富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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竹流と馬込、石神家へ

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 11月の初旬。
 馬込は朝の8時に俺の家に来た。
 双子が馬込に「Ωコンバットスーツ」に着替えさせた。
 サイズは二人が測って用意していた。
 やがて竹流もアゼルバイジャンから飛んで来た。
 俺が二人を連れて一緒に石神家へ向かった。
 俺は行きたくなかったのだが、こればかりは仕方が無い。
 「飛行」で出発し、10分で盛岡の石神の里に到着した。
 山頂で鍛錬していた虎白さんに二人を紹介する。

 「高虎、こいつらか」
 「はい、よろしくお願いいたします!」

 虎白さんは、まず竹流を見た。

 「おう。でも、こっちは随分と仕上がってるじゃねぇか」
 「連城竹流です。もう「虎」の軍で働いてますよ」
 「連城……、ああ、あいつかぁ」

 虎白さんが、何故か懐かしそうな顔をした。

 「虎白さん、知ってるんですか?」
 「前にちょっとな、連城十五が何度か来てんだ。最後はあいつが「裏鬼」になる時にか、ここに挨拶に来たんだよ」
 「え! そうだったんですか!」
 「まあいいよ、それにしても、こっちはどうなんだよ?」

 虎白さんは馬込を見て、顔をしかめていた。

 「まだ「花岡」をちょっと収めた程度です。まるで素人と思って下さい」
 「おい、そんな奴を連れて来たのかよ」
 「お願いします。最初は剣士見習いでもいいですから」
 「その段階でもねぇぞ。まあ、お前の頼みならしょうがねぇ、預かるか」
 「お願いします!」
 「ぶっ壊してもいいよな?」
 「まあ、出来れば成長させる方向で」

 俺たちの会話を聞いていた馬込がちょっとビビっていた。
 俺もこの人には強いことが家ねぇ、すまんね。
 竹流と馬込が挨拶し、竹流は鍛錬場に、馬込は若い剣士に連れられてどこかへ行った。
 なにすんだろ?
 まあ、こっからは虎白さん任せだ。
 帰ろうとすると、虎白さんに怒鳴られた。

 「早く来い!」
 「はい!」
 
 ですよねー。
 俺は離れた場所で剣聖たちと鍛錬した。





 その晩は俺も泊まることになった。
 馬込がひでぇ状態だったからだ。
 「石神ヘッジホッグ」の中の医療施設に運び込んだ。
 右手が切断寸前で、両足も深く何個所も斬り裂かれていた。
 胴体も無数の切り傷と刺し傷。
 俺の「虎地獄」に近い状態だった。
 まあ、前にもしょっちゅう酷い怪我が多かったので、俺が本格的な設備を「石神ヘッジホッグ」の中に揃えた。
 元々傷口の縫合程度は自分らでこなす人たちだ。
 それで済まない場合はここで応急処置をしながら橋田病院へ搬送する。
 俺がこの施設を作ったのは、橋田病院へ運び込む時間が無いことが多かったからだ。
 動かせない怪我人の代わりに、橋田病院から医師たちをここへ運べる。
 「飛行」で運べるので、搬送よりも断然早い。
 俺がいる場合は、もちろん俺が処置するのだ。
 処置を終えた俺は、ここでは虎白さんに全てを任せているので文句は言わないが、何があったのかを尋ねた。

 「「虎地獄」に決まってんだろ?」
 「どうしてですか! 馬込は素人だって言ってたでしょう!」
 「早く仕上げるには、それが一番なんだよ」
 「でも、馬込はまだ」
 「高虎、お前はまだあいつが子どもで10代だからって言いてぇのか?」
 「!」
 「高虎は10歳の時に何をした! こいつの年齢の時にどうだったんだよ! 命かけて暴れてたのはお前じゃねぇのか!」
 「はい、すみませんでした!」

 その通りで、虎白さんが正しい。
 俺はいつの間にか、通常の現代観念で考えようとしていた。
 馬込がいい奴だったからだ。

 「しっかりしろ、高虎。ここでは子どもも女もねぇ。戦う奴がいるだけだ。まあ、あいつがもう勘弁してくれって言うなら連れて行けよ」
 「馬込は絶対にそうは言いませんよ」
 「じゃあそれでいいだろう。今晩は泊ってけ」
 「はい」

 俺に馬込の状態を面倒見ろということだ。
 実際、予断を許さない状態だった。
 まあ、俺がいるからこそ馬込をここまで追い込んだのだろう。
 ならば仕方がねぇ、俺の役割をやるだけだ。





 千石の時と同様に、2時頃に激しい痛みで馬込は目を覚ました。
 人間の身体はきつい傷を負った場合に意識を喪って最大限の回復を図ろうとするものだが、それ以上の痛手がある場合はそれも出来ない。
 要は死に掛けた状態なのだ。
 眠って治るものでないので、何とかしろというこれもまた肉体の反応だ。
 自然環境では、大体そのまま死ぬ。
 最後には痛みも麻痺されて、緩慢に死んでいくのだ。

 処置は全て終わっており、縫合も済んでいる。
 ただ、余りにも多くの傷を負ったことで肉体が悲鳴を挙げている。
 俺は「エグリゴリΩ」と「オロチ」の粉末を溶かした水溶液を、水差しで馬込に飲ませた。

 「どうだ?」
 「はい、飲んだ瞬間に少し楽になりました」
 「そうか」

 言いながらも、馬込は苦悶の表情で、指一本動かせない。

 「俺もやられたし、他にも何人もひでぇ状態の奴を見てる。お前もだから大丈夫だよ」
 「そうですか……」

 千石の時には何か口に入れられる状態だったが、馬込は無理そうだった。
 あまりにも身に付けたものが拙く、一切の攻撃を避けることが出来なかったためだろう。
 俺は馬込に尋ねた。

 「馬込、まだ強くなりてぇか?」
 「はい!」

 全身を苛む激痛と高熱の中で、馬込ははっきりと返事した。

 「じゃあ、特別をやってやるよ」
 「はい?」

 俺はシリンジで俺の静脈から血を20CC採った。
 馬込の左腕を縛り、俺の血を入れて行く。
 馬込の表情が張り裂けた。
 一瞬身体をのけ反らせ、両目を見開いた。
 縫合した無数の傷口から血が滲み、そしてすぐに塞がって行く。
 最悪だった右腕からも血が噴き出した後で、みるみる修復されていった。
 馬込が布団の上に上半身を起こした。
 先ほどまでの朦朧とした目に、光が戻っていた。
 馬込が俺を向いて言った。

 「石神さん」
 「なんだ?」
 「腹が減りました」
 「そっか」

 俺は笑ってスムージーを先に作り、その間におかゆを炊いた。
 馬込がスムージーを夢中で飲み、少し後のおかゆを掻き込んだ。
 さっきまでの辛そうな素振りはもう無い。

 「楽になったか?」
 「はい、ありがとうございます! あの、注射はなんだったんですか?」
 「知らなくていい。俺は医者だからな、いろいろ知ってんだよ」
 「そうでした! スゴイお医者さんなんですよね!」
 「まあ、凄かねぇけどよ」
 「一瞬でしたよ! 身体が熱くなって燃えるかって思った瞬間に、楽になってました」
 「効いて良かったよ」
 「はい!」

 馬込にまた眠るように言った。
 横になると、すぐに寝息をたてた。
 もう大丈夫そうだ。
 俺は馬込の状態を朝まで観察した。
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