富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《轟霊号》初出撃 Ⅲ

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 アラスカを出た《轟霊号》が、8時間後にインド洋を抜けた。
 初めての遠距離航行であり、各部の点検をしながらで敢えて時間を掛けた。
 もちろん全く問題は無い。

 俺はウィルソン外務次官に命じてソーメリア連邦国政府へ宣戦布告を伝えさせた。
 それは一応の国際的な慣例に則ったということではあるが、実際には俺たちは国家ではないので本来は不要だ。
 言ってみれば「テロリスト組織」による襲撃に過ぎない。
 先に戦争を仕掛ける宣言をしたのは、目的がある。
 要するにソーメリアの国民に対して、「虎」の軍が「業」の支配を解くという宣言なのだ。
 主だった都市にも同様に伝え、全土が攻撃対象になると伝えた。
 当然ロシア軍にも伝わるだろうから、「業」も俺たちの襲撃を知ることになる。
 ロシア軍の通常戦力は物の数ではないし、ソーメリア軍などほとんと俺たちには意味がない。
 恐らく「ゲート」を主体とした妖魔やライカンスロープ、ジェヴォーダンの反撃になるだろうが、どのような展開になるか。
 「業」に知られずに作戦を展開すれば反撃は遅れるだろう。
 しかし俺たちはソーメリアの国民に対して救出に向かうことを知っておいて欲しかった。
 64万平方キロの広大な国土の中で幾つもの戦線が出来る。
 「業」は果たしてどのような手を打って来るか。
 「ゲート」での包囲攻撃が厄介だが、「ニーズヘッグ」と「マルドゥック」を十分に配備している。

 《轟霊号》の移動は、恐らく「業」には発覚していない。
 ロシアは偵察衛星の全てを喪い、洋上のロシア軍の艦船もほとんど俺たちの手で撃沈している。
 偵察衛星は俺とイリスが、そして洋上の艦隊は俺と鷹が撃沈した。
 原潜の一部は残っているかもしれないが、《轟霊号》のソナーや「霊素観測レーダー」は何も捉えていない。
 偶然に感知したとしても、高速で洋上を移動する巨大な《轟霊号》が何なのかも理解出来ないだろう。
 ソーメリアのアデン湾に突入した《轟霊号》から、各攻略部隊が発進していく。
 また「ウラール」が「ニーズヘッグ」を護衛機として発進し、全国土に「虎」の軍の攻撃を報せながら敵戦力の探知を行なう。
 住民に避難を勧告し、抵抗しない場合は攻撃しないという内容を繰り返していく。
 「業」の支配からの救出を謡い、ソーメリアへの侵略では無いことを告げて行った。
 同時に《轟霊号》の超量子コンピューター《レイ》がテレビ放送、ラジオ放送、インターネットに介入し、同様の内容を報せて行く。
 《ハイヴ》攻撃チームが現地に向かう。
 「ヨルムンガンド」が《ハイヴ》に飛び、《シャンゴ》の投下を始めた。

 「トラ、始まったな」
 「ああ」

 聖が艦橋で前を向きながら言った。
 腕を組んで、笑っている。
 
 「お前の出番も来ると思うぞ」
 「当然だぁ!」

 聖が高らかに笑った。



 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 ソーメリアの《ハイヴ》のレベルはまだ3~5だ。
 レベル5のものは今回最強の虎白さんの部隊が担当する一つだけ。
 私は4つあるレベル4の《ハイヴ》にいる。
 「ヨルムンガンド」から《シャンゴ》の投下が始まった。
 私たちは周囲のバイオノイドやライカンスロープの掃討を始めていたが、あまりの高熱に一旦離れていた。
 20キロ離れても、結構な熱を感じる。
 タカさんが開発した《シャンゴ》は凄まじい。
 《シャンゴ》のお陰で、一気に《ハイヴ》の最下層まで殲滅できるようになった。

 「ディアブロ、そろそろですね」
 「はい、「ウラール」から何か連絡は来てますか?」
 「いいえ」
 「全体の状況は?」
 「プロトンから順調だと。12カ所の《ハイヴ》はすべて《シャンゴ》投下を終え、最下層の敵の出現待ちです」
 「じゃあ、みんな一緒だね」
 「はい」

 ハーマン少佐は戦場の経験豊富で頼もしい。
 私の副官に就いてくれている。
 
 「ディアブロ! 「ウラール」から《地獄の悪魔》の報告! 来ます!」
 「おう!」
 「一体のみ! お願いします!」
 「はい!」

 私は空中へ上がった。
 最下層から登って来る大きな気配。
 「ウラール」の報告を待つまでもなく、もう強烈なエネルギーを私も感じる。
 ハーマン少佐が第二報を寄越した。

 「「ゲート」出現!」
 「来たね!」

 予想していたことだ
 《ハイヴ》攻略に際し、恐らく混乱を招くために「ゲート」が開かれる。
 12カ所のどれだけにその反撃が来るのかは分からなかったが、予想通りだ。
 
 「規模は!」
 「50メートル級3か所! こちらで対応します!」
 
 数億の妖魔が出て来る規模だ。
 一江さん(プロトン)から「ニーズヘッグ」を出撃させると連絡が来た。
 素早い状況判断で、こちらの要請前に手配してくれた。
 40機のうち2機が向かっている。
 すぐに到着するはずだ。
 私は《地獄の悪魔》を標的とし、「ゲート」の妖魔迎撃を部隊に任せた。



 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「一江! 目標2番に「ゲート」が開くぞ!」
 「やっぱり来たか。亜紀ちゃんのとこだね! 大森、すぐに各《ハイヴ》に「ニーズヘッグ」の発信準備! 他もきっと来るぞ!」
 「分かった! 2機ずつの準備ででいいか?」
 「それでいい。状況によって「マルドゥック」だ!」
 「おう!」

 大森がすぐに「ニーズヘッグ」の手配をした。
 やはり反撃が始まった。
 ここまでは予測している。
 「業」はきっと「ゲート」を使って反撃してくる。
 最近は「ゲート」で空間を覆う戦術もある。
 大量の妖魔を閉鎖空間に放出し、一挙に殲滅する戦術だ。
 その戦術への対処も出来ている。
 亜紀ちゃんたちや石神家のみなさんは、「ゲート」を破壊出来るほどの強力な技を持っている。
 桜大隊と「虎酔会」の方々には無理だが、部長や聖さん、それに斬さんが救出に行ける。
 今の所、反撃に対する対応は完璧だ。
 私などが指揮を執っても、まだ十分にやれている。
 都市部への侵攻も始まった。
 そちらも今の所順調だ。
 指揮所で私と大森は戦況を見守っている。
 要請が来ればすぐに「ニーズヘッグ」を発進出来る。
 思っていた通り、全ての《ハイヴ》で「ゲート」が開いた。
 まだ部隊の要請はない。
 応援要請の連絡はまだか。
 その時、部長が私に言った。

 「一江! 戦っているソルジャーの命は一つだぞ!」
 「はい?」
 「躊躇うな! お前は上手い戦略ではなく、ワガママを言えと言っただろう!」
 「!」

 すぐに悟った。
 部長は「ニーズヘッグ」をまだ飛ばさないことを指摘して来たのだ!
 戦況を見守るなんて私はバカだ!  
 実戦の経験のないド素人のこの私が、何を見守ろうとしていたのか。

 「大森! すぐに「ニーズヘッグ」を発進! 4機ずつだ! 誰も死なせるな!」
 「おう!」

 部長がこっちを見て笑っていた。
 しっかりしろ、一江!
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