【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

文字の大きさ
122 / 276
第三部

21 エレナ、ボルボラ諸島での婚約式に参列する

しおりを挟む
「本当に、本当に素敵な婚約式だったのよ! ああ、メリーにもお兄様の晴れ姿を見せたかったわ」
「ええ。ええ。エレナお嬢様がそんなにおっしゃるのですから、とても素敵だったのでしょうね。メリーも拝見したかったものです」

 メリーはわたしの話を嬉しそうに聞きながら、デイ・ドレスのボタンをとめる。

 これから領主館で、お茶会とは名ばかりの盛大な披露宴が開かれる。

 その準備で、屋敷の中は来賓とその使用人達がひっきりなしに出入りしていて騒々しい。

 本当は大勢が参加するお茶会なんて参加したくないけれど、お兄様が主役だから参加しないわけにはいかない。
 諦めたわたしは、お母様と大きな客室に通され、メリーと、それにアイラン様の侍女であるネネイを中心に披露宴に参加する準備を進めていた。

 わたしはメリーに身支度を整えてもらいながら、婚約式について熱弁を振るう。

「お兄様達が書類にサインして、神様に婚約を誓われた時に、楽曲が最高潮の盛り上がりをみせて、わたしは思わず泣きそうになっちゃったわ。ね、お母様もそうでしたでしょう?」
「そうね。エリオットもアイラン様も……二人とも幸せそうにしていたわ」

 お母様は感慨深げにわたしに同意する。

 ぶっちゃけて言えば、お兄様とアイラン様が入場して、神様を前に婚約を誓って、祭司様と来賓に見守られながら貴族院に出す書類にサインしたってだけなんだけど。

 楽団の奏でる音楽が、お兄様やアイラン様、それに祭司様の一つ一つの動きに合わせて鳴り響けば、まるで神様たちが祝福してくださっているかのように思えた。
 入場の時はヴァーデン王国とイスファーン王国それぞれに用意されていた楽曲も、退場の際は二つの楽曲を融和させ、新しい音楽を作り出していた。

 思い出しただけで興奮が蘇る。

「イスファーンが部族を統治するための手法に則ったんですね」

 わたしの興奮とは逆に冷静なネネイはお母様にイスファーン風の髪飾りを付けながら、そう呟いた。

「どういうこと?」

 わたしの質問にネネイが説明をしてくれる。

 多くの部族を一つに統治するイスファーン王国は、慣習の異なる部族を一つにまとめるための手法として、音楽を重要視している。
 万物に神が宿るとされるイスファーン王国の宗教観の中で、多くの部族の長たちは元を辿れば呪術師だった。
 呪術師の子孫である長達は、それぞれの部族に伝わる音楽や舞いを土着の神に通じるための手段として引き継いでいた。
 その、それぞれの部族毎に口述で伝えられた伝統的な呪術師の舞いのリズムを繋ぎ合わせ再構築して発展したのがイスファーン王国の音楽らしい。

「だから、イスファーンの音楽はリズムが一定ではなく複雑なのね」

 わたしの感想にネネイが頷く。

「ですから、イスファーン王国の風習に詳しい者がこの婚約式の成功のため口添えされたのでしょう。奥様が披露宴にイスファーンのアクセサリーをご調達されたように、視覚や聴覚に訴えることでより両国の融和はより堅固なものとなります」

 わたしとお母様も、ヴァーデン王国風のデイ・ドレスにイスファーン王国風のアクセサリーを融和させた装いで披露宴に参加する。
 お母様がネネイにお願いをして用意してもらったヘッドドレスは、イスファーン風ではあるけれど、草花をモチーフにしているからか、なんとなく女神様の王冠に似ている。
 ヴァーデン風の装いにあわせても、思ったより違和感はない。
 わたしとお母様がイスファーン風のアクセサリーを身につけることで、我が家がアイラン様を受け入れる用意があることを視覚でイスファーン王国の来賓に訴える。

「奥様は完成しましたので、次はエレナ様につけていただきますね」

 そう言ってネネイがつけてくれた金と白蝶貝の細工が見事なヘッドドレスは重く感じた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

処理中です...