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白い少女 Ⅲ
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北海道「無差別憑依」事件ので犠牲者たちも助かり、一息つくことが出来た。
佐野原稔が元に戻りそうだと話すと、佐野原さんが号泣した。
幸いにも「Ωカメムシ」が憑依された妖魔に有効であったことがまさしく僥倖だった。
飼育場も出来、本格的に稼働した。
しかし、まだまだ課題はたくさんある。
最大のものは、今後「Ωカメムシ」を量産し、妖魔憑依の特効薬を用意すること。
そしてその運用に当たって、各地にすぐに処置出来る体制を整えることだ。
いつどこで「無差別憑依」が起きるか分からない。
今回は敵に妖魔化を遅延する意図があったようだが、通常は妖魔に憑依されればすぐに乗っ取られる。
だから、即座に「Ωカメムシ」を投与するシステムを構築しなければならない。
それを特定の病院に置くのか、それとも別な機関に委託するのか。
本来は「虎」の軍で運用すべき機密なのだが、そのことで割ける人材がいない。
どうしても委託になってしまうのだ。
でもそうなると、勝手に薬品のことを調べられるわけには行かない。
どうにも悩ましい問題だった。
更に、俺は今後「業」が狙っている新種の伝染病のことも考えていた。
「業」は既存のウイルスに間違いなく妖魔を関わらせて来る。
そうなると、今の医学の領域では対処できないだろう。
ずっとそのことを考え続け、蓮花も研究しようとしていたが、成果は覚束なかった。
妖魔を混入するということが、どういうことかが不明だったためだ。
だからこれまでは、実際に感染症が発生してから対処するしかないかとも思っていた。
しかし、その時にどういうことが出来るかもまったく分からなかった。
それが「Ωカメムシ」の登場で、一気に見通せるようになったのだ。
もちろんまだ実際の検証は全く出来ていないが、俺には予感のようなものが確立していた。
まったく、またもやもあの双子の悪戯が実を結んだのだ。
俺にもどういうことか分からんが、笑いが止まらない。
そんな時、ルイーサ(レジーナ)から久しぶりに連絡が来た。
「タカトラ」
「おお、ルイーサ、久しぶりじゃないか」
「そうだ、どうして来てくれない」
「アハハハハ、悪かった。結構忙しかったんだよ」
電話の向こうでルイーサが少し笑った。
「ああ、知っている。ホッカイドウが大変だったようだな」
「そうなんだ。なんとか犠牲者も回復しそうでやっと一段落ついたところだ」
「ならば会えそうだな」
「いいけど、何かあったか?」
「何もなくとも会いたいのが恋人だ」
「なるほどな」
いつの間にか、ルイーサは俺の恋人の位置に座り込むようになった。
まあ、俺も嫌なわけではないのだが。
「分かったよ、久しぶりに会おうか」
「もう向かっている」
「なに?」
10月第2週の土曜日。
突然、ルイーサがうちにやって来た。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
チャイムが鳴り、すぐに亜紀ちゃんが外に出て絶叫した。
「なんなんですかぁー!」
超豪奢な馬車だった。
恐らく総黒檀の車体に金を回した窓や、他にも車体のあちこちに金や宝石が嵌め込まれている。
その宝石の大きさが尋常ではない。
人間の顔の大きさのルビーらしきものがある。
しかも馬が普通じゃねぇ。
明らかに角の生えた、しかも翼のある白馬だ。
俺も門まで出て驚いた。
「おい! これで来たのかよ!」
タキシードを着込んだ御者が馬車の扉を開き、中から出てきたルイーサに手を添えて恭しく頭を下げていた。
「タカトラ」
「お、おう」
ルイーサがグレーを基調にした豪華な総レースのドレスで俺を見ていた。
長い髪が一本の乱れなく結い上げられている。
「おい、いきなり過ぎるだろう」
「フフフ、お前の驚く顔が見たかった」
「まったくよ! まあ入れよ。もちろん大歓迎だ」
「ありがとう、タカトラ」
馬車も一緒に入るかと思ったのだが、俺たちに一礼して去って行った。
どこに行くんだろ?
まさか駐車場じゃねぇと思っていたら、空中へ駆け上がって消えた。
「「……」」
ルイーサの荷物を亜紀ちゃんが受け取った。
何だか分からん黒い金属の大きな箱だった。
表面に様々な意匠が刻まれ、これまた金銀、宝石で覆われている。
「お、重い!」
2トンを片手で楽々持ち上げる亜紀ちゃんが「重い」と言った。
「大切な土産だからな。落とすなよ?」
「は、はい!」
亜紀ちゃんは何とか持った。
のだが、床が抜けると困るので、ルイーサに事情を話し庭に箱を置いてから一度ウッドデッキで拡げた。
「なんだ、美獣ともあろう者が床が抜けるような屋敷に住んでおるとは」
「そう言うな。日本じゃ普通の家なんだ」
「そうか。まあ、今度私が城を建ててやろう」
「いや、遠慮する」
ちょっと早乙女などの顔が浮かんだ。
ルイーサが大きな箱を開いた。
物凄い甲冑が入っていた。
「黒小人共にやっと作らせた。タカトラの防具だ」
「おい!」
「タカさん! スゴイですよ、これ!」
銀色を基調に、青がところどころに入っている。
青は何かの宝石のようにも見えるが、随分と長いラインもある。
もしかしたら巨大なサファイアを削り抜いたのか。
甲冑にも箱と同様に全体に細かな意匠が刻み込まれ、意味は分からないが霊的に防衛する仕組みなのが分かった。
ところで「黒小人」ってなに?
「精霊銀に、ブルーエドワイスなどを嵌め込んでいる」
「そう?」
全然分からん。
「ドラゴンのブレスにも耐えられる。まあ、お前がそのまま喰らうわけもないがな」
「こんなの着られないぞ」
「大丈夫だ」
「おい、重量はどれほどあるんだよ」
「およそ8トン」
「バカ!」
「大丈夫だ。装着すれば重さは感じない」
「なんだと?」
「そういう作りだ」
「でも、実際に8トンあるんだろ?」
「まあな」
「……」
「今、お前を前にしているから大分軽くなっている」
「なんだと?」
「大体200キロか。お前がもう見たからな」
「自分で軽くなったのか?」
「そういうことだ。もちろんお前が望めば元の重さにも戻る」
「へぇー」
取敢えず、分かった。
亜紀ちゃんが甲冑を箱に仕舞っていく。
「あ、ほんとに軽い!」
そういうことらしい。
後で裏に運ぶことにし、ルイーサを中へ入れた。
「狭いな」
「うるせぇ!」
玄関で、ルイーサは靴を脱がなかった。
まあ、そういうことだ。
ロボも足を拭うのに。
雑巾を持った亜紀ちゃんが無視された。
佐野原稔が元に戻りそうだと話すと、佐野原さんが号泣した。
幸いにも「Ωカメムシ」が憑依された妖魔に有効であったことがまさしく僥倖だった。
飼育場も出来、本格的に稼働した。
しかし、まだまだ課題はたくさんある。
最大のものは、今後「Ωカメムシ」を量産し、妖魔憑依の特効薬を用意すること。
そしてその運用に当たって、各地にすぐに処置出来る体制を整えることだ。
いつどこで「無差別憑依」が起きるか分からない。
今回は敵に妖魔化を遅延する意図があったようだが、通常は妖魔に憑依されればすぐに乗っ取られる。
だから、即座に「Ωカメムシ」を投与するシステムを構築しなければならない。
それを特定の病院に置くのか、それとも別な機関に委託するのか。
本来は「虎」の軍で運用すべき機密なのだが、そのことで割ける人材がいない。
どうしても委託になってしまうのだ。
でもそうなると、勝手に薬品のことを調べられるわけには行かない。
どうにも悩ましい問題だった。
更に、俺は今後「業」が狙っている新種の伝染病のことも考えていた。
「業」は既存のウイルスに間違いなく妖魔を関わらせて来る。
そうなると、今の医学の領域では対処できないだろう。
ずっとそのことを考え続け、蓮花も研究しようとしていたが、成果は覚束なかった。
妖魔を混入するということが、どういうことかが不明だったためだ。
だからこれまでは、実際に感染症が発生してから対処するしかないかとも思っていた。
しかし、その時にどういうことが出来るかもまったく分からなかった。
それが「Ωカメムシ」の登場で、一気に見通せるようになったのだ。
もちろんまだ実際の検証は全く出来ていないが、俺には予感のようなものが確立していた。
まったく、またもやもあの双子の悪戯が実を結んだのだ。
俺にもどういうことか分からんが、笑いが止まらない。
そんな時、ルイーサ(レジーナ)から久しぶりに連絡が来た。
「タカトラ」
「おお、ルイーサ、久しぶりじゃないか」
「そうだ、どうして来てくれない」
「アハハハハ、悪かった。結構忙しかったんだよ」
電話の向こうでルイーサが少し笑った。
「ああ、知っている。ホッカイドウが大変だったようだな」
「そうなんだ。なんとか犠牲者も回復しそうでやっと一段落ついたところだ」
「ならば会えそうだな」
「いいけど、何かあったか?」
「何もなくとも会いたいのが恋人だ」
「なるほどな」
いつの間にか、ルイーサは俺の恋人の位置に座り込むようになった。
まあ、俺も嫌なわけではないのだが。
「分かったよ、久しぶりに会おうか」
「もう向かっている」
「なに?」
10月第2週の土曜日。
突然、ルイーサがうちにやって来た。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
チャイムが鳴り、すぐに亜紀ちゃんが外に出て絶叫した。
「なんなんですかぁー!」
超豪奢な馬車だった。
恐らく総黒檀の車体に金を回した窓や、他にも車体のあちこちに金や宝石が嵌め込まれている。
その宝石の大きさが尋常ではない。
人間の顔の大きさのルビーらしきものがある。
しかも馬が普通じゃねぇ。
明らかに角の生えた、しかも翼のある白馬だ。
俺も門まで出て驚いた。
「おい! これで来たのかよ!」
タキシードを着込んだ御者が馬車の扉を開き、中から出てきたルイーサに手を添えて恭しく頭を下げていた。
「タカトラ」
「お、おう」
ルイーサがグレーを基調にした豪華な総レースのドレスで俺を見ていた。
長い髪が一本の乱れなく結い上げられている。
「おい、いきなり過ぎるだろう」
「フフフ、お前の驚く顔が見たかった」
「まったくよ! まあ入れよ。もちろん大歓迎だ」
「ありがとう、タカトラ」
馬車も一緒に入るかと思ったのだが、俺たちに一礼して去って行った。
どこに行くんだろ?
まさか駐車場じゃねぇと思っていたら、空中へ駆け上がって消えた。
「「……」」
ルイーサの荷物を亜紀ちゃんが受け取った。
何だか分からん黒い金属の大きな箱だった。
表面に様々な意匠が刻まれ、これまた金銀、宝石で覆われている。
「お、重い!」
2トンを片手で楽々持ち上げる亜紀ちゃんが「重い」と言った。
「大切な土産だからな。落とすなよ?」
「は、はい!」
亜紀ちゃんは何とか持った。
のだが、床が抜けると困るので、ルイーサに事情を話し庭に箱を置いてから一度ウッドデッキで拡げた。
「なんだ、美獣ともあろう者が床が抜けるような屋敷に住んでおるとは」
「そう言うな。日本じゃ普通の家なんだ」
「そうか。まあ、今度私が城を建ててやろう」
「いや、遠慮する」
ちょっと早乙女などの顔が浮かんだ。
ルイーサが大きな箱を開いた。
物凄い甲冑が入っていた。
「黒小人共にやっと作らせた。タカトラの防具だ」
「おい!」
「タカさん! スゴイですよ、これ!」
銀色を基調に、青がところどころに入っている。
青は何かの宝石のようにも見えるが、随分と長いラインもある。
もしかしたら巨大なサファイアを削り抜いたのか。
甲冑にも箱と同様に全体に細かな意匠が刻み込まれ、意味は分からないが霊的に防衛する仕組みなのが分かった。
ところで「黒小人」ってなに?
「精霊銀に、ブルーエドワイスなどを嵌め込んでいる」
「そう?」
全然分からん。
「ドラゴンのブレスにも耐えられる。まあ、お前がそのまま喰らうわけもないがな」
「こんなの着られないぞ」
「大丈夫だ」
「おい、重量はどれほどあるんだよ」
「およそ8トン」
「バカ!」
「大丈夫だ。装着すれば重さは感じない」
「なんだと?」
「そういう作りだ」
「でも、実際に8トンあるんだろ?」
「まあな」
「……」
「今、お前を前にしているから大分軽くなっている」
「なんだと?」
「大体200キロか。お前がもう見たからな」
「自分で軽くなったのか?」
「そういうことだ。もちろんお前が望めば元の重さにも戻る」
「へぇー」
取敢えず、分かった。
亜紀ちゃんが甲冑を箱に仕舞っていく。
「あ、ほんとに軽い!」
そういうことらしい。
後で裏に運ぶことにし、ルイーサを中へ入れた。
「狭いな」
「うるせぇ!」
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