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第二部
18 エレナと隣国の王女様
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お兄様は私に微笑みかけると王女様を見つめ直す。
『近くで拝見したアイラン王女殿下があまりに眩ゆいので、私も妹も言葉を失って目を細めてしまいました。愛想笑いに見えていたら申し訳ありません』
お兄様は流暢なイスファーン語でそう言って王女様に微笑みかけた。
『イスファーンの花と名高いアイラン王女殿下のエスコートができるなんて、本当に光栄です。ね、エレナ』
私はお兄様に調子を合わせて、こくこくと頷く。
『ふん。当たり前よ。光栄に思うといいわ』
王女殿下は悪い気はしないらしく、髪の毛をかきあげる。
お兄様は殿下にまとわりついている王女殿下のもう片方の手をそっと自分の手に取り、優しく握りしめてじっと見つめる。
『いらっしゃるだけで周りを明るくする、まるで向日葵のように天真爛漫な可愛いらしい王女様だと私のイスファーンの知人達が自慢していたので、お会いするのを楽しみにしておりました』
お兄様が目を合わせてにっこり笑うと王女殿下はうっすら赤面している。
もうお兄様のペースだ。
いくらお姫様といえど十四歳の少女だもの。
異国のイケメンから笑顔で褒められたら、ときめかない訳がない。
お兄様はめちゃくちゃモテる。
そりゃ名ばかりとはいえ由緒正しい侯爵家の嫡男だし、イケメンだし、頭だっていいし、ダンスだって上手だし、ヴァイオリンとか弾けちゃうし、別に騎士になるのは諦めたとか言ってるだけで武術だって全く出来ないわけじゃない。
でも、お兄様よりも家柄が良かったり、お金持ちだったり、見目が麗しかったり、賢かったり、強かったりする人はアカデミーに存在する。
例えば、王子様な殿下と三大公爵家のオーウェン様には圧倒的に地位が敵わないし、多分客観的に見た目も敵わない。
にも関わらず、その二人に負けないくらいモテる。
まぁ、殿下はモテるっていうより憧れられてるって感じで手の届かないアイドルみたいなもんだし、オーウェン様はなんというか軽いからね。
遊び人だもんね。それでもいいって言う人達にモテてるだけだし、そう思うとお兄様のモテっぷりはガチだ。
とにかくトップクラスにモテるのは、女性に優しいからだと思う。
女の子がイケメンにされたら嬉しい事を嫌らしくならない程度にサラッとやってのける。
年頃の女の子だけじゃなくて、どんな女性にも優しい。
揺り籠から墓場まで全ての女性に対して、おはようからおやすみまで常に優しくてドロドロに甘い。
『滞在期間の手助けは、是非私共にお任せください。我が国の貴族達もみな王女殿下とご挨拶する機会を求めております。明日からお茶会が続きご不安でしょうが、私とエレナが常にそばに控えておりますのでご安心ください』
お兄様は不安のふの字も感じさせていない王女殿下でも、全力で甘やかす。
目を見て優しく囁き、握っていた手を恭しく持ち上げて手の甲にキスをする。
『いいわ。自分が自由に出来ないお茶会なんて面倒に思っていたけど、そういう事なら参加することにしたわ。貴方たちも、そばにいるのを許可してあげる』
そう王女殿下は満更でもなさそうな顔で答える。
さすがお兄様。
……ってちょっと待って!
もしかして、毎日お茶会に参加しなくてもよかったかもしれないのに、お兄様の調子がいいせいでお茶会に参加しなくちゃいけない羽目になってない?
そうだ。お兄様がモテるのはイケメンで優しくて甘くって……そしてめちゃくちゃ調子がいいからだった。
私がお兄様に文句を言おうとした途端、王女殿下より地味めな民族衣装に身を包んだ若い女性が慌てて走り寄ってきた。
高らかに明日以降のお茶会参加宣言をしている王女殿下の肩を掴む。
『ア、イ、ラ、ン、さ、ま。シリル王太子殿下とご挨拶がお済みになりましたから、部屋に戻りますよ』
『嫌よ! せっかくシリル殿下とお近づきになったのだから一気に距離を縮めないと! それに隣国まで遊びにきたのだから、少しくらい私の好きにさせなさい!』
『遊びではございません。外交でございます』
『そんなことわかってるわ! 言い間違えただけでしょう?』
『内心そう思っているから、口を滑らすのです』
『ネネイはうるさいわ!』
『う、る、さ、い?』
ネネイと呼ばれた若い女性は半目で王女殿下を睨んでいる。
王女殿下の侍女かしら。
侍女にしては、王女殿下に向ける視線が刺すように冷たい。
メリーからこんなに冷たい視線を向けられたことはない。
『シリル王太子殿下、トワイン侯爵令息様、ご令嬢様。アイラン王女殿下はお疲れのご様子ですので、こちらで下がらせて頂きます。明日以降の予定に関しましては外交を担当しております官吏を通じてご相談させていただきます。それでは失礼いたします』
『疲れてなんていないわ! いやよ! まだ部屋に戻りたくないわ!』
侍女らしき女性は私たちに一礼すると、まだ吠えているアイラン王女殿下の腕を掴んで強引に退室してしまった。
『近くで拝見したアイラン王女殿下があまりに眩ゆいので、私も妹も言葉を失って目を細めてしまいました。愛想笑いに見えていたら申し訳ありません』
お兄様は流暢なイスファーン語でそう言って王女様に微笑みかけた。
『イスファーンの花と名高いアイラン王女殿下のエスコートができるなんて、本当に光栄です。ね、エレナ』
私はお兄様に調子を合わせて、こくこくと頷く。
『ふん。当たり前よ。光栄に思うといいわ』
王女殿下は悪い気はしないらしく、髪の毛をかきあげる。
お兄様は殿下にまとわりついている王女殿下のもう片方の手をそっと自分の手に取り、優しく握りしめてじっと見つめる。
『いらっしゃるだけで周りを明るくする、まるで向日葵のように天真爛漫な可愛いらしい王女様だと私のイスファーンの知人達が自慢していたので、お会いするのを楽しみにしておりました』
お兄様が目を合わせてにっこり笑うと王女殿下はうっすら赤面している。
もうお兄様のペースだ。
いくらお姫様といえど十四歳の少女だもの。
異国のイケメンから笑顔で褒められたら、ときめかない訳がない。
お兄様はめちゃくちゃモテる。
そりゃ名ばかりとはいえ由緒正しい侯爵家の嫡男だし、イケメンだし、頭だっていいし、ダンスだって上手だし、ヴァイオリンとか弾けちゃうし、別に騎士になるのは諦めたとか言ってるだけで武術だって全く出来ないわけじゃない。
でも、お兄様よりも家柄が良かったり、お金持ちだったり、見目が麗しかったり、賢かったり、強かったりする人はアカデミーに存在する。
例えば、王子様な殿下と三大公爵家のオーウェン様には圧倒的に地位が敵わないし、多分客観的に見た目も敵わない。
にも関わらず、その二人に負けないくらいモテる。
まぁ、殿下はモテるっていうより憧れられてるって感じで手の届かないアイドルみたいなもんだし、オーウェン様はなんというか軽いからね。
遊び人だもんね。それでもいいって言う人達にモテてるだけだし、そう思うとお兄様のモテっぷりはガチだ。
とにかくトップクラスにモテるのは、女性に優しいからだと思う。
女の子がイケメンにされたら嬉しい事を嫌らしくならない程度にサラッとやってのける。
年頃の女の子だけじゃなくて、どんな女性にも優しい。
揺り籠から墓場まで全ての女性に対して、おはようからおやすみまで常に優しくてドロドロに甘い。
『滞在期間の手助けは、是非私共にお任せください。我が国の貴族達もみな王女殿下とご挨拶する機会を求めております。明日からお茶会が続きご不安でしょうが、私とエレナが常にそばに控えておりますのでご安心ください』
お兄様は不安のふの字も感じさせていない王女殿下でも、全力で甘やかす。
目を見て優しく囁き、握っていた手を恭しく持ち上げて手の甲にキスをする。
『いいわ。自分が自由に出来ないお茶会なんて面倒に思っていたけど、そういう事なら参加することにしたわ。貴方たちも、そばにいるのを許可してあげる』
そう王女殿下は満更でもなさそうな顔で答える。
さすがお兄様。
……ってちょっと待って!
もしかして、毎日お茶会に参加しなくてもよかったかもしれないのに、お兄様の調子がいいせいでお茶会に参加しなくちゃいけない羽目になってない?
そうだ。お兄様がモテるのはイケメンで優しくて甘くって……そしてめちゃくちゃ調子がいいからだった。
私がお兄様に文句を言おうとした途端、王女殿下より地味めな民族衣装に身を包んだ若い女性が慌てて走り寄ってきた。
高らかに明日以降のお茶会参加宣言をしている王女殿下の肩を掴む。
『ア、イ、ラ、ン、さ、ま。シリル王太子殿下とご挨拶がお済みになりましたから、部屋に戻りますよ』
『嫌よ! せっかくシリル殿下とお近づきになったのだから一気に距離を縮めないと! それに隣国まで遊びにきたのだから、少しくらい私の好きにさせなさい!』
『遊びではございません。外交でございます』
『そんなことわかってるわ! 言い間違えただけでしょう?』
『内心そう思っているから、口を滑らすのです』
『ネネイはうるさいわ!』
『う、る、さ、い?』
ネネイと呼ばれた若い女性は半目で王女殿下を睨んでいる。
王女殿下の侍女かしら。
侍女にしては、王女殿下に向ける視線が刺すように冷たい。
メリーからこんなに冷たい視線を向けられたことはない。
『シリル王太子殿下、トワイン侯爵令息様、ご令嬢様。アイラン王女殿下はお疲れのご様子ですので、こちらで下がらせて頂きます。明日以降の予定に関しましては外交を担当しております官吏を通じてご相談させていただきます。それでは失礼いたします』
『疲れてなんていないわ! いやよ! まだ部屋に戻りたくないわ!』
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