【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
63 / 276
第二部

13 エレナ、シーワード公爵邸に到着する

しおりを挟む
 三日間の馬車旅を終えてシーワード領に辿り着いたわたしは、海を見渡す崖の上にそびえるお城のようなシーワード邸の広大な庭園に、一人で佇んでいた。
 潮騒を聴きながら、心を落ち着かせるために深呼吸する。
 海の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。



 わたしたちの到着を出迎えてくれたコーデリア様から、先にシーワード邸に着いている殿下達が談話室で寛がれていると聞いて、ご挨拶に伺ったのがついさっきなのだけど……

 そこで見たものにショックを受けて、衝動的に部屋を飛び出してしまった。

 わたしが考えるよりも先に身体が動いてしまうのは、エレナ本来の感情の豊かさから来るのだろうけど……
 たまに抑え切れず、動いてしまったり余計な事を口に出してしまったりしてしまう。

 部屋を飛び出す時も、黙って出て行くことが出来なかった。
 それでも、本当は大声で叫びたかったけど、小声で抑えられたのは、エレナなりに我慢できたと褒めてあげたい。

 衝動的なエレナは悪役令嬢の素質がある。
 そんな素質嬉しくない……

 飛び出してたどり着いた庭園でバラとクレマチスが咲き誇るのを見て心を落ち着かせる。

 さすが公爵家の領地の屋敷だわ。

 噴水を中心に花園が広がり、季節ごとに咲く花を計算して配置することで、常に花で目が楽しめるようにしているのがわかる。

 いまエレナがいる蔓棚パーゴラには、蔓バラとクレマチスを這わせて日陰を作っている。
 蔓棚のクレマチスが満開になる前は、クリーム色のモッコウバラが満開だったに違いない。

 もう一度深呼吸して、気持ちを整理して何があったのか冷静に事実を確認する。

 わたしが殿下にご挨拶に伺ったら、談話室のソファで、コーデリア様の妹の隣に座っていた殿下が本を読んで優しい顔で微笑みかけ、頭を撫でてあげていた。
 まるで本当の妹みたいに。

 たったそれだけだ。

 元々コーデリア様が殿下の婚約者候補筆頭だったんだから、妹君を可愛いがっているのはなんの不自然もない。

 もちろん、コーデリア様の妹を可愛いがるほどコーデリア様と親しくされていたのね、なんてことを思ったわけではない。
 お二人がこれっぽっちも親しくされていなかったということは、理解して有り余ってる。

 エレナは殿下に可愛いがられている、コーデリア様の妹に嫉妬した。
 コーデリア様の妹はまだ五歳だ。子供だ。
 なのに、五歳の子供に嫉妬して、胸が詰まり泣いて部屋を飛び出してしまった。

 しかも「シリルお兄ちゃまは、私だけのお兄ちゃまなのに……っ!」なんてしばらく呼んだ事のない、幼少の頃の呼び名まで持ち出して、独占欲丸出しの捨て台詞を吐いて。

 小声だったから殿下に聞こえてないとは思う……
 隣に立っていたお兄様には聞こえていたと思うけど……

 そこでハッと気がつく。

 きっと飛び出したエレナに驚かれた殿下は、お兄様に何があったか聞くに違いない。

 お兄様の事だ。
 考えなしに見たこと聞いた事をそのまま伝える。

「ごめんね。殿下。エレナったらコーデリア様の妹に殿下が本を読んで差し上げてるからってやきもち焼いて『シリルお兄ちゃまは私のお兄ちゃまなのにぃー!』って怒って出てっちゃうなんてさ。全く子供なんだから」

 だめだ。

 絶対言ってる! 他の想像なんて思いつかないくらい絶対に言ってる!
 しかも殿下に謝るふりして、ニヤニヤしながら告げ口してる!

 そんな事言われても殿下は困るだけだわ。
 殿下は子供に優しくしただけだもの。

 ……でも、わかるよエレナ。

 殿下が「自分だけ」を妹のように可愛いがっているっていうのが、エレナの心の拠り所だものね。

 自分以外にも妹のように可愛がってもらえている女の子がいたことはショックだし、婚約してから妹のような可愛がられ方をした記憶がない。

 ……記憶が曖昧なのを差し引いても、本当にまったく記憶にない。

 殿下は本当にエレナの事を今も妹のように可愛いがってくださっているのかしら。

 ……落ち着くために考えれば考えるほど、心にもやもやがたまっていくばかりだった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...