富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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戦神舞 Ⅱ

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 ブランたち全員が蓮花を見て辛そうな顔をした。
 お互いに分かっているのだ。
 ミユキたちの望みと蓮花の望みは違う。
 ミユキたちは、俺のために最後まで戦って死にたいのだ。
 そのために自分たちが甦ったと考えているためだ。
 しかし蓮花は一日でも長くミユキたちに生きていて欲しい。
 凄惨な人体改造を施されたミユキたちを何とか救いたいと思って蘇らせた。
 だから少しでも長く生きさせたいのだ。
 蓮花は意識の無いミユキたちを毎日世話していた。
 最期もそうやって自分が世話して見取りたいのだろう。
 お互いにどうしても相容れないことなのだ。
 同時に互いに相手の望みの底にある愛情を知っている。
 そして俺の決意はもう決まっていた。
 ブランたちの望みを叶えてやるのだ。

 全員が起立して俺たちを迎えた。

 「石神様、わざわざのお越し、ありがとうございます」
 
 ミユキが深々と頭を下げて俺に言った。
 他のブランたちも一斉に頭を下げる。

 「分かっている。お前たちに最後の戦場を用意しよう」
 『ありがとうございます!』

 ブランたちが大声で礼を言い。蓮花がうつむいて泣いていた。
 俺は以前から考えていたことをブランたちに向けて話した。
 もう体力の残り少ないブランたちには、遠征ではなく拠点防衛をさせたいと考えていた。

 「敵に偽情報を流して襲撃させるつもりだ」
 「場所はどこですか?」
 「元蓮花研究所だ」

 『おおー!』
 
 全員からため息ともとれる歓声が静かに湧いた。

 「あそこで新兵器の開発が行なわれているという情報を流す。《ニルヴァーナ》を光触媒で無効化するという兵器だ。まだ研究所の建物の多くは残されているので、偽装できるだろう」
 「石神様、素晴らしい名案です!」
 「機材はあらかたアラスカに運んだが、まだ残っている機械などもある。お前たちはそれを防衛しろ。出来るだけ敵を惹き付けてくれ」
 『はい!』

 詳しい説明は蓮花がやるはずだったのだが、蓮花は喋れないでいた。
 仕方なく俺が説明した。

 「偽装の研究施設は本館だ。お前たちで防衛プランを立てろ。デュールゲリエ3000も防衛に回す。数がなくては不自然だからな」

 喜びながらもミユキが言った。
 
 「石神様、戦闘が始まったらデュールゲリエは退避させてください」

 ミユキたちはずっとデュールゲリエたちと一緒にいた。
 だから自分たちの死に場所に、デュールゲリエたちを巻き込みたくはないのだろう。
 
 「分かった。敵に悟られないように上手くやろう」
 「お願いします。何から何まで、ありがとうございます」
 「いいさ、存分にやれ」
 「はい!」
 『はい!』

 ブランたちが一斉に返事をし、俺は敬礼した。
 蓮花は声を押し殺しながら、俺の隣で敬礼をした。
 涙だけが留めようも無く蓮花の頬から滴っていた。

 そしてそれは、ブランたちも同じだった。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 
 
 ブランたちとはアラスカで別れを済ませた。
 彼らの希望だった。
 最期の戦場は自分たちだけで精一杯に戦いたいと。
 俺たちがいると、必ず手助けをしてしまう。
 そういうことを考えていたのだろう。
 盛大な壮行会を開き、みんなで楽しく騒いだ。
 俺も蓮花も、ジェシカも研究員たちやシャドウも、それに亜紀ちゃんたち、かつて共に戦った石神家や斬などが来た。
 フランスから栞たちも来た。
 誰もが涙を堪えてブランたちを送り出した。
 ブランたちは晴れ晴れとした顔で元蓮花研究所へ向かった。

 俺は虎蘭を呼んだ。
 
 「虎蘭、頼みがある」
 「はい、高虎さん」
 「ブランの最期の戦いを見送ってくれないか?」
 「わたくしがですか?」
 「そうだ。石神家の人間がいい。石神家には最期を見送る舞いが在ると、前に虎白さんに聞いた。お前は知っているか?」
 「はい、剣聖になるにあたり、私も覚えました。まあ、全てが決まったものではなく、なんと言いますか、祝詞のようなものでしょうか」
 「そうか。お前に任せる。ブランたちを見送ってくれ」
 
 「はい! このわたくし石神虎蘭、確かに御当主石神高虎様から承りました!」

 虎蘭が胸を叩き、まっすぐに俺を見た。
 自分がどんな役割を与えられたのかが分かっている。
 死に行くブランたちを鼓舞しながら、その最期を見届けるのだ。
 辛い役目だ。
 だが、俺は虎蘭に頼みたかった。
 俺がいてはあいつらも存分に戦えないだろう。
 俺を気にしてはブランたちも困る。
 俺から離れて、自由に戦って欲しかった。
 最後の時間をあいつらだけで過ごして欲しかった。
 だから戦闘が始まるまでは、虎蘭も離れている。
 
 「頼むぞ」
 「はい!」


 

 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 6年振りに元蓮花研究所に着いて、本部建物を見上げた。
 みんな他にも周囲を見回していた。
 口には出さないが、懐かしさに圧し潰されそうなほどだった。
 ここには私たちの全てがある。
 そう、全てなのだ。
 石神様は、本当に最高の戦場をご用意下さった。
 死を彷徨っていた私たちを石神様と蓮花様がお助け下さり、新たな生を頂いてからずっとここで暮らしたのだ。
 私たちの全ての思い出がここにあると言っていい。
 石神様、お優しい蓮花様、ジェシカ様、皇紀様、そして研究員の方々とシャドウさん。
 栞様と士王様、千歌様ともここで一緒に暮らした。
 皇紀様もよく来られ、研究の傍らでわたしたちと一緒に話して下さった。
 斬様もよく私たちを鍛え上げて下さった。
 石神様のお子様たち、それに石神家の方々。
 ここで何度も防衛線を繰り広げ、一緒に戦って下さった方々。
 ああ、ロボさんに助けられた者たちもいる。
 可愛らしいロボさん。
 大勢の方々との大切な思い出……
 充実した日々を過ごし、また共に楽しく過ごしたのだ。
 また重要施設であるこの研究所は何度も激しい襲撃に遭い、私たちも必死に戦った。
 私たちの全てだ。

 石神様が、そんな私たちの最期の戦場をここにしつらえて下さった。
 石神様は最初から最後まで私たちのことを考えて下さった。
 だから、私たちも最後まで石神様のために力を尽くしたい。
 



 蓮花様、申し訳ありません。
 あなたのお傍にいたい私たちでした。
 でももう終わるのです。
 お優しい蓮花様、どうかお元気で。
 私たちは蓮花様のお傍にいられて幸せでした。

 本当に幸せでした。
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