓮花の微笑んでいる寝顔に、みんなが優しい気持ちになった。




 観光バスがDランドの駐車場に着くと、既に石神の子どもたちと六花たちが到着していた。
 蓮花が真っ先にバスを降り、丁寧に今日の案内を頼んだ。

 「大丈夫ですよ。Dランドのスタッフの方々がちゃんと案内してくれますから」
 「さようでございますか!」
 「今日は貸切ですから、みなさんゆっくりと好きなアトラクションを楽しんで下さい」
 「はい! それはもう!」

 ゲートが開放され、全員が中へ入って行く。
 今日はチケットも何もない。
 全員、好きなだけアトラクションを楽しみ、好きなだけ飲食し、好きなだけお土産を持って帰れる。
 Dランドのキャラクターたちが出迎えて歓迎してくれた。
 こんなサービスはいつもは無い。

 「さーて! 何から乗りましょうか!」
 
 蓮花が嬉しそうに笑い、シャドウやミユキたちを連れて移動した。
 シャドウの姿にキャラクターたちが驚いていた。

 「シャドウさん、ダンスも上手いのですよ?」

 蓮花が言うと、シャドウが踊る。
 軽快なステップに、キャラクターたちが笑った。

 「ああ、来ましたね!」

 上空から5000体のデュール・ゲリエが降下してきた。
 いずれも殲滅戦装備だ。
 蓮花の前に整列し、敬礼する。

 「それではみなさん! 今日は宜しくお願いします!」

 デュール・ゲリエは予め決められている持ち場に散開した。

 呆然としているキャラクターたちに、蓮花が投げキッスを送る。
 ジェシカやミユキたちは、もう仕方ないと諦めた。




 ブランと研究所員の混成グループ単位で行動する。
 それだけが決められたことだった。
 あとはアトラクションの順番や飲食、休憩も自由だった。
 事前にDランドのアトラクションは研究され、みんなどれがどのようなものなのか知っている。
 パレードの時間も知らされ、飲食の内容まで全員が把握していた。
 蓮花はジェシカ、シャドウ、ミユキ、前鬼、後鬼、そして羅刹が一緒にいる。

 「羅刹! 後で勝負しますよ!」
 「蓮花さん!」

 ジェシカが咎め、みんなで笑った。

 「わたくしが新技を教えて差し上げます」
 「宜しくお願いします!」

 羅刹も嬉しそうに笑った。
 他のグループも、楽しそうにアトラクションを選んで進んで行った。

 「蓮花さん、最初は何に行きましょうか?」
 「スプラッシュ・マウンテン!」
 「え! 大丈夫ですか?」
 「よゆーです」
 「はぁ」

 青白い顔になった。

 「みなさんで、こういうのは楽しんで来て下さい。私は待ってます」
 「蓮花さん!」

 とにかく一度休もうと、センターストリート・コーヒーハウスへ行った。

 「大丈夫ですか?」
 「よゆーです!」
 「ウソですよ!」
 「オホホホホ」

 時間はたっぷりあるので、ゆっくり回ろうとみんなで言った。

 「わたくしも、明日から訓練に参加いたします」
 「やめてください!」

 みんなで笑った。

 「前鬼、楽しいですか?」
 「はい! とても!」
 「ダメです!」
 「はい?」
 「もっと楽しみなさい!」
 「は?」

 みんなが笑った。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 「斬よ、もうそろそろ昼飯にしようぜ」
 「ふん!」

 朝からずっと組み手をやっている。
 疲れはそれほどでもないが、流石に5時間もやっていると嫌になる。
 石神家も呼んでおけば良かった。
 あの人らなら、幾らでも付き合うだろう。

 俺は無理矢理終わらせ、中に入ってシャワーを浴びた。
 斬も一緒に入って来る。

 「お前、着替えは持って来てるのか?」
 「ない」
 「汗臭いままでいるのかよ!」
 「戦場はどこでもそうだ」
 「ここは戦場じゃねぇ!」
 「ふん!」

 「ふんじゃねぇ!」

 仕方が無いので先に出て、替えの下着とコンバットスーツを貸した。
 皇紀用のが丁度いい。

 「これに着替えろ!」
 「ふん!」

 俺は食堂で待つように言って、手早く昼食を作った。
 天ぷらウドンに卵を落とした。

 「よう、お待たせ!」
 
 二人で食べ、俺はフルーツを適当にカットして出した。
 斬には日本茶を、俺はコーヒーだ。

 「お前、器用だな」
 「ふん! 戦場はどこでもそうだ!」
 「ふん!」

 斬が美味かったと言った。

 「お前、脳腫瘍だっけか?」
 「違うわ!」

 俺は大笑いした。

 「なんかよ、士王が生まれてからお前じゃなくなった気がしてよ」
 「士王はカワイイな」
 「それだよ!」
 「なんじゃ!」
 「お前、人間の血が流れてねぇ奴だったじゃん!」
 「何を言う!」
 
 桃が美味いと言った。
 もうからかうのはやめた。

 「お前、これまで何人殺した?」
 「覚えておらん」
 「そうか、俺もだよ」
 「ふん!」

 「数は覚えてねぇが、忘れられない奴がいる」
 「……」
 
 「俺たちは人殺しのろくでなしだけどよ。大事な人間のことだけ考えてりゃいいんだろうな」
 「……」
 
 斬が桃ばかり喰うので、俺に一切れ残せと言った。
 最後の一切れを残した。

 「まあ、お前はそんなに多くは無いだろうけどな」
 「そうじゃな」
 「栞と士王か」
 「そうじゃ」
 「少ねぇな!」
 「あとはお前とお前の子どもたちは守ってやろう」
 「あ?」
 「それだけじゃ」
 「ワハハハハハハ!」

 昼を食べ終え、斬に「演習ポッド」を案内した。

 「なんじゃ、これは」
 「ブランたちが訓練で使っているものだ。仮想現実で様々な戦いが出来る」
 「そんなもの」
 「いいから使ってみろよ。俺がセッティングしてやる」
 
 無理矢理服を脱がせて斬をポッドに入れた。
 ヘッドマウントディスプレイを装着する。

 「じゃあ、楽しめ。最後はボスキャラだ」
 「ふん!」

 俺はポッドの蓋を閉じた。
 これで3時間のんびり出来る。
 俺はいつも蓮花が使っていたであろう、簡易ベッドに横になった。
 



 まったく疲れるジジィだ。
 まあ、斬のための遊園地だ。
 楽しんで欲しい。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

処理中です...