富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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パムッカレ 緊急防衛戦 Ⅵ

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 「おい! なんだよここは!」
 「ケロケロ!」
 「!」
 「トラ、すげぇな」

 全員が驚いている。
 以前に来ている聖も。
 そして俺も驚いた。

 以前は地球の自然環境に近いような星だったのだが、今は集落のようなものが点在していた。
 降下艇が上空で様々な大地を見せてくれたが、それで確認したのだ。
 まだ、村落程度ではあったが、あれは確かに集落だった。
 上空からの映像であったため、どのような人種がいるのかは見えなかったが。

 目の前の空間がキラキラと輝く。
 虎白さんたちが刀を抜いて構えた。

 「はろー!」
 「みなさん、お待ちください! 敵ではありません!」

 俺が何もしないで放置していたので、慌ててグランマザーが叫んだ。
 まあ、ここに敵がいるはずがないのだが。
 こいつはあれかー。

 「石神様、以前にご紹介した管理者です」
 「ああ、羽虫か」

 グランマザーが勘弁して欲しいような顔になっている。
 羽虫にいたっては、堂々と文句を言った。

 「ひっどーい! この人らに斬られたら相当痛いよ!」
 「知るか!」

 羽虫は不満そうな顔だが、そのうちにニコニコして言った。
 
 「ねえ、前と比べてどうよ?」
 「おい、なんだよあれは! どうして集落なんてあるんだ!」
 「フフン、驚いた? 生物が進化したのよ。どんどん知性がついて、こうなってんの。スゴイでしょ?」
 「あれからそんなに時間は経ってねぇぞ!」

 聖をここへ連れて来てから、まだ1年も経っちゃいねぇ。

 「まー、ちょっとは私が手を貸したけどね。でも本質的に自力よ?」
 「なんだと! このままじゃ恐ろしく進むぞ」

 幾ら何でも、文明の発展の速度が速すぎる。
 このままではとんでもないことになる。

 「うーん、そんなことはないかな。基本的に地球がおかしいのよ。あれだけ短期間に機械文明なんて推し進めるのは、普通はないから」
 「なんだと?」
 「だって、地下資源を消費する文明でしょ? そんなの、掘り尽くしたら終わるじゃない。普通はそんなバカな文明は築かないよ?」
 「!」

 こいつ、ちゃんと理解していた。
 このまま機械文明に突入すれば、早晩この星は滅びることになる。
 だが、こいつはちゃんと制御するようだった。
 
 怒貪虎さんが来た。

 「ケロケロ」
 「うん、そう。ここじゃ、循環できる文明が発達するだけ。だから、地球じゃ中世くらいかな」
 「!」
 「ケロケロ」
 「よく分かるわね! そうなの、ここには「魔法」があるの! だから決して地球に劣る文明にはならないわ」
 「!」

 また俺だけ分からねぇ……

 「怒貪虎様、「魔法」のある文明は宇宙の中でも特殊です。ここは石神様の《神素》がふんだんにあり、それが膨大な「魔素」に変換されたお陰で「魔法」が使える環境になったのです」
 
 グランマザーが説明していた。

 「ケロケロ」
 「はい、さようでございます」
 「……」

 いいもん……

 「おい、羽虫」
 「なによ?」
 「俺たちはここに大技を撃ちに来たんだ。この星の生命体に影響が出ない場所はあるか?」
 「あー、じゃあ「虎砂漠」に行ったら?」
 「虎砂漠?」
 「石神様。わたくしがご案内いたします」
 「そうか」

 全員が降下艇にまた乗って移動した。
 虎白さんたちは理解が追いつかないまま、しかし俺にビビってはいないという顔をしながら黙っていた。
 俺の方では集落がどうなっているのか気になったが、今はそれどころではない。
 グランマザーが「虎砂漠」は赤道に近い地域だと説明した。

 「「虎砂漠」の南に「南虎海」がございます。先ほどは「東虎大陸」におりました。その東には「北虎海」が広がり……」

 どうでもいい。
 しかし、なんでもかんでも「虎」ナントカなのかよ。
 俺たちは広大な砂漠に降り立った。
 赤道直下だけあって、非常に暑い。
 ロボは砂が熱いので、俺の肩に乗る。
 ばかでかいマフラーのようで、ますます暑い。
 見かねたグランマザーが、降下艇にロボを入れてくれた。
 俺は早速、聖にレベル8の魔法陣を描かせた。

 「いいですか、ここのルーン文字が二次出力調整になってます。ルーン文字を入れ替えることで出力を調整します。そして一次出力の調整はこの……」

 剣聖たちが真剣に聞いている。
 レベル13まであるが、今日はレベル8が最大と思わせておく。
 自分たちでやろうとしても、それ以上は俺のように膨大な組み合わせの実証が必要になるので不可能だ。
 俺と聖だけの秘密になっている。
 今まで教えていたのはレベル3までだ。
 レベル5から時空が裂ける。
 一度見せてはいるが、出来るのは怒貪虎さんだけだ。
 あの人は一瞬で覚えた。
 多分、怒貪虎さんだけは、あの時既にルーン文字が二次出力の調整を担っていることを理解していた。
 ルーン文字にまで精通しているとは、流石だ。
 ただの戦闘バカではない、高い知性を有していることが分かった。
 
 聖が「聖光」でレベル8の「魔法陣」の威力を見せた。
 45度の射角で撃ち上げたが、威力が巨大過ぎて地表の砂が暴風と共に巻き上げられた。
 辺りが暗くなるほどだ。
 そして時空が裂け、巨大な触手が侵攻してこようとする。
 俺が「虎王」で《星落》を見舞って時空の裂け目ごと押し戻した。
 大体俺が対応出来るが、万一の場合のためにロボがいる。
 ロボは今は涼しい降下艇にいる。

 「すげぇな!」
 「高虎、どうして俺たちに教えなかったんだよ!」
 「あんたら! どこでも構わずにぶっ込むでしょうがぁ!」
 『ワハハハハハハハハハ!』

 笑いごとじゃねぇ。

 「いいですか! 教えますけど、絶対に気軽に撃たないで下さいよ! 今も見た通り、後から来る異次元の怪物の方が厄介なんですからね!」
 『オウ!』

 返事はいい。
 俺はうちの子どもたちを思い出した。
 あいつらもいい返事をしながら、俺の言う通りにしたことはねぇ。
 まあ、俺も覚悟はしている。
 虎白さんたちは、必要だと思えば絶対に躊躇しない。

 「この技が「業」に渡れば大変なことになるんですからね!」
 「分かってるよ、高虎」
 「うーん、イマイチ信用出来ないんだよなー」
 「分かってるって。俺たちの当主の命令だ。必ず従う」

 虎白さんが俺を見て言った。
 俺がどのような思いで自分たちを連れて来ているのか分かっているのだろう。

 信頼しろということだ。

 「じゃあ、やりましょう。図形は覚えましたか? 「小雷」で描く順番は、まず……」

 みんな必死で覚えて行った。
 虎蘭は嬉しそうに真っ先に練習している。
 これを覚えれば、《刃》に対抗出来ることを理解したのだ。
 それが嬉しいのだろう。
 




 虎蘭が自分を向いている俺に気付いてニッコリと笑った。
 俺も笑い返した。
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