【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
6 / 276
第一部

6 エレナの住む世界

しおりを挟む
 お母様の言う「あんな事」も気になるけれど、わたしにはもっと気になることがある。

「お父様にご相談があります。療養のためしばらく王立学園アカデミーに通わないように……というのは承知しましたが、勉強についていけなくならないか心配です。家庭教師を雇っていただけませんか」

 お医者様の治療を受けて、この世界に魔法がある事は理解したけど、どうすれば魔法が使えるのかわからない。

 相変わらず、わたしが転生したのはなんの作品なのか、全く思い出せない。
 だけど、ファンタジーもののテンプレだと学校みたいなところや教会みたいなところに行って、適性検査を受けて、魔法の修行をするはず。
 それなのにしばらく王立学園アカデミーを休むなんて、魔法の適性検査とか終わっちゃうんじゃない?
 とりあえず家庭教師とか雇って魔法については自主練したほうがいいと思う。

「家庭教師か……」

 お父様は呟くと、先程と同じように苦笑いをした。

「しばらく王立学園アカデミーも勉強も休んで大丈夫だよ」
「そうよ。エレナは優秀ですから、お休みしてもお勉強に遅れることはないの。むしろお休みしてくれた方が安心だわ」

 子供がもっと勉強したいなんて聞いたら、喜んで賛成してくれると思ったのに……
 お父様もお母様も家庭教師はいらないし、王立学園アカデミーに急いで行く必要もないなんて言って、わたしの意見は軽くあしらわれる。

 え? もしかして、女は勉強する必要ないみたいな世界観?
 そりゃあ女子の憧れ的にはチヤホヤされて守られたいとは思うけど。
 それとこれは別じゃない?

「それは、わたしが女だからでしょうか?」

 お父様とお母様は目を見開く。
 えっと……これは「何当たり前の事言ってるの?」の顔? それとも「何突拍子もない事言ってるの?」の顔?

 わたしが二人の顔を交互に見ながら考えていると、お母様は何かを思いついたのか、ポン! と手を叩き、わたしの顔をしっかりと見た。

王立学園アカデミーも入学したばかりで勉強はしていないでしょうけど、とは言え学ぶ事はありますし、我が家の中でできる事は我が家でいたしましょう! ね。貴方」
「そうだな。確かにこの時期だと淑女として学ぶべき事は沢山あるな。茶会のマナーに社交界のマナー。それにダンスだって……」

 え? 社交界のマナー? ダンス?

「……まっ魔法は? 適性検査は⁉︎」

 そう口走るわたしを見て鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
 今度は確実に「何突拍子もない事言ってるの?」の顔だってわかった。

「えっと、あの、わたしもお医者様みたいに魔法を使えないかと思って……」

 私がしどろもどろにそう言うとお父様が腕を組む。

「そうか。エレナはお医者様の治療を受けて自分にも魔力があれば。と思ったのだね」
「そうね。そんな事ができたら素敵ね」

 お父様とお母様はそう勝手に結論付けて納得している。

 この流れに乗るか……

「えぇ。わたしにも魔力が宿っているか王立学園アカデミーでなら調べられるのでは? と思ったのです」
「確かに王立学園アカデミーは魔力があるような優秀な者を育てる一面もあるからね。……ただ、魔力は特別に与えられし者にしか宿らないものだからなぁ。そういった者たちは産まれた時から魔力があると聞く」

 お父様の口ぶりから察するにわたし……だけじゃなくほとんどの人間には魔力はないって事ね……
 わたしが魔法を使えない事は理解したけど、この世界がどんなファンタジー観なのかはできる限り知っておきたい。
 お医者様の治癒から俄然魔力に興味を持ち始めたフリを続けて、この世界における魔法や魔力の設定に探りを入れる。

 お父様から話を聞いて今のところわかったのは、ごく一部の人間にだけ魔力が宿っているって事。
 残念ながらわたしだけじゃなくて、家族のみんなも、うちの使用人のみんなも魔法を使えない。
 魔法を使える人は本当に珍しいらしい。
 あと、この世界の魔法はいわゆる光魔法と闇魔法の二つに体系が分かれているらしい。
 光魔法が得意な者はお医者様になったり聖職者として教会で治療を行っていて、闇魔法が得意な者は王国の騎士団に勤めて国を守ることを仕事にしている事が多いそうだ。
 ただどちらにしろ魔法が使える人は周りに馴染めないことも多くて、世捨て人のように過ごしている者も少なくないらしい。

 ……これくらいわかれば充分かしら。

「可愛いエレナ。もう質問は終わりでいいかな?」
「はい。ありがとうございますお父様」

 苦笑いしながら、ずっと質問に答えてくれたお父様にとびきりの笑顔で応える。

「それではエレナお嬢様。そろそろシリル殿下がお越しになりますのでご準備いたしましょう。ささ。旦那様も」
「そうだな。エレナに会いに来るだけ。とおっしゃってはいたが、こちらも歓迎の用意をしないわけにはいかないからな」

 メリーに促されてわたしは席を立たされた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...