【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
37 / 276
第一部

37 エレナとツンデレ公爵令嬢と誓いのイヤリング

しおりを挟む
 ここで殿下に臆してはいけない。わたしは気にせずダスティン様の目の前に座る。

「はい。ダスティン様に確認したい事がございます」
「エレナ様が私に確認ですか?」

 今まで関わりの薄かったわたしに、そんな事を言われたダスティン様は、いつもの涼やかな目を見開いて驚かれている。
 注目を浴びながら、コーデリア様のハンカチを開く。

「こちらのイヤリングについて、どういうおつもりなのか伺いたいのです」
「これは……わたしがコーデリア様にお渡ししたものですが、なぜエレナ様がお持ちになられてるのですか?」

 ダスティン様の戸惑う声に、わたしは大袈裟に頭を振って髪を振り乱す。

「コーデリア様からお預かりしたのです。だって……だって……ダスティン様が、コーデリア様に……殿下の瞳と髪色のイヤリングをお贈りになるなんて……」
「え?」
「ダスティン様は、わたしじゃなくて、コーデリア様に殿下の婚約者になって欲しいと、思っていらっしゃるんですか⁈」

 そう言ってわたしは泣いている様に見せるために、手で顔を覆い下を向き、肩を振るわせる。
 やりすぎたかな? と思ったけど、コーデリア様の戯言なんかを真に受けて、殿下カラーのイヤリングをコーデリア様に贈っちゃうダスティン様に、ちょっと意地悪したくなったのは秘密。

「ちょっとダスティンどういう事つもり⁈ エレナよりコーデリア様に殿下の婚約者になって欲しいの? ダスティンがコーデリア様の婚約者なんじゃないの?」
「えっ?」

 さすがエレナを大切に思ってくださっているお兄様。
 お兄様はわたしの隣に慌てて座ると、手を握りダスティン様を責めたてる。

「ダスティン。お前コーデリア嬢が煙たいからってこれは酷いだろ」
「煙たい……?」
「自覚なしかよ。まぁ、自分じゃなくて他の男を近くに感じていろなんて普通の感性じゃ思いつかねぇもんな」
「他の男?」
「いつもコーデリア嬢の騎士気取りしてるのは、お護りはしますが結婚はしたくないって意思表示なのか」

 オーウェン様までダスティン様を責める。

「あの……どうしてそうなるのですか?」

 あれ? ダスティン様が予想以上に困惑されて、オロオロしている。

「……ダスティン様はどういうおつもりで、このイヤリングをコーデリア様に贈られたのですか?」

 おずおずと尋ねてみる。

「市井で、想い人に瞳と髪色のイヤリングを送るのが流行っているのですよね?」

 わたしとお兄様とオーウェン様が頷くのを見て、ダスティン様が安心した顔をする。
 なぜここでほっとしてるの?

「なので、私はお慕いしているコーデリア様の瞳と髪色のイヤリングをお選びしてお贈りしました」

 自信満々に胸を張るダスティン様の顔から、もう一度ハンカチに置かれたイヤリングに視線を戻す。

 青と透明の石……確かに水色の瞳でシルバーブロンドなコーデリア様のカラーだ。

 ダスティン様の真っ直ぐな回答に、お兄様は困った顔をして、オーウェン様は豪快に笑う。
 なぜそんな反応をするのかわからないダスティン様は、顎を触り小首を傾げる。
 そのコーデリア様そっくりな仕草にわたしは身悶えながら、ダスティン様に真実をお伝えする。

「想い人に、自分の瞳と髪色の石がついたイヤリングを、いつも身近におります。と、気持ちを込めてお贈りするのが流行っているんですよ」

 ダスティン様はわたしの説明で、自分の犯した過ちに気がつき、顔が青ざめていくのだった。

「コーデリア様に失礼な事をしてしまった」

 ダスティン様が深く座り込んだソファーでうなだれて、わかりやすく落ち込んでいるのを眺めながらやりすぎてしまった事を反省した。

 だって、さすがにわたしもコーデリア様にコーデリア様カラーのイヤリングをプレゼントするだなんて発想は思いつかなかったんだもの。

 恐るべしだわ。自覚なし溺愛系……
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」  ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。 「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」  いえ! 慕っていません!  このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。  どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。  しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……  *設定は緩いです  

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが

藍生蕗
恋愛
 子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。  しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。  いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。 ※ 本編は4万字くらいのお話です ※ 他のサイトでも公開してます ※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。 ※ ご都合主義 ※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!) ※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。  →同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。

三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。

死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。

乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。 唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。 だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。 プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。 「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」 唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。 ──はずだった。 目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。 逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。

処理中です...