富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

文字の大きさ
1,865 / 3,215

金庫番 木村真一

しおりを挟む
 花見が終わり、子どもたちは夕飯を食べた。
 鷹が出汁茶漬けを作ってくれ、俺と院長夫妻、早乙女夫妻、羽入で食べた。
 子どもたちは唐揚げを揚げた。
 今日は院長夫妻と鷹、羽入と紅を泊める。
 響子と六花はアビゲイルたちと一緒に帰っている。
 早乙女たちは近いので好きな時に帰る。
 羽入と紅は早乙女の部下なので、そっちに泊ってもいいのだが。

 「すみません、石神様の御宅で宜しいですか?」
 「構わないけど、紅は早乙女の家は嫌なのか?」
 「そういうわけではないのですが。あの、申し訳ないのですが、強い妖魔の王やよく分からない方々がいて、ちょっと落ち着かないといいますか」
 「そうか! やーい!」

 「「……」」

 俺が顔の横で両手の指をワキワキしてやると、早乙女達が沈黙した。

 「申し訳ありません」
 「いいって! じゃあ、お前たちは早乙女たちの「子作りの部屋」に泊めてやんな!」
 「石神!」
 「は?」

 俺がうちで怜花を仕込んだのだと話すと、四人が真っ赤になった。
 羽入たちはいいけど、早乙女たちは本当にそうだっただろう!

 「虎温泉」を用意し、みんなで順番に入った。
 院長夫妻は双子と。
 早乙女たちと羽入と紅は二人ずつで。
 最後に俺と亜紀ちゃんと柳。
 それほど長湯はしない。

 つまみを作る。

 ふろふき大根。
 ナスの煮びたし。
 豆腐と薬味各種。
 味噌田楽。
 獣用唐揚げ(さっきも食べてた)。
 鷹おでん(絶品)。
 
 今日は散々食べたので、あっさり目だ。
 みんなで「幻想空間」に移動する。




 「石神、今年も楽しかったよ」
 「そうですか。お二人にそう言って貰えると嬉しいですね」
 「ローマ教皇は参ったけどな」
 「アハハハハハ!」

 「石神さん、自分らまで呼んで頂いてありがとうございました」
 「羽入と紅には散々働いてもらっているからな」
 「はぁ」
 「お前らには気疲れもあったかもしれないけどなぁ」
 「いいえ! 千両の親父や桜さんたちとまた会えて嬉しかったですよ!」
 「そうか。紅は羽入がいればそれでいいんだよな?」
 「い、石神様!」

 紅が頬を染める。

 「皇紀ちゃんは残念だったね」

 ルーが言う。
 皇紀はまだフィリピンだ。
 
 「まあ、そうだけどな。でも俺たちは離れていたって一緒だしな」
 「そうだね!」

 俺と鷹、亜紀ちゃん、早乙女夫妻と羽入は冷酒を。
 院長夫妻はお茶。
 双子は千疋屋の生ジュース。
 
 「あー、御堂も泊まってけばいいのになー」
 「でましたね、御堂バカ!」
 「ワハハハハハハ!」

 御堂は酒も飲まなかった。
 本当に忙しいのだ。

 「俺は御堂と聖が……」

 早乙女が俺をじっと見ていた。

 「それと早乙女が大親友だからな!」

 早乙女がニコニコし、雪野さんが顔を背けて笑っていた。

 「タカさん、他にも一杯大事な人がいますもんねー」
 「そうなんだよな。あ! 院長たちはさっきローマ教皇に誓いましたからね!」
 「石神!」

 静子さんが笑った。

 「鷹はもちろん、最愛の女な!」
 「もう、他の女がいないからって」

 亜紀ちゃんの頭を引っぱたき、鷹が笑っていた。

 「じゃあ、タカさん、そろそろ」
 「鷹のおでんは最高だよなー」
 「石神先生、そろそろ」

 鷹が言い、みんなが笑った。

 「最愛の鷹に言われたらしょうがねぇな!」
 「はい!」

 「御堂を木村がまた迎えに来ただろう?」
 「はい、そうでしたね。タカさんに会えて嬉しいって言ってましたよね?」
 「あいつを御堂の秘書に誘った時に聞いた話なんだ」

 俺は高校時代の話をした。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 暴走族「ルート20」で、一つ下の木村が金庫番になった。

 敵対チームを潰して行くうちに、結構な金が集まっていた。
 誰かが管理しなければならないほどだった。
 木村は頭が良く、そして何よりも誠実で信頼出来る奴だった。
 井上さんが俺に相談し、俺は木村を推薦した。
 井上さんは、最初は俺に預けようと考えていたようだった。

 「あいつならしっかりやってくれますよ!」
 「そうだな!」

 井上さんもすぐに俺の推薦を認めてくれた。
 喧嘩は強くはないが、絶対に逃げることの無い男だった。
 それに、チームの誰かがやられそうになると、向かって行った。
 木村のお陰で助かった奴も多い。
 そして自分の意見は言わずに、言われたことは必ずやる。
 誰もがそんな木村を認めていた。

 木村はすぐに井上さんの名義で郵便局の預金口座を開設した。
 引き出せるのは通帳を持っている木村だけ。
 井上さんといえども、木村を通さなければ金は下せない。
 そういうことをした木村に、当初は他の幹部から反発があった。

 「キム! てめぇ井上さんにも引き出せるようにしろ!」
 「いけません!」
 「お前だけの金じゃねぇだろうがぁ!」
 「その通りです! でも、いけません!」
 「なんだとぉ!」

 幹部の一人が木村の胸倉を掴んだ。

 「自分だけが引き出せなければ、金の管理は出来ません!」

 木村が殴られた。
 何も言わないし逆らわない。

 「おい、木村。ちゃんと説明しろ」

 俺が乗り出して、幹部の奴に手を離させた。

 「井上さんは優しい方です!」

 みんなが納得している。

 「井上さんは頼まれれば、必ずその人に金を渡します!」
 「何がいけねぇんだ! 総長の権限だろう!」
 「そうすれば、収拾がつかない! あのお金は井上さんやトラさん、そしてみんなの力で集まったものです! 個人のことで使っちゃいけないんですよ!」

 全員が驚いた。
 木村はあの金の大事さを誰よりも考えていた。

 「使うならチームのためです! そして個人だって、井上さんや幹部の皆さんで話し合ってからです!」
 「木村!」

 井上さんが木村の名を叫んだ。

 「木村の言う通りだ! 簡単に手を付けちゃいけねぇ! キム! よく言った!」

 全員が木村を認め、殴った幹部は木村に謝った。

 「いいんですって。自分は命懸けであの金を守りますよ!」

 全員が木村を褒め称えた。
 木村は言った通り、金の管理をしっかりやってくれた。
 毎月、残高を幹部会で通帳を見せて説明した。
 金の出し入れを全て話し、俺たちはますます木村を信頼した。

 木村は金の使い道で、一つも自分の意見を言ったことは無かった。
 井上さんや幹部会で決まった通りに出し入れした。
 金を守るとは言ったが、それは管理の責任であって、チームの方針に従うだけだった。
 時々、誰かが木村の意見を求めた。
 その時だけは「自分などが」と言った上で、堂々と意見を述べた。
 その意見はいつも全員を納得させた。
 金の使い道に関しても、木村に意見を求めることが多くなった。

 木村は最高の金庫番だった。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

付喪神狩

やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。 容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。 自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜

南 鈴紀
キャラ文芸
 妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。  しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。  掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。  五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。  妖×家族の心温まる和風ファンタジー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

Lucia(ルシア)変容者たち

おまつり
恋愛
 人は、ときに自分の中に「もう一人の自分」を抱えて生きている。  それがもし、感情の揺らぎや、誰かとの触れ合いによって、男女の姿を入れ替える存在だったとしたら――。  カフェ『リベラ』を営むリアと、雑誌編集者の蓮。  二人は、特定の感情を抱くと性別が変わる「性別変容者」だった。  誰にも明かせない秘密を抱えながら生きてきた彼らは、互いの存在に出会い、初めて“同類”として心を通わせていく。  愛が深まるほど、境界は曖昧になる。  身体と心の輪郭は揺らぎ、「自分とは何者なのか」という問いが、静かに迫ってくる。  一方、過去に囚われ、自分自身を強く否定し続けてきたウェディングプランナー・景子と、まっすぐすぎるほど不器用な看護学生・ユウ。  彼らもまた、変容者として「変わること」と「失うこと」の狭間で、避けられない選択を迫られていく。  これは、誰の記憶にも残らないかもしれない“もう一人の自分”と共に生きながら、 それでも確かに残る愛を探し続けた人々の、静かなヒューマンドラマ。 ※毎日20時に1章ずつ更新していく予定です。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

処理中です...