富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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《ニルヴァーナ》との戦い Ⅵ

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 俺はまず、エルフ族の村へ行った。
 これまでの交流で、エルフ族が植生に詳しく、食糧の畑以外にも薬草などを栽培していることを知っていたからだ。
 森に住む虎人族もそれなりに植物には詳しかったが、基本的には食用のものばかりの知識だった。
 しかし、エルフ族は更に植物の研究まで進んでいる。
 俺はそれに期待していた。

 エルフ族は虎人族よりも高い塀を築いており、害獣から村を護ることもやっている。
 虎人族よりも森の深くに住んでいるので、必然的な対策だったのだろう。
 俺は以前に周囲の強い猛獣や魔獣を狩ってやったことで、彼らと仲良くなった。
 俺はエルフ族の人間に、『ヴォイニッチ手稿』の図版を見せた。
 図版は数十部印刷し、各葉を汚れないようにパウチしている。
 それらに驚きながらも熱心に観てくれた。
 エルフたちは図版の多くの植物を知っており、また幾つかは実際に村の中でも育てていた。
 やはりエルフ族は植物に詳しかった。
 栽培場に案内してくれ、俺に説明する。

 「これは薬草として使えます」
 「そうなのか!」

 確かに『ヴォイニッチ手稿』の図版と同じものだった。
 実際に薬を作る過程を見せてもらった。
 単純に煮汁に幾つかの植物を追加するやり方のようだ。
 地球でも長らくそうやって調合してきた。
 『ヴォイニッチ手稿』の植物が薬草であることは、俺も予測していた。
 どういう薬効かは分からないが、そういう価値があることを示していると思った。
 『ヴォイニッチ手稿』には天文学や占星術らしき記述もある。
 人間の女性が描かれている図版もある。
 俺も以前に興味を持って幾つかの『ヴォイニッチ手稿』に関する文献を読んではいたが、あまり役立ちそうなものは無かったと記憶している。
 それにどういうわけで「虎星」の植生と関わっているのかは、さっぱり分からん。
 現在《ロータス》が解読に取り組んでいるので、いずれ分かるかもしれない。
 だが、実際にここに『ヴォイニッチ手稿』に描かれた植物が存在していることが重要だ。
 ならばそれに当たるしかない。
 図版の写真は幾つも用意してきたので、俺はエルフ族の協力的な者たちに配って行った。
 同じく、人族の村にも行き、図版の写真を配って行った。
 人族も幾つかの植物は知っていた。
 今の文明では森に入って食糧を得ることが多いので、見知ったものもあるのだ。
 今日はここまでだ。
 既に採取したものを持ち帰って調べるしかない。




 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 
 あれから僕たちは何度も「虎星」へ行った。
 《ロータス》が『ヴォイニッチ手稿』の80%の解読に成功し、幾つかの植物について、それが成長の変遷であることが分かった。
 《ロータス》による「ヴォイニッチ手稿』の解読で、これはと思われる植物が見つかった。
 太陽のような植物であり、それは「ロドール・パイカ」という名前の植物から生ずるという記述だった。
 その植物「ロドール・パイカ」は幾つかの成長過程があるが、最後に「龍の身体を通す」ことで最終的な万能薬の原料「サン・ロドール」になると記述されていた。
 ドラゴンは初日に観ているが「通す」ってどういうことだろう?
 「ロドール・パイカ」が「万能薬・エリクサー」であり、どのような病気も治すという記述が発見された。

 《来たるべき災厄において、この植物たちが役立つことを記す》
 《これらの植物は遠い場所にあり、神の波動により育ったものである》
 《聖なるカメムシと合わさることによって、災厄を退けるだろう》

 解読の中に、そのような文章があり、みんな驚いた。
 「来たるべき災厄」とは《ニルヴァーナ》のことだろう。
 そして「神の波動」とは、石神さんの「神素」だ。
 「聖なるカメムシ」とあった時は、本当に全てのことがここに記されていたのだと分かって、みんな驚愕した。
 
 「マジかよ」
 「どうして百年以上も前に……」
 「にゃー」

 ロボさんは付き合い。
 《ロータス》の解読により、ついに探すべき植物も特定された。
 20000体のデュールゲリエの調査隊を石神さんが「虎星」に派遣し、僕も同行した。
 「虎星」でその植物を探した。

 「石神さん、「龍の身体を通す」ってとういうことでしょうか?」
 「安心しろ、俺に案がある」
 「そうですか!」

 大々的な調査隊の派遣から、五日目に目指す植物「ロドール・パイカ」が発見された。
 3株だ。 
 
 「おし!」

 石神さんがみんなを連れてドラゴンの棲み処へ向かった。
 すぐに初日に観た白い巨大ドラゴンが来て、石神さんの前で恭しく頭を垂れた。
 他のドラゴンたちも集まるが、石神さんを怖がっているようで遠巻きにしている。
 一体、石神さんとドラゴンたちの間に何があったのだろうか。

 《主様!》
 「おう、すぐにこれを喰え!」
 《はい?》
 「てめぇ! 早くしろ! 急いでんだよ!」
 《は、はい!》

 白い巨大ドラゴンが石神さんの手から「ロドール・パイカ」を口に入れた。

 《これでよろしいですか?》
 「おう! すぐにウンコを出せ!」
 《エェェッ!》
 「急げ!」
 《あの、すぐには無理です! それにみなさんの前では、ちょっと……》
 「つべこべ言うなぁ!」

 石神さんが周囲の地面に「槍雷」を撃ち込んだ。
 膨大な土砂が吹き上がる。

 《も、申し訳ありません! どうか殺さないで!》

 でもすぐには出なかった。
 そりゃそうだろう。
 石神さんはイライラしている。
 どこかから、一本の木の幹をを担いで来た。

 「おい、尻を出せ」
 《はい?》
 「早くしろ!」
 《あの、なにをなさるので?》
 「これでほじくってやる」
 《ゲェ!》
 「尻を向けろ!」
 《御勘弁をぉ!》
 「チェ!」

 それは酷いですよ、石神さん。
 ヒマなので僕たちは虎人族の村へ行って、子どもたちと遊んだ。
 時々ドラゴンの所へ行って石神さんが怒鳴っていた。
 なんで扱いがこんなに違うんだろうか?

 6時間後、ようやく白い巨大ドラゴンが出そうだと言った。

 「まったく、こんなに待たせやがってよ!」
 《申し訳ございません。ではトイレへ行ってまいります》
 「バカヤロウ! ここで出せぇ!」
 《エェ!》
 「俺がお前らの便所なんぞに行くかぁ! ここでやれ!」
 《は、はい!》
 
 他のドラゴンたちがまた集まっている。
 白い巨大ドラゴンが涙を流した。

 「まったく裸でいるくせに、ウンコが恥ずかしいなんてよぉ!」
 「でも泣いてますよ?」
 「ドラゴンはウンコするときに涙を流すんだよ」
 「そうなんですか」
 「ウミガメも産卵で泣くじゃん」
 「いえ、知りませんが」

 絶対違うと思う。

 《わたくし、クイーンですのに……》

 そう言って白い巨大ドラゴンが泣いていた。
 なかなか出ないので石神さんがさっきの木を振り回してドラゴンの尻を叩いた。
 
 「いつまで俺にてめぇの尻の穴を見せるんだぁ!」
 《すみません……でもそんなに見ないで……》

 白い巨大ドラゴンが一層泣いた。

 
 ブリブリブリ……ボトンボトンボトン

 
 大きな塊が幾つも落ちて来た。

 「くっせぇなぁ!」
 《うぅ……》

 石神さんが手に持った幹でウンコを割って行った。

 「おい、あったぞ!」
 「ほんとですね!」

 『ヴォイニッチ手稿』の図版にあった、太陽のような形の植物だった。
 石神さんがラテックスの手袋を嵌め、コンテナトランクに収納していく。
 
 「ウンコもちょっと持ってくか」
 「必要かもしれませんよね!」
 
 僕も手伝った。

 「それにしても、お前、ウンコくっせぇな!」
 《うぅぅぅ……》

 マジ泣きだった。
 他のドラゴンたちが目を逸らしていた。

 「また持って来るからよ! 今度は全員分な!」
 《!》

 みんな一斉にうなだれた。
 何か酷い虐待をしている気がした。
 でも、急いで戻った。
 なんかゴメンナサイ。
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