富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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未来への希望 Ⅱ

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 大阪と京都から蓮花研究所へ戻り、一旦落ち着いた。
 二週間後には俺の体調も戻り、ようやく家に戻れるようになった。
 そして六花と栞にももうすぐ子どもが生まれる。
 今は7月の下旬になっている。

 俺の不在は病院では長期海外出張という扱いになっていた。
 もちろん院長の許可の下、一江が万事うまくやりくりしてくれている。
 病院へ出勤し、数日を過ごした。
 更に俺は六花と栞の出産の手配のため、何日か休暇をもらった。
 これも表向きは俺の夏休みということだ。
 申し訳ない。

 六花は俺が復帰するまで仕事を頑張ってくれていた。
 臨月に入っており、出産予定日は1週間後にまでなっている。
 栞は更にその2週間後だ。
 やっと六花を故郷へ行かせることが出来た。
 俺がハマーを運転して送った。
 前回は一人で行かせてバカな連中の襲撃を受けた。
 今回は「業」が本気で襲ってくる可能性もあるので、俺が自分で送ることにしたのだ。
 亜紀ちゃんと柳がアフリカ戦線を大分落ち着かせたので家に戻り、双子も一緒に付いて来ている。
 もちろんロボも一緒だ。

 六花の出産は栞のいる蓮花研究所とも考えたのだが、やはり「紅六花」の連中が六花の面倒を見たがるだろう。
 だからそちらで産んでもらうことにした。
 六花は助手席に座り、後ろで双子が吹雪と座っている。
 
 「トラ、風花と皇紀君の子どもたちは事前にトラが名前を決めていたんですってね?」
 「ああ、あいつらに頼まれてな。自分たちで考えろって言ってたんだけどよ」
 「素敵な名前です! 金華ちゃんと銀華ちゃん!」
 「ああ、性別に関係ない名前だからな。先に生まれた方が金華で、後が銀華だ。女の子が金華になったようだな」
 「うん! カワイイ子たちでしたよ!」
 「お前は会いに行ったんだよな?」
 「はい、ルーちゃんとハーちゃんと一緒に」
 
 身重の六花は戦闘が出来ない。
 だから護衛に双子が付いて行ってくれたらしい。
 ロールスロイスで、双子の運転だ。
 「虎」の軍法によって、特別措置で16歳で四輪の免許を得ている。
 ちなみに磯良も同じく特別免許を取得していた。

 「あいつら、運転も上手かったろう?」
 「ええ、驚きました。私の身体もずっと気遣ってくれて」
 「隠れてやってたからなぁ」
 「アハハハハハ!」

 双子が後ろでニコニコしている。
 密かに運転を練習していたことは知ってはいたが放置していた。
 法的に確立されるのは分かっていたからだ。
 まあ、あのワルたちが下手を打つわけもなかったし。

 「風花が幸せそうでした」
 「そうか。俺もちょっとだけ顔を出した。またゆっくり見に行きたいな」
 「ええ、是非」

 本当にそう思う。
 何しろ皇紀と風花の子どもなのだ。
 俺がどうにも忙しく顔を出すだけになってしまったが、やはりゆっくりと見てやりたい。

 ハマーは朝の7時に出発し、途中のサービスエリアで休憩を挟みながらゆっくりと走った。
 響子も来たがっていたのだが、またの機会にした。
 六花がいなくともナースの体制も整っているし、茜と葵も傍にいる。
 青の店にも響子のことを頼んで来た。
 少し寂しがるだろうが、俺もそうは離れないつもりだ。

 六花の体調も安定しており、不安は無かった。
 食欲も旺盛で、むしろ前回は少々食べすぎる程だったので出産間際になったのは丁度良かったかもしれない。
 六花の食欲よりも、「紅六花」の連中があれこれ世話をし過ぎたのだ。
 六花の初めての出産であり、みんなが喜び過ぎた。
 それ以外では、六花の出産の環境は最高だ。
 「紅六花」の仲間に助産師の奴もいるし、いい病院もあるのが分かっている。
 ガードに関しても、常にタケたちが傍にいる。
 六花の出産は大丈夫だ。
 一応蓮花研究所でも緊急事態の準備はしているし、石神家でも出動してもらえるようにしてある。
 「紅六花」も随分と強くなったし、大抵の事態は対処出来るはずだった。
 
 俺は運転しながら、隣の六花を見た。
 美しい女には変わりないが、また更に母親としての愛情が滲んでいる。
 六花の美しさの本質が、「優しさ」にあることがよく分かる。
 六花は子どもの頃から、他人への優しさに満ちていた。
 野性的なエネルギーも強いのだが、根底にある無辺の優しさが六花の真の美しさなのだ。
 俺の視線に気付いて、六花が微笑み返して来た。

 「?」
 「優しい顔をしていると思ってさ」
 「前からそうですよ」
 「一層だ。本当にいい顔だよ」
 「ウフフフフ」

 六花が目を細めて微笑んだ。
 その顔がまたいい。
 後ろで吹雪が楽しそうにしている。
 双子が吹雪と話し遊んでいるのだ。

 「吹雪、もうすぐだからな」
 「はい!」

 吹雪はいつでも御機嫌だ。
 六花が常に膨大な愛情を注いでいるからだが、性格も受け継いでいるようだ。
 六花の天真爛漫で仲間を信頼し、その大らかな気質が確かに備わっている。
 もうすぐに着くということと同時に、もうすぐ吹雪が兄になるということを含めている。
 どう受け取ってもいい。
 こいつには、どちらでも楽しみなことだ。

 「あ、街に入りましたよ」
 「そうだな」

 もちろんタケの店、「紅六花ビル」に向かっている。
 俺たちがまた大勢で押し掛けたが、あいつらは大歓迎してくれる。
 まあ、食材だけは事前に送っているのだが。

 午後1時過ぎ、タケの店が見えて来た。

 「あ、みんないますよ!」
 「そうだろうな」

 俺も笑いながら言った。
 六花が帰る時に、あいつらが揃っていなかったことはない。
 命じるわけでも期待しているわけでもなく、「紅六花」の連中がそうしたがっているのだ。
 「紅六花」総勢81名がタケの店の駐車場に集まっていた。

 『総長!』

 全員が叫んで駐車場に入るハマーに駆け寄って来た。

 「バカヤロウ! 危ねぇだろうが!」
 
 全員が笑っている。
 まあ、撥ね飛ばされても轢かれても問題ない連中だが。
 車を停めると、すぐに助手席のドアがよしこに開かれ、手を取られて六花が降りた。
 全員が六花の周囲に集まる。
 俺たちも笑って車を降りて、その様子を見ていた。
 俺たちには挨拶もしねぇ。
 ひとしきり六花を歓待し、やっと俺たちにも集まって来た。
 俺たちは勝手に荷物を降ろし、タケのビルに運ぼうとしていた。
 それに気付いて慌てて連中が荷物を持とうとする。

 「いいよ、自分たちでやるから」
 「すいませんでしたぁ!」

 笑って荷物を運び、タケがエレベーターを操作する。
 他の連中は六花と一階の食堂に入って行った。

 「タケ、待たせて済まないな」
 「いいえ、とんでもない。総長のことはお任せ下さい」
 「ああ、また宜しく頼むな」
 「はい!」

 俺たちも荷物を置いて下の食堂へ行った。
 まだ六花を取り囲んで騒いでいる。





 六花の故郷であり、大切な場所。
 「紅六花」の連中が、だからこそ必死で守っている場所。
 その場所に六花が帰って来た。
 本当に嬉しいのだろう。

 いつでも六花に会いたい連中がここで待っている。
 親友の紫苑の夢のために故郷を離れた六花。
 でも、心の中に常にあるこの故郷。
 大事な仲間がいるこの街。

 六花は帰って来たのだ。
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