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第二部
25 エレナとお兄様のたくらみ
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イスファーンの歓迎式典に参加していた役人だけじゃなく、王宮からも役人達が続々と到着する。
それと同時に役人たちが持参したたくさんの書類に囲まれ始めた殿下を応接間に残して、私たちは用意された客室に向かう。
アイラン様が寄り道をしまくって別荘まで辿り着いたから、祭りまであと数日しかない。
アイラン様を祭りにお誘いしたのはあくまでも羊毛を取引してもらうための口実で、お兄様的にはイスファーンの使者達には祭りが始まる前にさっさと紡績工房やら牧場やらを視察して契約してもらいたいらしい。
明日は早速、紡績工房や牧場の視察が立て込んでいた。
「羊毛の取引は有利に進んでるんだけど、編み機も輸入したいのに、イスファーンの使者達の反応は芳しくないんだよね」
相変わらずノックの返事を聞く前にわたしが過ごす部屋へ平然と入ってきたお兄様は、そう言って肩をすくめる。
「あら、そうなの?」
「なんか、編み機はイスファーンの技術力だと量産できるようなものではないから、今あるものを大切に修理しながら使っていて輸出できるような状況にないとか言ってたよ」
お兄様はアイラン様をちやほやしてるだけだと思ったら、なんだかんだいってイスファーンの使者達にもいろいろと根回しをしていたらしい。
編み機は作れるから存在してるのだろうに、技術の問題で量産できないってどういうことなんだろう。
疑問は感じるけれど、お兄様に聞いたところで、わかるわけがない。
「編み機は欲しかったけど残念ね。まぁ、羊毛の輸出ができるようになったならよかったじゃない」
「ええっ! どうしたの? エレナらしくもない。『わたしのためにどうにかしてでも手に入れて』ってわがまま言わないの?」
大袈裟に驚くお兄様を見返す。
「……わがままは言わないことにしたのです」
わたしが叩き折れるエレナの破滅フラグは出来る限り叩き折りたい。
唇をぎゅと噛む。
「そっか。まぁ、このままいけばエレナが王太子妃になっちゃうもんね。いつまでもわがまま言っちゃいけないって理解してくれてよかったよ」
わたしの気持ちを知らないお兄様は暢気に笑う。
「じゃあ、エレナ。明日はアイラン様を連れて牧場でピクニックするから、その時もわがまま言っちゃダメだよ」
誰よりもわたしを子供扱いするお兄様は、わたしの唇に人差し指をたててウィンクすると、部屋を後にした。
そして、次の日。
王室の持つ別荘から紡績工房も牧場もそれほど遠くない。
晴れ渡る青空に似合わない厳重警戒の馬車が、長閑な田舎道を進む。
外で昼ごはんが食べられるようにと別荘の料理人がバスケットいっぱいにバゲット、豚の煮込み、キッシュにテリーヌ、瓶詰めになった桃の蜜煮と干しあんずを用意してくれた。
お茶も飲めるように小型のポット付き湯沸しまで積んだ馬車が、わたしたちが乗る厳重警戒の馬車の後に続く。
小さい頃から大好きだったピクニックに自然と心が躍る。
今日は堅苦しいデイ・ドレスではない。
普段からよく着ている紺色のワンピースにお気に入りの編み上げブーツ、帽子を被りやすいように低めの位置でまとめられた髪の毛に自分で刺繍を刺した大きなリボン。
エレナらしい格好にひとごこちがつく。
けれど、目の前を見ると穏やかな心は一気に遠のく。
殿下もランス様もピクニックだからと軽装なのに、なぜかお兄様だけ気取った乗馬服を着ている。
殿下以上に王子様然としていて、開いた口が塞がらない。
大国の王子様を引き立て役にしてしまうお兄様は、いったい何をやらかすつもりなんだろう。
お兄様はわたしの冷ややかな視線なんて気にも止めずに、アイラン様に優しい眼差しをむけていた。
どうしても嫌な予感しかしない。
それと同時に役人たちが持参したたくさんの書類に囲まれ始めた殿下を応接間に残して、私たちは用意された客室に向かう。
アイラン様が寄り道をしまくって別荘まで辿り着いたから、祭りまであと数日しかない。
アイラン様を祭りにお誘いしたのはあくまでも羊毛を取引してもらうための口実で、お兄様的にはイスファーンの使者達には祭りが始まる前にさっさと紡績工房やら牧場やらを視察して契約してもらいたいらしい。
明日は早速、紡績工房や牧場の視察が立て込んでいた。
「羊毛の取引は有利に進んでるんだけど、編み機も輸入したいのに、イスファーンの使者達の反応は芳しくないんだよね」
相変わらずノックの返事を聞く前にわたしが過ごす部屋へ平然と入ってきたお兄様は、そう言って肩をすくめる。
「あら、そうなの?」
「なんか、編み機はイスファーンの技術力だと量産できるようなものではないから、今あるものを大切に修理しながら使っていて輸出できるような状況にないとか言ってたよ」
お兄様はアイラン様をちやほやしてるだけだと思ったら、なんだかんだいってイスファーンの使者達にもいろいろと根回しをしていたらしい。
編み機は作れるから存在してるのだろうに、技術の問題で量産できないってどういうことなんだろう。
疑問は感じるけれど、お兄様に聞いたところで、わかるわけがない。
「編み機は欲しかったけど残念ね。まぁ、羊毛の輸出ができるようになったならよかったじゃない」
「ええっ! どうしたの? エレナらしくもない。『わたしのためにどうにかしてでも手に入れて』ってわがまま言わないの?」
大袈裟に驚くお兄様を見返す。
「……わがままは言わないことにしたのです」
わたしが叩き折れるエレナの破滅フラグは出来る限り叩き折りたい。
唇をぎゅと噛む。
「そっか。まぁ、このままいけばエレナが王太子妃になっちゃうもんね。いつまでもわがまま言っちゃいけないって理解してくれてよかったよ」
わたしの気持ちを知らないお兄様は暢気に笑う。
「じゃあ、エレナ。明日はアイラン様を連れて牧場でピクニックするから、その時もわがまま言っちゃダメだよ」
誰よりもわたしを子供扱いするお兄様は、わたしの唇に人差し指をたててウィンクすると、部屋を後にした。
そして、次の日。
王室の持つ別荘から紡績工房も牧場もそれほど遠くない。
晴れ渡る青空に似合わない厳重警戒の馬車が、長閑な田舎道を進む。
外で昼ごはんが食べられるようにと別荘の料理人がバスケットいっぱいにバゲット、豚の煮込み、キッシュにテリーヌ、瓶詰めになった桃の蜜煮と干しあんずを用意してくれた。
お茶も飲めるように小型のポット付き湯沸しまで積んだ馬車が、わたしたちが乗る厳重警戒の馬車の後に続く。
小さい頃から大好きだったピクニックに自然と心が躍る。
今日は堅苦しいデイ・ドレスではない。
普段からよく着ている紺色のワンピースにお気に入りの編み上げブーツ、帽子を被りやすいように低めの位置でまとめられた髪の毛に自分で刺繍を刺した大きなリボン。
エレナらしい格好にひとごこちがつく。
けれど、目の前を見ると穏やかな心は一気に遠のく。
殿下もランス様もピクニックだからと軽装なのに、なぜかお兄様だけ気取った乗馬服を着ている。
殿下以上に王子様然としていて、開いた口が塞がらない。
大国の王子様を引き立て役にしてしまうお兄様は、いったい何をやらかすつもりなんだろう。
お兄様はわたしの冷ややかな視線なんて気にも止めずに、アイラン様に優しい眼差しをむけていた。
どうしても嫌な予感しかしない。
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