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第一部
28 エレナ、殿下に花園へ誘われる
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「シーワード公爵領の事だが……シーワード子爵の不正の裏取りはずいぶん進んだよ。考えていたよりもかなり深刻だった」
「そうでしたか……」
なるほど。シーワード子爵の不正について話すから、人払いをしてあるのか。
殿下の眉間に皺が寄っている。
イケメンの苦々しい表情に、本当に深刻な状況なのが伝わってきた。
「国の許可なくイスファーン王国と養殖真珠の取引を行っている事実を把握した」
えっ? 養殖真珠ってどういうこと?
養殖真珠はまだ研究段階ではないの? もしかして失敗作を横流ししているの? それとも研究の成果が出ているのに失敗しているフリをして黙ってイスファーンに売り捌いているの?
疑問が一気に溢れ出す。
エレナの読んでいた本から得た情報を頭の引き出しから引っ張り出す。
古くから真珠の産地として知られていたボルボラ諸島を、海の向こうにある隣国イスファーン王国と、それこそ何百年と奪い合い、戦いを繰り広げていた。
それをやっと五十年ほど前に和平にこぎつけて、いまは友好な関係を保っている。
いや。友好とは名ばかりの冷戦に近いわけで。
なにかをきっかけに簡単に崩れてしまう脆いものだ。
国に黙って取引を行う事が、どれだけのリスクを負う事になるのか……
「エレナ嬢が、あの時私に、今すべき事をするように。と言ってくれなかったら、手遅れになっていたかもしれない。ありがとう」
「いっいえ。わたしは何もしておりません。さすが殿下です!」
本当に何にもしていない。
転生者なんだからなんかチートスキルがあるに違いない!
どうにかなる!
なんて、浅はかな考えで動き出した自分を恥じたい……
あっ! そうだ!
殿下にあの日のことを謝らなくちゃ。
このままじゃ自分は何もしないくせに騒ぎだけ大きくする迷惑な悪役令嬢だもん。
とにかく悪役令嬢っぽいフラグは全力で叩き折らないと。
「殿下! 申し訳ありません! 自分じゃ何もできないくせに、しゃしゃり出て大騒ぎして、結局面倒なことは全部殿下に押しつけて! それなのにお詫びもしないで今日になってしまいました! 本当に迷惑おかけして申し訳ありません!」
ペコペコと頭を下げてお詫びをすると、キョトンとした殿下と目があった。
きゃぁ! そんな顔するのね!
イケメンのキョトン顔可愛い。
普段感情のない表情ばかりの殿下の、素な表情は貴重だ。心のメモリーに保存する。
「エレナ嬢。そんなに何度も頭を下げて謝るものではないよ。それにそもそも迷惑だなんて思っていない。可愛い婚約者が私に課した試練だからね。なんでも頼っておくれ」
素の表情から一転して、いつも通りの王子様の見本みたいな笑顔でわたしを見つめる。
なんか、まるで用意されたセリフみたい……
上がったテンションが一気に落ちる。
全く思い出せない物語だけど、シナリオはどんどん進んでいるんだろうな。
「殿下。優しいお言葉ありがとうございます。わたしにお手伝いできる事がありましたら、なんでもお申し付けください」
殿下を見つめ返すと目線を外される。またか。
「あ。エレナ嬢。背中に蜘蛛が……」
くも? ……蜘蛛⁈
殿下の言葉に悪寒が走る。
「いやぁぁ!」
嫌っ! 蜘蛛だけは本当にダメ!
小さい頃に蜘蛛の大群を見てから、トラウマなのに、どうしよう。
「捕まえてあげるから落ち着いて。……あ。逃げた」
えっえっ! 逃げ? もしかしてわたしの背中を這ってるの?
……いやぁぁ! ダメ!
咄嗟に殿下の胸に飛び込んでしまった。
あっあっどうしよう。
離れるべき? えっ? えっ?
「暴れないで、ほら深呼吸して」
ますますパニックになったわたしに対して、殿下は深呼吸をする。
私も殿下の呼吸に合わせて、ゆっくりと息を吸い込んだ。
殿下はわたしに触れない様にしながら、そっと手をまわす。
「捕まえたよ」
殿下はそういい両手で蜘蛛を包みスッと立ち上がる。
近くの躑躅に放ち、ランス様を呼ぶ。
「エレナ嬢。私はこの後やらなくてはいけない事がある。ランスに講堂まで送らせよう」
殿下は花を見つめたまま一瞥もくれずにわたしに宣言をする。
わたしは頷くしかできなかった。
「そうでしたか……」
なるほど。シーワード子爵の不正について話すから、人払いをしてあるのか。
殿下の眉間に皺が寄っている。
イケメンの苦々しい表情に、本当に深刻な状況なのが伝わってきた。
「国の許可なくイスファーン王国と養殖真珠の取引を行っている事実を把握した」
えっ? 養殖真珠ってどういうこと?
養殖真珠はまだ研究段階ではないの? もしかして失敗作を横流ししているの? それとも研究の成果が出ているのに失敗しているフリをして黙ってイスファーンに売り捌いているの?
疑問が一気に溢れ出す。
エレナの読んでいた本から得た情報を頭の引き出しから引っ張り出す。
古くから真珠の産地として知られていたボルボラ諸島を、海の向こうにある隣国イスファーン王国と、それこそ何百年と奪い合い、戦いを繰り広げていた。
それをやっと五十年ほど前に和平にこぎつけて、いまは友好な関係を保っている。
いや。友好とは名ばかりの冷戦に近いわけで。
なにかをきっかけに簡単に崩れてしまう脆いものだ。
国に黙って取引を行う事が、どれだけのリスクを負う事になるのか……
「エレナ嬢が、あの時私に、今すべき事をするように。と言ってくれなかったら、手遅れになっていたかもしれない。ありがとう」
「いっいえ。わたしは何もしておりません。さすが殿下です!」
本当に何にもしていない。
転生者なんだからなんかチートスキルがあるに違いない!
どうにかなる!
なんて、浅はかな考えで動き出した自分を恥じたい……
あっ! そうだ!
殿下にあの日のことを謝らなくちゃ。
このままじゃ自分は何もしないくせに騒ぎだけ大きくする迷惑な悪役令嬢だもん。
とにかく悪役令嬢っぽいフラグは全力で叩き折らないと。
「殿下! 申し訳ありません! 自分じゃ何もできないくせに、しゃしゃり出て大騒ぎして、結局面倒なことは全部殿下に押しつけて! それなのにお詫びもしないで今日になってしまいました! 本当に迷惑おかけして申し訳ありません!」
ペコペコと頭を下げてお詫びをすると、キョトンとした殿下と目があった。
きゃぁ! そんな顔するのね!
イケメンのキョトン顔可愛い。
普段感情のない表情ばかりの殿下の、素な表情は貴重だ。心のメモリーに保存する。
「エレナ嬢。そんなに何度も頭を下げて謝るものではないよ。それにそもそも迷惑だなんて思っていない。可愛い婚約者が私に課した試練だからね。なんでも頼っておくれ」
素の表情から一転して、いつも通りの王子様の見本みたいな笑顔でわたしを見つめる。
なんか、まるで用意されたセリフみたい……
上がったテンションが一気に落ちる。
全く思い出せない物語だけど、シナリオはどんどん進んでいるんだろうな。
「殿下。優しいお言葉ありがとうございます。わたしにお手伝いできる事がありましたら、なんでもお申し付けください」
殿下を見つめ返すと目線を外される。またか。
「あ。エレナ嬢。背中に蜘蛛が……」
くも? ……蜘蛛⁈
殿下の言葉に悪寒が走る。
「いやぁぁ!」
嫌っ! 蜘蛛だけは本当にダメ!
小さい頃に蜘蛛の大群を見てから、トラウマなのに、どうしよう。
「捕まえてあげるから落ち着いて。……あ。逃げた」
えっえっ! 逃げ? もしかしてわたしの背中を這ってるの?
……いやぁぁ! ダメ!
咄嗟に殿下の胸に飛び込んでしまった。
あっあっどうしよう。
離れるべき? えっ? えっ?
「暴れないで、ほら深呼吸して」
ますますパニックになったわたしに対して、殿下は深呼吸をする。
私も殿下の呼吸に合わせて、ゆっくりと息を吸い込んだ。
殿下はわたしに触れない様にしながら、そっと手をまわす。
「捕まえたよ」
殿下はそういい両手で蜘蛛を包みスッと立ち上がる。
近くの躑躅に放ち、ランス様を呼ぶ。
「エレナ嬢。私はこの後やらなくてはいけない事がある。ランスに講堂まで送らせよう」
殿下は花を見つめたまま一瞥もくれずにわたしに宣言をする。
わたしは頷くしかできなかった。
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