1,902 / 3,215
皇紀 in 風花
しおりを挟む
月曜日に、フローレスさんが迎えに来た。
「おはようございます!」
「おはようございます。あれ、もういらっしゃらないかと」
「どうしてですか? 今日もコウキさんをご案内しなければなりません」
「そうですかー」
まだあるのかー。
いつものハンヴィに乗り込んだ。
まあ、ここまで来れば、どこまでもお付き合いしようと思った。
「ところでコウキさん、随分と有名になりましたね!」
「やめて下さいよ!」
運転しながらフローレスさんが嬉しそうに話した。
「今日もここに来るまでに、何人もそのヘアスタイルを見ましたよ!」
「そうなんですか!」
「はい! 最近では、私もそのヘアスタイルがちょっといいかと思ってます」
「え、じゃあ、前はやっぱり!」
「ええ、最初にお会いした時には、ちょっと頭のおかしい方なのかと」
「エェーーー!!」
「「ギャハハハハハ!」」
ルーとハーが僕の両脇で大笑いしていた。
「……」
やっぱりそうだったのかー。
「でも、一緒にいて分かりました。コウキさんは、ご自分が標的になるために、わざとそんなおかしな頭にしていたのですね!」
「おかしいですか!」
みんながまた笑った。
真岡さんまで笑っている。
それに、僕には標的になるつもりなんて、まったくなかったんだけど。
「まあ、いいですよ。それで、今日はどんな相手なんですか?」
「は? 軍事基地の候補地ですけど?」
「もう!」
フローレスさんが笑って答えた。
まあ、どんな相手でも構わないのだが。
20分ほど走った。
途中で見覚えがある景色を通った。
「あれ? ここは……」
「はい、ここがやはり宜しいのではないかと」
初日に来た、麻薬を育てていたギャングのアジトがあった場所だ。
山の中腹にあった屋敷や畑は既に無い。
残骸も片付けられ、整地作業が始まっている。
重機が何台か動いていた。
僕たちがハンヴィを降りると、向こうから走って来る人がいた。
「皇紀さーん!」
手を振って走っている。
「東雲さんじゃないですか!」
「ハァハァ、皇紀さん、待ってましたよ!」
「なんで!」
「虎の旦那に、ここを「虎」の軍の軍事基地にどうかって。あっしによく見ろって言われましてね」
「そうなんですかぁ!」
「はい。皇紀さんもいいんじゃないかと言ってたって。今日あたり来るから、一緒に話し合えってことで」
「エェー!」
東雲さんは笑いながら、仮設のプレハブの建物へ連れて行ってくれた。
緑茶が出て、僕は懐かしくそれを飲んだ。
フローレスさんが改めて話してくれた。
「「虎」の軍には、お好きな場所を提供するつもりだったんです」
「そうなんですか」
「一応こちらも候補地を探してはみたのですが、ここもその一つで」
「随分物騒な連中がいましたよね!」
「アハハハハ! でも、みなさんには何ほどのこともございませんでしたでしょう?」
フローレスさんが笑った。
「御希望があれば、別な場所でも。でも、ここであれば、山全体をお使い頂いて結構ですから」
「そうなんですか」
フローレスさんが僕に頭を下げた。
「「虎」の方にはお引き受け頂いていたのですが、この国は幾つも大きな利権を求める勢力がございました。最大のものは、昨日対応いただいた中国のマフィアです。他にも軍人や国内のマフィアなどが。基地建設が始まっても、恐らく様々な妨害や邪魔をしていたと思います」
「はい、それは「虎」からも先日聞きました」
「コウキさんは御存知ないとのことでしたが、それでも私たちに最後までご協力を頂きました。お詫びと深い感謝を」
「いいんですよ。僕も仕事で引き受けたことです」
フローレスさんが不意に僕を抱き締めた。
「私の両親と妹は、マフィアに殺されました。コウキさんはその連中を……」
「そうだったんですか」
「ありがとうございます」
「いいえ」
僕はその三日後に日本へ帰った。
改めて顕さんのお宅へ行き、ご馳走になったり、また大統領夫妻とも会食した。
フローレスさんが、一番美味しい中華のお店に連れて行ってもくれた。
「タイガーファング」が迎えに来て、驚いたことにタカさんも乗っていた。
「おう! ご苦労!」
「タカさん!」
タカさんが僕を抱き締めてくれた。
「よく頑張ったな」
「いいえ!」
荷物を載せて、僕たちは飛び立った。
「あー、早くみんなに会いたいですよ」
「ああ、でもちょっと大阪でゆっくりしろよ」
「え?」
「疲れを癒してから戻って来い。風花には話しているしな」
「タカさん!」
「お前も会いたいだろう?」
「はい!」
もちろんだった。
この2か月、まったく風花さんと話すことも出来なかった。
20分後、大阪の風花さんの屋敷に降り立った。
「タイガーファング」が発着できる広い場所がある。
風花さんがそこで待っていてくれた。
後部の扉が開き、僕は駆け出した。
「風花さん!」
「ギャハハハハハハ!」
「!」
風花さんが爆笑し、タカさんも後ろで大笑いしていた。
「ああ! これが見たかったぁ!」
「……」
風花さんはしばらく大笑いし、タカさんが僕たちの写真を撮った。
ルーとハーが僕に近づいて来た。
「皇紀様、楽しゅうございました!」
「皇紀様、またどこかの戦場でお会いしましょう!」
「なんだよ、時々遊びに来てよ!」
二人が顔を見合わせた。
「「はい!」」
二人が僕を抱き締めてくれ、笑って別れた。
「皇紀さん、本当に大変でしたの……ワハハハハハハ!」
「もう……」
風花さんを抱き締めた。
ポンパドールが風花さんの髪を押し上げ、また笑われた。
しばらく、キスは出来なかった。
でも、本当に嬉しかった。
お風呂に入り、風花さんが僕の髪と格闘して洗ってくれた。
やっとキスが出来た。
「お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
本当に嬉しかった。
「おはようございます!」
「おはようございます。あれ、もういらっしゃらないかと」
「どうしてですか? 今日もコウキさんをご案内しなければなりません」
「そうですかー」
まだあるのかー。
いつものハンヴィに乗り込んだ。
まあ、ここまで来れば、どこまでもお付き合いしようと思った。
「ところでコウキさん、随分と有名になりましたね!」
「やめて下さいよ!」
運転しながらフローレスさんが嬉しそうに話した。
「今日もここに来るまでに、何人もそのヘアスタイルを見ましたよ!」
「そうなんですか!」
「はい! 最近では、私もそのヘアスタイルがちょっといいかと思ってます」
「え、じゃあ、前はやっぱり!」
「ええ、最初にお会いした時には、ちょっと頭のおかしい方なのかと」
「エェーーー!!」
「「ギャハハハハハ!」」
ルーとハーが僕の両脇で大笑いしていた。
「……」
やっぱりそうだったのかー。
「でも、一緒にいて分かりました。コウキさんは、ご自分が標的になるために、わざとそんなおかしな頭にしていたのですね!」
「おかしいですか!」
みんながまた笑った。
真岡さんまで笑っている。
それに、僕には標的になるつもりなんて、まったくなかったんだけど。
「まあ、いいですよ。それで、今日はどんな相手なんですか?」
「は? 軍事基地の候補地ですけど?」
「もう!」
フローレスさんが笑って答えた。
まあ、どんな相手でも構わないのだが。
20分ほど走った。
途中で見覚えがある景色を通った。
「あれ? ここは……」
「はい、ここがやはり宜しいのではないかと」
初日に来た、麻薬を育てていたギャングのアジトがあった場所だ。
山の中腹にあった屋敷や畑は既に無い。
残骸も片付けられ、整地作業が始まっている。
重機が何台か動いていた。
僕たちがハンヴィを降りると、向こうから走って来る人がいた。
「皇紀さーん!」
手を振って走っている。
「東雲さんじゃないですか!」
「ハァハァ、皇紀さん、待ってましたよ!」
「なんで!」
「虎の旦那に、ここを「虎」の軍の軍事基地にどうかって。あっしによく見ろって言われましてね」
「そうなんですかぁ!」
「はい。皇紀さんもいいんじゃないかと言ってたって。今日あたり来るから、一緒に話し合えってことで」
「エェー!」
東雲さんは笑いながら、仮設のプレハブの建物へ連れて行ってくれた。
緑茶が出て、僕は懐かしくそれを飲んだ。
フローレスさんが改めて話してくれた。
「「虎」の軍には、お好きな場所を提供するつもりだったんです」
「そうなんですか」
「一応こちらも候補地を探してはみたのですが、ここもその一つで」
「随分物騒な連中がいましたよね!」
「アハハハハ! でも、みなさんには何ほどのこともございませんでしたでしょう?」
フローレスさんが笑った。
「御希望があれば、別な場所でも。でも、ここであれば、山全体をお使い頂いて結構ですから」
「そうなんですか」
フローレスさんが僕に頭を下げた。
「「虎」の方にはお引き受け頂いていたのですが、この国は幾つも大きな利権を求める勢力がございました。最大のものは、昨日対応いただいた中国のマフィアです。他にも軍人や国内のマフィアなどが。基地建設が始まっても、恐らく様々な妨害や邪魔をしていたと思います」
「はい、それは「虎」からも先日聞きました」
「コウキさんは御存知ないとのことでしたが、それでも私たちに最後までご協力を頂きました。お詫びと深い感謝を」
「いいんですよ。僕も仕事で引き受けたことです」
フローレスさんが不意に僕を抱き締めた。
「私の両親と妹は、マフィアに殺されました。コウキさんはその連中を……」
「そうだったんですか」
「ありがとうございます」
「いいえ」
僕はその三日後に日本へ帰った。
改めて顕さんのお宅へ行き、ご馳走になったり、また大統領夫妻とも会食した。
フローレスさんが、一番美味しい中華のお店に連れて行ってもくれた。
「タイガーファング」が迎えに来て、驚いたことにタカさんも乗っていた。
「おう! ご苦労!」
「タカさん!」
タカさんが僕を抱き締めてくれた。
「よく頑張ったな」
「いいえ!」
荷物を載せて、僕たちは飛び立った。
「あー、早くみんなに会いたいですよ」
「ああ、でもちょっと大阪でゆっくりしろよ」
「え?」
「疲れを癒してから戻って来い。風花には話しているしな」
「タカさん!」
「お前も会いたいだろう?」
「はい!」
もちろんだった。
この2か月、まったく風花さんと話すことも出来なかった。
20分後、大阪の風花さんの屋敷に降り立った。
「タイガーファング」が発着できる広い場所がある。
風花さんがそこで待っていてくれた。
後部の扉が開き、僕は駆け出した。
「風花さん!」
「ギャハハハハハハ!」
「!」
風花さんが爆笑し、タカさんも後ろで大笑いしていた。
「ああ! これが見たかったぁ!」
「……」
風花さんはしばらく大笑いし、タカさんが僕たちの写真を撮った。
ルーとハーが僕に近づいて来た。
「皇紀様、楽しゅうございました!」
「皇紀様、またどこかの戦場でお会いしましょう!」
「なんだよ、時々遊びに来てよ!」
二人が顔を見合わせた。
「「はい!」」
二人が僕を抱き締めてくれ、笑って別れた。
「皇紀さん、本当に大変でしたの……ワハハハハハハ!」
「もう……」
風花さんを抱き締めた。
ポンパドールが風花さんの髪を押し上げ、また笑われた。
しばらく、キスは出来なかった。
でも、本当に嬉しかった。
お風呂に入り、風花さんが僕の髪と格闘して洗ってくれた。
やっとキスが出来た。
「お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
本当に嬉しかった。
1
あなたにおすすめの小説
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
あやかし家族 〜五人の兄と愛され末妹〜
南 鈴紀
キャラ文芸
妖狩りにより両親を奪われ、囚われの身となった半妖の少女・鈴音は浄化の狐火を利用するだけの道具のように扱われていた。呪いにより成長は止まり、容姿も思考も幼いまま、感情が消え失せてもなおただ生かされるままに生きていた。
しかし妖保護部隊本部第一部隊との出会いにより、鈴音の止まっていた時間が動き出す。
掴みどころはないが頼れる氏神・雅仁、兄には厳しいが弟妹には優しい狼の妖・千里、人間嫌いだが人当たりの良い振りが得意な人間・遥杜、可愛いもの好きで元気いっぱいの猫又・鴇羽、大人しいが思いやりに溢れる猫又・瑠璃。
五人の兄と過ごす時間の中で、無いものだらけだった鈴音にもやがて大切なものが増えていく。
妖×家族の心温まる和風ファンタジー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
Lucia(ルシア)変容者たち
おまつり
恋愛
人は、ときに自分の中に「もう一人の自分」を抱えて生きている。
それがもし、感情の揺らぎや、誰かとの触れ合いによって、男女の姿を入れ替える存在だったとしたら――。
カフェ『リベラ』を営むリアと、雑誌編集者の蓮。
二人は、特定の感情を抱くと性別が変わる「性別変容者」だった。
誰にも明かせない秘密を抱えながら生きてきた彼らは、互いの存在に出会い、初めて“同類”として心を通わせていく。
愛が深まるほど、境界は曖昧になる。
身体と心の輪郭は揺らぎ、「自分とは何者なのか」という問いが、静かに迫ってくる。
一方、過去に囚われ、自分自身を強く否定し続けてきたウェディングプランナー・景子と、まっすぐすぎるほど不器用な看護学生・ユウ。
彼らもまた、変容者として「変わること」と「失うこと」の狭間で、避けられない選択を迫られていく。
これは、誰の記憶にも残らないかもしれない“もう一人の自分”と共に生きながら、
それでも確かに残る愛を探し続けた人々の、静かなヒューマンドラマ。
※毎日20時に1章ずつ更新していく予定です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる