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第三部
28 エレナと白馬の王子様の襲来
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殿下の顔は遠くから見ても険しい。本当にお兄様を追いかけてきたのだろう。
わたしは振り返りお兄様を睨む。
「お兄様。殿下に追いかけられるようなことなんて、よっぽどよ。謝ってらしたら」
「殿下が勝手に追いかけてきたのに、何で僕が謝らなくちゃいけないんだ! 僕は悪くない」
明らかに態度がおかしい。
何をしでかしたんだろう。お兄様のせいでエレナが破滅したりしないわよね?
「お兄様が悪くないと言うなら、何があったのか、そろそろ教えてくださってもいいと思うわ」
「……僕の口からはうまく言えないもの」
問い詰めたら黙ってしまった。
わたしはため息をついてお兄様を見つめていると、バタバタと忙しない足音が近づいてくる。
「おおおおっ王太子殿下までいらっしゃるなんて! 僕聞いてないです! どうすればいいんですか?」
ユーゴがノックもせずに扉を開けて部屋に飛び込んできた。
「どうにかって、ユーゴがどうにかしてよ」
お兄様は無責任にユーゴを突き放す。
「ですから、どうにかって、どうすればいいんですか!」
「どうもこうも、前回と同じようにおもてなしをすればいいのよ。前回も殿下はいらしたじゃない」
わたしは、今度はユーゴにむかってため息をつく。
「無理です! だって前回は王室から事前に説明がありましたし、王太子殿下の従者であるウェード様に側近のランス様もいらっしゃって、僕が接する機会は少なかったんですよ! それなのに、王太子殿下は僕の一挙手一投足を睨むように見ていたんです。きっとご自身の右腕になられるエリオット様の従者として相応しいか値踏みされてたに違いないんです! 僕には単身でいらした殿下をおもてなしするなんて絶対に無理です!」
あんだけ騒ぎを起こしたんだから、睨まれるように見られて当然だ。
でも、今は注意をするタイミングじゃない。
「ユーゴなら大丈夫よ。ユーゴは、殿下の右腕のお兄様の、右腕ですもの。つまり殿下の右腕と言っても過言ではないの。絶対にできるわ。ほらお待たせしてるんでしょ。お迎えにいきなさいよ」
わたしは何の根拠もなくユーゴを励ます。
「うっ。ううっ。エレナ様は僕にばかり厳しい。じゃあ、女神様の格好して僕と一緒に王都の礼拝堂に慰問に出かけてくれるって約束してください」
えっ。何その交換条件。嫌なんだけど。
「エレナは女神様の格好して王都の礼拝堂に行きたくないんでしょ。無理しなくていいよ。だから、ユーゴ。殿下なんかおもてなしする必要はない。僕はいま、殿下と話したら、言わなくてもいいこと口走りそうだからお会いできないって言って追い返してきて」
「お兄様。何をおっしゃってるの? さっきまでわたしが嫌がっても女神様の格好させようとしたのはお兄様じゃない。だいたい王室の別荘をお借りしてるくせに、殿下を追い返すなんてできるわけないのよ」
「じゃあ、追い返さなくてもいいから、お会いできないって伝えて」
「そんなこと使用人のユーゴの立場で伝えられるわけないじゃない。ユーゴが可哀想よ」
「ユーゴは僕の右腕だから、僕同然だもの。伝えられるよ」
お兄様は絶対に動こうとしない。わたしは天を仰ぐ。
「いいわ。ユーゴ。わたしが殿下にお会いするからお待ちいただくようにお伝えして」
「エレナが? ダメダメ! エレナが会うくらいなら僕がお会いするよ」
お兄様は慌てふためき、急に立ち上がったかと思うと、わたしの肩を掴む。
えっ? わたしが会ったらダメって何があるの?
「……僕が二人きりでお会いするから、エレナはこの部屋から絶対出ないでね」
真剣な眼差しはうっすらと涙が浮かぶ。
「えっ、ええ。お兄様が向かわれるならわたしは控えますけど……」
フラフラと部屋を出る、悲壮感に溢れたお兄様に心配になる。
『エリオットに何があったの?』
ヴァーデン語がまだ得意ではないアイラン様は、わたしたちの話についていけていなかった。
問題がなさそうな内容に要約して伝える。
『エレナとユーゴ。わたしの命令よ。間諜としてわたしのエリオットが王太子と何の話をしてるのか探りに行ってきなさい』
アイラン様は胸を張りわたしとユーゴに閉じた扇子を向けて、命令する。
ネネイもお兄様のおかしな様子が気になるんだろう。アイラン様を止めてくれない。
偉そうなアイラン様に言い返せないわたしは、しぶしぶユーゴを連れてお兄様の部屋に向かう。
扉に耳を近づけて盗み聞きをすることにした。
わたしは振り返りお兄様を睨む。
「お兄様。殿下に追いかけられるようなことなんて、よっぽどよ。謝ってらしたら」
「殿下が勝手に追いかけてきたのに、何で僕が謝らなくちゃいけないんだ! 僕は悪くない」
明らかに態度がおかしい。
何をしでかしたんだろう。お兄様のせいでエレナが破滅したりしないわよね?
「お兄様が悪くないと言うなら、何があったのか、そろそろ教えてくださってもいいと思うわ」
「……僕の口からはうまく言えないもの」
問い詰めたら黙ってしまった。
わたしはため息をついてお兄様を見つめていると、バタバタと忙しない足音が近づいてくる。
「おおおおっ王太子殿下までいらっしゃるなんて! 僕聞いてないです! どうすればいいんですか?」
ユーゴがノックもせずに扉を開けて部屋に飛び込んできた。
「どうにかって、ユーゴがどうにかしてよ」
お兄様は無責任にユーゴを突き放す。
「ですから、どうにかって、どうすればいいんですか!」
「どうもこうも、前回と同じようにおもてなしをすればいいのよ。前回も殿下はいらしたじゃない」
わたしは、今度はユーゴにむかってため息をつく。
「無理です! だって前回は王室から事前に説明がありましたし、王太子殿下の従者であるウェード様に側近のランス様もいらっしゃって、僕が接する機会は少なかったんですよ! それなのに、王太子殿下は僕の一挙手一投足を睨むように見ていたんです。きっとご自身の右腕になられるエリオット様の従者として相応しいか値踏みされてたに違いないんです! 僕には単身でいらした殿下をおもてなしするなんて絶対に無理です!」
あんだけ騒ぎを起こしたんだから、睨まれるように見られて当然だ。
でも、今は注意をするタイミングじゃない。
「ユーゴなら大丈夫よ。ユーゴは、殿下の右腕のお兄様の、右腕ですもの。つまり殿下の右腕と言っても過言ではないの。絶対にできるわ。ほらお待たせしてるんでしょ。お迎えにいきなさいよ」
わたしは何の根拠もなくユーゴを励ます。
「うっ。ううっ。エレナ様は僕にばかり厳しい。じゃあ、女神様の格好して僕と一緒に王都の礼拝堂に慰問に出かけてくれるって約束してください」
えっ。何その交換条件。嫌なんだけど。
「エレナは女神様の格好して王都の礼拝堂に行きたくないんでしょ。無理しなくていいよ。だから、ユーゴ。殿下なんかおもてなしする必要はない。僕はいま、殿下と話したら、言わなくてもいいこと口走りそうだからお会いできないって言って追い返してきて」
「お兄様。何をおっしゃってるの? さっきまでわたしが嫌がっても女神様の格好させようとしたのはお兄様じゃない。だいたい王室の別荘をお借りしてるくせに、殿下を追い返すなんてできるわけないのよ」
「じゃあ、追い返さなくてもいいから、お会いできないって伝えて」
「そんなこと使用人のユーゴの立場で伝えられるわけないじゃない。ユーゴが可哀想よ」
「ユーゴは僕の右腕だから、僕同然だもの。伝えられるよ」
お兄様は絶対に動こうとしない。わたしは天を仰ぐ。
「いいわ。ユーゴ。わたしが殿下にお会いするからお待ちいただくようにお伝えして」
「エレナが? ダメダメ! エレナが会うくらいなら僕がお会いするよ」
お兄様は慌てふためき、急に立ち上がったかと思うと、わたしの肩を掴む。
えっ? わたしが会ったらダメって何があるの?
「……僕が二人きりでお会いするから、エレナはこの部屋から絶対出ないでね」
真剣な眼差しはうっすらと涙が浮かぶ。
「えっ、ええ。お兄様が向かわれるならわたしは控えますけど……」
フラフラと部屋を出る、悲壮感に溢れたお兄様に心配になる。
『エリオットに何があったの?』
ヴァーデン語がまだ得意ではないアイラン様は、わたしたちの話についていけていなかった。
問題がなさそうな内容に要約して伝える。
『エレナとユーゴ。わたしの命令よ。間諜としてわたしのエリオットが王太子と何の話をしてるのか探りに行ってきなさい』
アイラン様は胸を張りわたしとユーゴに閉じた扇子を向けて、命令する。
ネネイもお兄様のおかしな様子が気になるんだろう。アイラン様を止めてくれない。
偉そうなアイラン様に言い返せないわたしは、しぶしぶユーゴを連れてお兄様の部屋に向かう。
扉に耳を近づけて盗み聞きをすることにした。
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