富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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「虎」の軍 最強集結

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 12月27日。
 俺は蓮花研究所へ来ていて、栞たちと一緒に食事をしていた。
 俺が来たのを知って、斬もやって来る。
 まあ、大体こいつは毎日来ているのだが。
 栞と士王と千歌に会いにだ。
 士王にはよく稽古を付けてくれている。
 斬も夕飯を一緒に食べ、話した。
 斬は相変わらず人殺しのくせに、所作が美しい。

 「おい、最近はどんな状況じゃ?」
 「あ?」
 「だから戦況じゃ! 何かないのか!」
 「ああ、お前、興味あんの?」
 「あるに決まっておるわ!」
 「そうか」

 頷いて食事を続けた。
 いろいろあったけど、話すのがめんどくせぇ。
 それに今は蓮花の作ってくれた食事に夢中だぜ。
 俺が黙っていると斬が怒った。

 「おい!」
 「あなた、話してあげてよ」

 栞が困った顔で俺に言う。

 「もう、めんどくせぇなぁ。じゃあいいか? こないだ石神家に行ってて幾つか決まったことがあんだ」
 「早く教えろ!」
 「あ、なんかその気がなくなった」
 「きさまぁ!」
 「あなた!」

 しょうがねぇなぁ。

 「分かったよ! まず、二つの新設部隊が決まった。一つは《トラキリー》という救護隊で、もう一つは《ハイドラ》と命名したが、本隊の背後を護る部隊だ」
 「詳しく言え」
 「このやろう。救護隊は、今まで衛生兵に担わせていた救護活動を専門にやる部隊だ。俺たちは数で圧倒的に負けているからな。死傷者は出来るだけ減らしたい。衛生兵以上の専門知識と技能、装備、それに一般人の救助活動も行なう」
 「なるほどじゃ」

 蓮花の水菜入りの出汁巻き卵が最高に美味かった。
 
 「蓮花、これいいな!」
 「オホホホホホ」
 
 斬がまた睨み、栞が「あなた」と言う。

 「《ハイドラ》は予測外の攻撃に対処する部隊だ。これまでも本隊が想定外の襲撃に晒されて危なかったことが幾度もあった。本隊が作戦任務を遂行し、それ以外の全ての事態に対処する。そういう過酷な部隊だ」
 「ほう、そんなものをか」
 「並大抵じゃねぇ。だからとびっきりの連中を集めるつもりだ」
 「精鋭か」
 「うーん、そういうんじゃないんだよなぁ。もっと何て言うか、こすっからい連中だ。そんなに人員は割かない。大体100名程度の小隊規模か」
 「そんなに少ないのか!」
 「ああ。《ハイドラ》はギリシャ神話の100首の化け物だ。ヒュドラとも言うな。その人数で数百億の敵襲にも対応できるようにする」
 「そんなことが可能なのか!」
 「やらせるよ。「ゲート」が多数開くと、今後多分その規模で急襲される可能性があるからな。どうだ、お前でも厳しいだろ?」
 「ふん!」

 斬が御不満だ。
 栞が困った顔で俺を見ている。
 「まったくもう」という栞の呟きが聴こえた。
 士王は別にニコニコ。
 千歌は栞のオッパイをたっぷり飲んで寝てる。
 蓮花とジェシカ、桜花たちは聞こえないフリ。

 「まあ、お前にもそのうちにそれくらいの数はこなせるようになってもらうよ」
 「ふん、お前は出来るのか?」
 「まあな。それにデュールゲリエの新機体も建造している」
 「なんじゃ、それは?」
 「機密なんで今は詳しくは話せない。でも、先日戦場で実戦で性能試験と破壊検証をした」
 「!」
 「ここにも既に配備している。これまでの襲撃規模ならば楽々こなせるぞ」
 「わしと戦わせろ!」
 「無茶言うな! 機密の機体だって言っただろう!」
 「おい!」
 「てめぇ! 「どこ中」だよ!」
 「なんじゃ!」

 ジョークは通じなかった。
 場を和ませようとしたのに。
 栞と桜花たちは笑っていた。
 そう言えば斬は学校そのものに通ってなかったかもしれない。





 今回蓮花の研究所に来たのは、俺たちの最大戦力を測るためだ。
 俺と聖、斬、石神家から虎白さんと虎蘭、亜紀ちゃん、「グレイプニル」からマルコルムという大隊指揮官、バチカンのマクシミリアン、道間家の麗星、「アドヴェロス」の磯良、「ガンスリンガー」のソニアと弟のマーク、「虎酔会」から伊庭、「紅六花」からカリン、それとジョナサン。
 戦力差は歪だが、各部隊の最強と特殊能力の人間たちだ。
 互いの技を観て、何か得る所も多いだろう。
 まあ、なんだか知らんがうちには斬のようなバトルジャンキーが多い。
 その他に各部隊や組織からの観測希望者を選定した。
 研究所からは蓮花とジェシカ、早乙女と成瀬、あとはうちの子どもたちや「虎の穴」のターナー大将や大将クラスの武官その他。
 もちろん、こいつらが全力でやったら地獄絵図だ。
 だから「ポッド」を使う。
 
 忙しい連中もいるが、俺の都合で俺がここへ来た翌日の12月の28日に全員が集まった。
 聖と斬、亜紀ちゃん以外はポッドのことは知らない。
 「ポッド」は俺たちの機密の一つなので、一応ここでの体験は外では話さないことを誓約させた。

 「これから全員に「ポッド」に入ってもらう。バーチャルリアリティによって、仮想空間の中で戦えるようになる。超量子コンピューター《ロータス》が各々の動きを再現し、技も繰り出せる。誰にも見せていない技であっても、《ロータス》がちゃんと再現するはずだ」
 「それは技を盗まれるということか?」
 「まあ、そうとも言える。《ロータス》は思考を読み取って再現するからな。見られたく無ければその技は使わなくていい。だけどよ、俺らの間で何か隠す必要があんのか?」
 
 全員分かっている。
 国家同士の戦争であれば、後々のことを考えて戦力を隠す必要もあるだろう。
 しかし俺たちは同じ軍隊であり、互いの戦力を知ってこそ戦場で共闘出来るのだ。
 既に連携は始めてはいるが、各部隊・組織共に戦力も技も全然違う。
 それを互いにすり合わせる必要があった。
 それに《ロータス》が何を解析しようと、それが他の人間にも出来るようになるものでもない。
 あくまでも個人が練り上げて来たものでしか習得出来ない。
 一通りの説明の後、全員でポッドに入った。
 亜紀ちゃんと麗星、虎蘭とカリンは女性なので、仕切を設けてある。
 まあ、全然構わない連中なのだが。
 虎蘭のお腹がちょっと出て来ていた。

 「バーチャルの中では子どもの心配はいらないからな。思い切りやれよ」
 「はい!」
 「タカさん、あっち行ってください!」
 「てめぇのはもう見慣れてる!」
 「ヘンタイ!」

 麗星と虎蘭が大笑いした。

 全員ポッドに入り、《ロータス》がバーチャル環境に移行した。
 俺たちはヒマラヤ山脈の麓に立っていた。
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