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第二部
24 エレナと弟みたいな少年
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わたしたちが別荘の中に入ると、寄り道せずに馬車で先に向かっていたわたしの侍女のメリーに殿下の侍従であはウェード、それに別荘を管理している王室の使用人達が出迎えてくれた。
通された二階の応接スペースで、わたしたちはメリーの入れたお茶を飲む。
その間に、使用人達の手によって客室に荷物が運び込まれる。
別荘の滞在が急に決まったからか、やるべき事と使用人の数が噛み合ってなくてとにかく慌ただしい。
いつもならメリーはわたしたちがお茶を飲み終わるまで控えていてくれるのに、配膳したらすぐに出て行ってしまった。
イスファーンの使者達と王宮の役人達の打ち合わせや、馬車の護衛をしてくれた騎士達がそのまま別荘の警護の配置確認をしたりと大忙しだ。
ランス様は座る暇もなく、あちらこちらから書類をかき集めては殿下に渡し、殿下はお茶を飲みながら渡された書類に目を通しサインをしている。
別荘の使用人達だけじゃ間に合わなさそう。
「本来なら僕が領地にお招きしたから、うちからも使用人をたくさん連れてきたかったんだけど、お祭りの準備で忙しくてさ。それでもメリー以外にも何人か派遣されるはずだから、そろそろ来ると思うんだよね。……あ、我が家の馬車が来た」
お兄様に言われて窓の下を見下ろすと馬車から降りた人物がちょうどこちらを見上げるところだった。
「エリオット様! エレナ様!」
「ノヴァの代わりにユーゴが来てくれたんだね! 嬉しいよ!」
お兄様が窓からそう叫ぶと、満面の笑顔で手を振ってきたのはエレナもよく知っている少年だった。
「エレナ様、また縮みましたか? 益々小さくなってしまわれて……」
「離して! ユーゴ! 苦しいわ! わたしが小さくなったんじゃなくて、ユーゴの身長が大きくなったのよ」
部屋にたどり着くや否や、力任せに抱きしめてくる見慣れていたはずの少年は、近くで見ると記憶よりも随分と大きくなっていた。
「ユーゴ。抱きつくならエレナにじゃなくて僕にじゃないかな?」
「あぁ、エリオット様! お久しぶりです! お会いできなくて寂しかったです! 来年から王都でお仕えしますので、エリオット様もいまは寂しいでしょうが、もう少しだけ我慢なさって下さいね」
ユーゴはそう言ってわたしから離れると、両手を広げたお兄様に抱きついていた。
「あはは。ありがとう。でも来年からユーゴは王立学園にも通うんだからね。僕に仕えてくれるのは嬉しいけど、しっかり勉強もするんだよ」
お兄様がユーゴのくりくりした髪の毛を弄んだり、頬をムニムニと摘む。
イケメンと美少年の戯れに、なんだかモヤッとする。
エレナの一つ下のユーゴは我が家に代々仕えるミルズ男爵家の息子で、わたしたちと兄弟の様に育った。
来年からはお兄様の侍従見習いとして、王宮で働く予定のお兄様の補佐をしながら、王立学園で学ぶことが決まっている。
将来トワイン家の家令になるべく、今は現在の家令でありユーゴの父親であるノヴァ・ミルズ男爵の元で領地の屋敷を取り仕切る補佐をしている。
今回殿下やアイラン様は我が家で領地にご招待したことになっているので、主催者として滞在中は我が家でいろんな管理をしなくてはいけない。
本来であれば家令のノヴァの出番なのだけどお祭りの準備で手が離せない。
そのためユーゴが来たってことなんだろうけど……
「ねぇ、お兄様ユーゴで大丈夫? 殿下に失礼なことしないかしら。心配だわ」
「ノヴァからは領地で頑張ってるって聞いてるよ? それにノヴァが寄越した使用人はベテランばかりだし、この別荘の使用人達だってうちの領地の出身者ばかりだからね。しかも数日のことでしょ? 何の問題も起きやしないって。ユーゴに自信をつけさせるには、いい機会だよ」
そんな、暢気に……
お兄様の発言は何かの事件のフラグにしか聞こえない。
お兄様の後ろで、書類に目を通していたはずの殿下が眉間に皺を寄せてユーゴの事を見ていた。
通された二階の応接スペースで、わたしたちはメリーの入れたお茶を飲む。
その間に、使用人達の手によって客室に荷物が運び込まれる。
別荘の滞在が急に決まったからか、やるべき事と使用人の数が噛み合ってなくてとにかく慌ただしい。
いつもならメリーはわたしたちがお茶を飲み終わるまで控えていてくれるのに、配膳したらすぐに出て行ってしまった。
イスファーンの使者達と王宮の役人達の打ち合わせや、馬車の護衛をしてくれた騎士達がそのまま別荘の警護の配置確認をしたりと大忙しだ。
ランス様は座る暇もなく、あちらこちらから書類をかき集めては殿下に渡し、殿下はお茶を飲みながら渡された書類に目を通しサインをしている。
別荘の使用人達だけじゃ間に合わなさそう。
「本来なら僕が領地にお招きしたから、うちからも使用人をたくさん連れてきたかったんだけど、お祭りの準備で忙しくてさ。それでもメリー以外にも何人か派遣されるはずだから、そろそろ来ると思うんだよね。……あ、我が家の馬車が来た」
お兄様に言われて窓の下を見下ろすと馬車から降りた人物がちょうどこちらを見上げるところだった。
「エリオット様! エレナ様!」
「ノヴァの代わりにユーゴが来てくれたんだね! 嬉しいよ!」
お兄様が窓からそう叫ぶと、満面の笑顔で手を振ってきたのはエレナもよく知っている少年だった。
「エレナ様、また縮みましたか? 益々小さくなってしまわれて……」
「離して! ユーゴ! 苦しいわ! わたしが小さくなったんじゃなくて、ユーゴの身長が大きくなったのよ」
部屋にたどり着くや否や、力任せに抱きしめてくる見慣れていたはずの少年は、近くで見ると記憶よりも随分と大きくなっていた。
「ユーゴ。抱きつくならエレナにじゃなくて僕にじゃないかな?」
「あぁ、エリオット様! お久しぶりです! お会いできなくて寂しかったです! 来年から王都でお仕えしますので、エリオット様もいまは寂しいでしょうが、もう少しだけ我慢なさって下さいね」
ユーゴはそう言ってわたしから離れると、両手を広げたお兄様に抱きついていた。
「あはは。ありがとう。でも来年からユーゴは王立学園にも通うんだからね。僕に仕えてくれるのは嬉しいけど、しっかり勉強もするんだよ」
お兄様がユーゴのくりくりした髪の毛を弄んだり、頬をムニムニと摘む。
イケメンと美少年の戯れに、なんだかモヤッとする。
エレナの一つ下のユーゴは我が家に代々仕えるミルズ男爵家の息子で、わたしたちと兄弟の様に育った。
来年からはお兄様の侍従見習いとして、王宮で働く予定のお兄様の補佐をしながら、王立学園で学ぶことが決まっている。
将来トワイン家の家令になるべく、今は現在の家令でありユーゴの父親であるノヴァ・ミルズ男爵の元で領地の屋敷を取り仕切る補佐をしている。
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本来であれば家令のノヴァの出番なのだけどお祭りの準備で手が離せない。
そのためユーゴが来たってことなんだろうけど……
「ねぇ、お兄様ユーゴで大丈夫? 殿下に失礼なことしないかしら。心配だわ」
「ノヴァからは領地で頑張ってるって聞いてるよ? それにノヴァが寄越した使用人はベテランばかりだし、この別荘の使用人達だってうちの領地の出身者ばかりだからね。しかも数日のことでしょ? 何の問題も起きやしないって。ユーゴに自信をつけさせるには、いい機会だよ」
そんな、暢気に……
お兄様の発言は何かの事件のフラグにしか聞こえない。
お兄様の後ろで、書類に目を通していたはずの殿下が眉間に皺を寄せてユーゴの事を見ていた。
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