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第一部
6 エレナの住む世界
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お母様の言う「あんな事」も気になるけれど、わたしにはもっと気になることがある。
「お父様にご相談があります。療養のためしばらく王立学園に通わないように……というのは承知しましたが、勉強についていけなくならないか心配です。家庭教師を雇っていただけませんか」
お医者様の治療を受けて、この世界に魔法がある事は理解したけど、どうすれば魔法が使えるのかわからない。
相変わらず、わたしが転生したのはなんの作品なのか、全く思い出せない。
だけど、ファンタジーもののテンプレだと学校みたいなところや教会みたいなところに行って、適性検査を受けて、魔法の修行をするはず。
それなのにしばらく王立学園を休むなんて、魔法の適性検査とか終わっちゃうんじゃない?
とりあえず家庭教師とか雇って魔法については自主練したほうがいいと思う。
「家庭教師か……」
お父様は呟くと、先程と同じように苦笑いをした。
「しばらく王立学園も勉強も休んで大丈夫だよ」
「そうよ。エレナは優秀ですから、お休みしてもお勉強に遅れることはないの。むしろお休みしてくれた方が安心だわ」
子供がもっと勉強したいなんて聞いたら、喜んで賛成してくれると思ったのに……
お父様もお母様も家庭教師はいらないし、王立学園に急いで行く必要もないなんて言って、わたしの意見は軽くあしらわれる。
え? もしかして、女は勉強する必要ないみたいな世界観?
そりゃあ女子の憧れ的にはチヤホヤされて守られたいとは思うけど。
それとこれは別じゃない?
「それは、わたしが女だからでしょうか?」
お父様とお母様は目を見開く。
えっと……これは「何当たり前の事言ってるの?」の顔? それとも「何突拍子もない事言ってるの?」の顔?
わたしが二人の顔を交互に見ながら考えていると、お母様は何かを思いついたのか、ポン! と手を叩き、わたしの顔をしっかりと見た。
「王立学園も入学したばかりで勉強はしていないでしょうけど、とは言え学ぶ事はありますし、我が家の中でできる事は我が家でいたしましょう! ね。貴方」
「そうだな。確かにこの時期だと淑女として学ぶべき事は沢山あるな。茶会のマナーに社交界のマナー。それにダンスだって……」
え? 社交界のマナー? ダンス?
「……まっ魔法は? 適性検査は⁉︎」
そう口走るわたしを見て鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
今度は確実に「何突拍子もない事言ってるの?」の顔だってわかった。
「えっと、あの、わたしもお医者様みたいに魔法を使えないかと思って……」
私がしどろもどろにそう言うとお父様が腕を組む。
「そうか。エレナはお医者様の治療を受けて自分にも魔力があれば。と思ったのだね」
「そうね。そんな事ができたら素敵ね」
お父様とお母様はそう勝手に結論付けて納得している。
この流れに乗るか……
「えぇ。わたしにも魔力が宿っているか王立学園でなら調べられるのでは? と思ったのです」
「確かに王立学園は魔力があるような優秀な者を育てる一面もあるからね。……ただ、魔力は特別に与えられし者にしか宿らないものだからなぁ。そういった者たちは産まれた時から魔力があると聞く」
お父様の口ぶりから察するにわたし……だけじゃなくほとんどの人間には魔力はないって事ね……
わたしが魔法を使えない事は理解したけど、この世界がどんなファンタジー観なのかはできる限り知っておきたい。
お医者様の治癒から俄然魔力に興味を持ち始めたフリを続けて、この世界における魔法や魔力の設定に探りを入れる。
お父様から話を聞いて今のところわかったのは、ごく一部の人間にだけ魔力が宿っているって事。
残念ながらわたしだけじゃなくて、家族のみんなも、うちの使用人のみんなも魔法を使えない。
魔法を使える人は本当に珍しいらしい。
あと、この世界の魔法はいわゆる光魔法と闇魔法の二つに体系が分かれているらしい。
光魔法が得意な者はお医者様になったり聖職者として教会で治療を行っていて、闇魔法が得意な者は王国の騎士団に勤めて国を守ることを仕事にしている事が多いそうだ。
ただどちらにしろ魔法が使える人は周りに馴染めないことも多くて、世捨て人のように過ごしている者も少なくないらしい。
……これくらいわかれば充分かしら。
「可愛いエレナ。もう質問は終わりでいいかな?」
「はい。ありがとうございますお父様」
苦笑いしながら、ずっと質問に答えてくれたお父様にとびきりの笑顔で応える。
「それではエレナお嬢様。そろそろシリル殿下がお越しになりますのでご準備いたしましょう。ささ。旦那様も」
「そうだな。エレナに会いに来るだけ。とおっしゃってはいたが、こちらも歓迎の用意をしないわけにはいかないからな」
メリーに促されてわたしは席を立たされた。
「お父様にご相談があります。療養のためしばらく王立学園に通わないように……というのは承知しましたが、勉強についていけなくならないか心配です。家庭教師を雇っていただけませんか」
お医者様の治療を受けて、この世界に魔法がある事は理解したけど、どうすれば魔法が使えるのかわからない。
相変わらず、わたしが転生したのはなんの作品なのか、全く思い出せない。
だけど、ファンタジーもののテンプレだと学校みたいなところや教会みたいなところに行って、適性検査を受けて、魔法の修行をするはず。
それなのにしばらく王立学園を休むなんて、魔法の適性検査とか終わっちゃうんじゃない?
とりあえず家庭教師とか雇って魔法については自主練したほうがいいと思う。
「家庭教師か……」
お父様は呟くと、先程と同じように苦笑いをした。
「しばらく王立学園も勉強も休んで大丈夫だよ」
「そうよ。エレナは優秀ですから、お休みしてもお勉強に遅れることはないの。むしろお休みしてくれた方が安心だわ」
子供がもっと勉強したいなんて聞いたら、喜んで賛成してくれると思ったのに……
お父様もお母様も家庭教師はいらないし、王立学園に急いで行く必要もないなんて言って、わたしの意見は軽くあしらわれる。
え? もしかして、女は勉強する必要ないみたいな世界観?
そりゃあ女子の憧れ的にはチヤホヤされて守られたいとは思うけど。
それとこれは別じゃない?
「それは、わたしが女だからでしょうか?」
お父様とお母様は目を見開く。
えっと……これは「何当たり前の事言ってるの?」の顔? それとも「何突拍子もない事言ってるの?」の顔?
わたしが二人の顔を交互に見ながら考えていると、お母様は何かを思いついたのか、ポン! と手を叩き、わたしの顔をしっかりと見た。
「王立学園も入学したばかりで勉強はしていないでしょうけど、とは言え学ぶ事はありますし、我が家の中でできる事は我が家でいたしましょう! ね。貴方」
「そうだな。確かにこの時期だと淑女として学ぶべき事は沢山あるな。茶会のマナーに社交界のマナー。それにダンスだって……」
え? 社交界のマナー? ダンス?
「……まっ魔法は? 適性検査は⁉︎」
そう口走るわたしを見て鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
今度は確実に「何突拍子もない事言ってるの?」の顔だってわかった。
「えっと、あの、わたしもお医者様みたいに魔法を使えないかと思って……」
私がしどろもどろにそう言うとお父様が腕を組む。
「そうか。エレナはお医者様の治療を受けて自分にも魔力があれば。と思ったのだね」
「そうね。そんな事ができたら素敵ね」
お父様とお母様はそう勝手に結論付けて納得している。
この流れに乗るか……
「えぇ。わたしにも魔力が宿っているか王立学園でなら調べられるのでは? と思ったのです」
「確かに王立学園は魔力があるような優秀な者を育てる一面もあるからね。……ただ、魔力は特別に与えられし者にしか宿らないものだからなぁ。そういった者たちは産まれた時から魔力があると聞く」
お父様の口ぶりから察するにわたし……だけじゃなくほとんどの人間には魔力はないって事ね……
わたしが魔法を使えない事は理解したけど、この世界がどんなファンタジー観なのかはできる限り知っておきたい。
お医者様の治癒から俄然魔力に興味を持ち始めたフリを続けて、この世界における魔法や魔力の設定に探りを入れる。
お父様から話を聞いて今のところわかったのは、ごく一部の人間にだけ魔力が宿っているって事。
残念ながらわたしだけじゃなくて、家族のみんなも、うちの使用人のみんなも魔法を使えない。
魔法を使える人は本当に珍しいらしい。
あと、この世界の魔法はいわゆる光魔法と闇魔法の二つに体系が分かれているらしい。
光魔法が得意な者はお医者様になったり聖職者として教会で治療を行っていて、闇魔法が得意な者は王国の騎士団に勤めて国を守ることを仕事にしている事が多いそうだ。
ただどちらにしろ魔法が使える人は周りに馴染めないことも多くて、世捨て人のように過ごしている者も少なくないらしい。
……これくらいわかれば充分かしら。
「可愛いエレナ。もう質問は終わりでいいかな?」
「はい。ありがとうございますお父様」
苦笑いしながら、ずっと質問に答えてくれたお父様にとびきりの笑顔で応える。
「それではエレナお嬢様。そろそろシリル殿下がお越しになりますのでご準備いたしましょう。ささ。旦那様も」
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