123 / 276
第三部
22 エレナと異国の王子様
しおりを挟む
真っ青な海に白い雲が浮かぶ青空。
手入れされた緑の芝生と真っ赤なハイビスカスに、白いプルメリアは薫香を放つ。
賑やかな音楽が鳴り響く中、人々の顔は晴れやかだった。
披露宴の会場である領主館の庭を、お父様とお母様の後ろにくっついてまわる。
イスファーン王国の王族と縁続きになる我が家とお近づきになりたい貴族達がひっきりなしに挨拶に来て、わたしは愛想笑いをするだけで疲れてしまった。
どこか休めそうなところはあるかしら。
キョロキョロ周りを見回していると、背中に視線を感じる。
振り返ると湖のような深い青の瞳。
殿下だ。
お兄様とアイラン様と……えっと、アイラン様の兄であるバイラム王子と談笑をしているみたい。
わぁ。絵力つよ。
遠くから眺めて心の中で手を合わせておこう。
「行っておいで」
わたしがお兄様達を見ていることに気がついて、お父様は笑顔で言った。
えっ。遠くで見ているだけで十分なんだけど……
うーん。でも、お父様達と一緒にいて偉いおじさん達に愛想振り撒くのも疲れたしな……
よし。ご挨拶して、お兄様とアイラン様にお祝いを言ったら部屋に下がらせてもらおう。
わたしは、お父様とお母様にご挨拶に行くことを告げて、お兄様達の元に向かった。
***
『おお。愛を司る女神が現れたのか?』
目の前の琥珀色の瞳がとろりと甘く溶ける。
……どういうこと?
いらっしゃる皆様に挨拶をしていたら、いきなりバイラム王子に手を取られ、戸惑いを隠しきれない。
『エレナ。気をつけて。バイラム兄様は美こそ全てなの。綺麗なものはなんでも自分のものにしたいのよ』
『綺麗なもの?』
アイラン様はため息をついて、バイラム王子の手を振り払うとわたしを自分の背中に匿ってくれた。
『エリオットがわたしを迎えに来た時も、エリオットの瞳を大粒のエメラルドのように美しいって言い出して、自分のそばから離さなかったんだから』
お兄様は困ったように笑う。
「イスファーン王国の人たちにしてみると、緑色の瞳が珍しいんだって」
そうなの? 言われてみればヴァーデン王国でも緑色の瞳ってあまり見ない。
お兄様もお父様も、屋敷に飾られている肖像画の数々も緑色の瞳に茶系の髪の毛ばかりだったし。
だいたい、ピンクの髪の毛に赤い瞳なんていうスピカさんがいるから、エレナの瞳の色が珍しいなんて思ってもみなかった。
『エリオットもエレナもいつでも私のハーレムに来てくれて構わないんだぞ』
艶やかな褐色の肌にクセのある髪の毛から覗く蜂蜜みたいな琥珀色の甘い瞳。
人好きする笑顔でも有無を言わせない雰囲気のバイラム王子はいわゆる砂漠の国のシークっぽい。
イスファーン自体は砂漠の国じゃないはずなのに、ハーレムを持ってるなんてゲームに出てできそうな設定が似合いすぎる。
えっ。あれ?
私が転生したのはゲームの世界なの?
イケメン揃いで、ずっとゲームっぽいって思ってたけど、やっぱりゲームの世界よね。
シークっぽいバイラム王子だけじゃない。
まさに正道キラキラ王子様の殿下に、癒し系イケメンのお兄様、それにセクシー担当のオーウェン様に、真面目系肉体派イケメンのダスティン様、クール系のランス様。
そうだ。年上枠だとルーセント少尉もいるし、お父様はじめ、おじさま枠も充実してる。
恋愛シミュレーションゲームだって考えたら、やたらとイケメン揃いなのも納得がいく。
ああ、でもやっぱり作品名はわからない。
わからないけど、エレナは攻略対象の殿下の婚約者で攻略対象のお兄様の妹だ。
明らかに悪役令嬢よね。
じゃあ、ヒロインは誰?
コーデリア様もアイラン様も最初お会いした時はヒロインみたいに思えたけれど、違かった。
……むしろコーデリア様はダスティン様ルートの悪役令嬢で、アイラン様はお兄様ルートとバイラム王子ルートの悪役令嬢なんじゃないかしら。
『バイラム王子殿下。二人は私の側近と……婚約者だ。発言には気をつけていただきたい』
冷たく、感情がこもっていない殿下の声に、いきなり現実に引き戻される。
見上げた殿下の瞳は仄暗い。まるで新月の夜の湖のようだった。
エレナを婚約者だと伝えるのは、感情を押し殺さなくてはいけないほどなの?
やっぱり悪役令嬢だから?
わたしは悪役令嬢の枷から逃げられないのを悟った。
手入れされた緑の芝生と真っ赤なハイビスカスに、白いプルメリアは薫香を放つ。
賑やかな音楽が鳴り響く中、人々の顔は晴れやかだった。
披露宴の会場である領主館の庭を、お父様とお母様の後ろにくっついてまわる。
イスファーン王国の王族と縁続きになる我が家とお近づきになりたい貴族達がひっきりなしに挨拶に来て、わたしは愛想笑いをするだけで疲れてしまった。
どこか休めそうなところはあるかしら。
キョロキョロ周りを見回していると、背中に視線を感じる。
振り返ると湖のような深い青の瞳。
殿下だ。
お兄様とアイラン様と……えっと、アイラン様の兄であるバイラム王子と談笑をしているみたい。
わぁ。絵力つよ。
遠くから眺めて心の中で手を合わせておこう。
「行っておいで」
わたしがお兄様達を見ていることに気がついて、お父様は笑顔で言った。
えっ。遠くで見ているだけで十分なんだけど……
うーん。でも、お父様達と一緒にいて偉いおじさん達に愛想振り撒くのも疲れたしな……
よし。ご挨拶して、お兄様とアイラン様にお祝いを言ったら部屋に下がらせてもらおう。
わたしは、お父様とお母様にご挨拶に行くことを告げて、お兄様達の元に向かった。
***
『おお。愛を司る女神が現れたのか?』
目の前の琥珀色の瞳がとろりと甘く溶ける。
……どういうこと?
いらっしゃる皆様に挨拶をしていたら、いきなりバイラム王子に手を取られ、戸惑いを隠しきれない。
『エレナ。気をつけて。バイラム兄様は美こそ全てなの。綺麗なものはなんでも自分のものにしたいのよ』
『綺麗なもの?』
アイラン様はため息をついて、バイラム王子の手を振り払うとわたしを自分の背中に匿ってくれた。
『エリオットがわたしを迎えに来た時も、エリオットの瞳を大粒のエメラルドのように美しいって言い出して、自分のそばから離さなかったんだから』
お兄様は困ったように笑う。
「イスファーン王国の人たちにしてみると、緑色の瞳が珍しいんだって」
そうなの? 言われてみればヴァーデン王国でも緑色の瞳ってあまり見ない。
お兄様もお父様も、屋敷に飾られている肖像画の数々も緑色の瞳に茶系の髪の毛ばかりだったし。
だいたい、ピンクの髪の毛に赤い瞳なんていうスピカさんがいるから、エレナの瞳の色が珍しいなんて思ってもみなかった。
『エリオットもエレナもいつでも私のハーレムに来てくれて構わないんだぞ』
艶やかな褐色の肌にクセのある髪の毛から覗く蜂蜜みたいな琥珀色の甘い瞳。
人好きする笑顔でも有無を言わせない雰囲気のバイラム王子はいわゆる砂漠の国のシークっぽい。
イスファーン自体は砂漠の国じゃないはずなのに、ハーレムを持ってるなんてゲームに出てできそうな設定が似合いすぎる。
えっ。あれ?
私が転生したのはゲームの世界なの?
イケメン揃いで、ずっとゲームっぽいって思ってたけど、やっぱりゲームの世界よね。
シークっぽいバイラム王子だけじゃない。
まさに正道キラキラ王子様の殿下に、癒し系イケメンのお兄様、それにセクシー担当のオーウェン様に、真面目系肉体派イケメンのダスティン様、クール系のランス様。
そうだ。年上枠だとルーセント少尉もいるし、お父様はじめ、おじさま枠も充実してる。
恋愛シミュレーションゲームだって考えたら、やたらとイケメン揃いなのも納得がいく。
ああ、でもやっぱり作品名はわからない。
わからないけど、エレナは攻略対象の殿下の婚約者で攻略対象のお兄様の妹だ。
明らかに悪役令嬢よね。
じゃあ、ヒロインは誰?
コーデリア様もアイラン様も最初お会いした時はヒロインみたいに思えたけれど、違かった。
……むしろコーデリア様はダスティン様ルートの悪役令嬢で、アイラン様はお兄様ルートとバイラム王子ルートの悪役令嬢なんじゃないかしら。
『バイラム王子殿下。二人は私の側近と……婚約者だ。発言には気をつけていただきたい』
冷たく、感情がこもっていない殿下の声に、いきなり現実に引き戻される。
見上げた殿下の瞳は仄暗い。まるで新月の夜の湖のようだった。
エレナを婚約者だと伝えるのは、感情を押し殺さなくてはいけないほどなの?
やっぱり悪役令嬢だから?
わたしは悪役令嬢の枷から逃げられないのを悟った。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!
風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」
第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。
夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!
彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります!
/「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。
基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ
しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”――
今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。
そして隣国の国王まで参戦!?
史上最大の婿取り争奪戦が始まる。
リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。
理由はただひとつ。
> 「幼すぎて才能がない」
――だが、それは歴史に残る大失策となる。
成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。
灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶……
彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。
その名声を聞きつけ、王家はざわついた。
「セリカに婿を取らせる」
父であるディオール公爵がそう発表した瞬間――
なんと、三人の王子が同時に立候補。
・冷静沈着な第一王子アコード
・誠実温和な第二王子セドリック
・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック
王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、
王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。
しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。
セリカの名声は国境を越え、
ついには隣国の――
国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。
「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?
そんな逸材、逃す手はない!」
国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。
当の本人であるセリカはというと――
「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」
王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。
しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。
これは――
婚約破棄された天才令嬢が、
王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら
自由奔放に世界を変えてしまう物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる