187 / 276
第四部
37 エレナ毒花令嬢のお茶会に誘われる
しおりを挟む
毎日のように孤児院への慰問だなんだとユーゴに引っ張り回されている。さすがに毎日女神様の格好はつらいので普通に貴族のご令嬢の慰問らしい格好にさせてもらう。
子どもたちは女神様の格好をしていなくても懐いてくれたままだ。
慰問以外にも領地で行う新事業に関するあれやこれやがあるからとお兄様にあちこちに駆り出されている。
今まで毎日のように王宮に出仕していたのに、随分と行っていない。
まあ、殿下の悪評高いかりそめの婚約者だと役人たちにバレてしまった手前、もう行きにくいんだけど。
しばらく殿下にもお会いしていない。
殿下は王宮でまた山積みの書類に埋もれているのかしら。
感じが悪い文書係の役人たちは相変わらず仕事をろくにしていないと思うけど、一緒に仕事をしてくれていたリリィさんはじめ女官たちなら、書類を殿下一人に押し付けずにきちんと適切な割り振りを続けてくれているはず。
それなら少しでも殿下の役に立てた気持ちになれる。
ああ、それとも、イスファーン王国との貿易について決める事はもうないし、王宮に籠って仕事はしなくてよくなったのかしら。
いまは王立学園に通われているのかな?
お兄様に尋ねても「僕の考えがあってればそろそろ会えると思うんだよね」とか適当なことを言っていて、殿下が何をしてるのか教えてくれない。
そんななんだか振り回されつつも充実して、でもちょっとだけ空しい日々を過ごしているわたしに一通の手紙が届いた。
殿下付きの秘書官になられたステファン様の婚約者であるネリーネ様からのお誘いだ。
趣味はとんでもなく派手だけど、上質なものをご存知のネリーネ様は常連の服飾店から針子が独立して店を出すのに出資するらしい。
お店のご紹介を兼ねてお茶会でもしませんかとのことだった。
トワイン領の新事業に出資してもらう兼ね合いで、わたしたちはすでに何度もお互いにお茶会と称して招待しあっている。
ネリーネ様から女性実業家の方を紹介していただいたり、わたしがネリーネ様をお誘いする時は、シーワード公爵家のコーデリア様たちや大手商会の若奥様としてメアリさんも招待してご紹介していた。
今日開かれるお茶会は、ネリーネ様の他にコーデリア様やメアリさん、一緒に騎士候補たちの練習を見に行っていたベリンダさんとミンディさんがいらっしゃる。
王立学園に殿下がいらしているのかはコーデリア様たちがご存知なはずだし、仮に王立学園に通われてなかった場合、まだ王宮の出仕を続けているメアリさんが何か情報をご存知かもしれない。
それにネリーネ様にお願いすればステファン様に殿下の情報が手に入るかも。
わたしは邪な思いも持ちつつ、皆さんにお会いするのを楽しみにしていた。
「まあ! ドレスの型から依頼主に合わせて新しいものをデザインするなんて可能なんですの?」
コーデリア様は前のめりになる。
もうすぐダスティン様との結婚を控えているコーデリア様は、挨拶のためパーティーを何度も開くことになっているそうで目新しいドレスは話題作りにもなると興味津々だ。
ミンディさんやメアリさんも結婚後に着るドレスの新調を考えていたとのことで目録片手に盛り上がっている。
「大人っぽいドレスばかりね。わたしにはまだ早そうだわ」
顔を赤らめたベリンダさんは渡された目録を閉じた。
今日見本に持って来てくださった目録はネリーネ様に合わせて描かれたデザイン画だ。
いつもの派手なドレスとは違ってちょっぴり色っぽい感じで大人っぽい。
エレナも童顔だけどベリンダさんもどちらかというと丸顔系で、大人っぽいドレスよりも可愛らしいデザインの方が似合いそう。
「あら、キリアン様にアピールするなら大人っぽいのもいいと思うけれど」
「やっやだもう! メアリさんったら!」
憧れの名前に反応してベリンダさんは声を上げた。バチンッと大きな音が響きメアリさんは背中をさする。
王立学園で一緒にお話ししていた時を思い出して、つい笑ってしまう。
「よかったですわ! エレナ様がお元気そうで!」
なぜか泣きそうな顔のネリーネ様は、そう言ってわたしの手を握った。
子どもたちは女神様の格好をしていなくても懐いてくれたままだ。
慰問以外にも領地で行う新事業に関するあれやこれやがあるからとお兄様にあちこちに駆り出されている。
今まで毎日のように王宮に出仕していたのに、随分と行っていない。
まあ、殿下の悪評高いかりそめの婚約者だと役人たちにバレてしまった手前、もう行きにくいんだけど。
しばらく殿下にもお会いしていない。
殿下は王宮でまた山積みの書類に埋もれているのかしら。
感じが悪い文書係の役人たちは相変わらず仕事をろくにしていないと思うけど、一緒に仕事をしてくれていたリリィさんはじめ女官たちなら、書類を殿下一人に押し付けずにきちんと適切な割り振りを続けてくれているはず。
それなら少しでも殿下の役に立てた気持ちになれる。
ああ、それとも、イスファーン王国との貿易について決める事はもうないし、王宮に籠って仕事はしなくてよくなったのかしら。
いまは王立学園に通われているのかな?
お兄様に尋ねても「僕の考えがあってればそろそろ会えると思うんだよね」とか適当なことを言っていて、殿下が何をしてるのか教えてくれない。
そんななんだか振り回されつつも充実して、でもちょっとだけ空しい日々を過ごしているわたしに一通の手紙が届いた。
殿下付きの秘書官になられたステファン様の婚約者であるネリーネ様からのお誘いだ。
趣味はとんでもなく派手だけど、上質なものをご存知のネリーネ様は常連の服飾店から針子が独立して店を出すのに出資するらしい。
お店のご紹介を兼ねてお茶会でもしませんかとのことだった。
トワイン領の新事業に出資してもらう兼ね合いで、わたしたちはすでに何度もお互いにお茶会と称して招待しあっている。
ネリーネ様から女性実業家の方を紹介していただいたり、わたしがネリーネ様をお誘いする時は、シーワード公爵家のコーデリア様たちや大手商会の若奥様としてメアリさんも招待してご紹介していた。
今日開かれるお茶会は、ネリーネ様の他にコーデリア様やメアリさん、一緒に騎士候補たちの練習を見に行っていたベリンダさんとミンディさんがいらっしゃる。
王立学園に殿下がいらしているのかはコーデリア様たちがご存知なはずだし、仮に王立学園に通われてなかった場合、まだ王宮の出仕を続けているメアリさんが何か情報をご存知かもしれない。
それにネリーネ様にお願いすればステファン様に殿下の情報が手に入るかも。
わたしは邪な思いも持ちつつ、皆さんにお会いするのを楽しみにしていた。
「まあ! ドレスの型から依頼主に合わせて新しいものをデザインするなんて可能なんですの?」
コーデリア様は前のめりになる。
もうすぐダスティン様との結婚を控えているコーデリア様は、挨拶のためパーティーを何度も開くことになっているそうで目新しいドレスは話題作りにもなると興味津々だ。
ミンディさんやメアリさんも結婚後に着るドレスの新調を考えていたとのことで目録片手に盛り上がっている。
「大人っぽいドレスばかりね。わたしにはまだ早そうだわ」
顔を赤らめたベリンダさんは渡された目録を閉じた。
今日見本に持って来てくださった目録はネリーネ様に合わせて描かれたデザイン画だ。
いつもの派手なドレスとは違ってちょっぴり色っぽい感じで大人っぽい。
エレナも童顔だけどベリンダさんもどちらかというと丸顔系で、大人っぽいドレスよりも可愛らしいデザインの方が似合いそう。
「あら、キリアン様にアピールするなら大人っぽいのもいいと思うけれど」
「やっやだもう! メアリさんったら!」
憧れの名前に反応してベリンダさんは声を上げた。バチンッと大きな音が響きメアリさんは背中をさする。
王立学園で一緒にお話ししていた時を思い出して、つい笑ってしまう。
「よかったですわ! エレナ様がお元気そうで!」
なぜか泣きそうな顔のネリーネ様は、そう言ってわたしの手を握った。
47
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw
さこの
恋愛
「喜べリリアン! 第一王子の婚約者候補におまえが挙がったぞ!」
ある日お兄様とサロンでお茶をしていたらお父様が突撃して来た。
「良かったな! お前はフレデリック殿下のことを慕っていただろう?」
いえ! 慕っていません!
このままでは父親と意見の相違があるまま婚約者にされてしまう。
どうしようと考えて出した答えが【悪役令嬢に私はなる!】だった。
しかしリリアンは【悪役令嬢】と言う存在の解釈の仕方が……
*設定は緩いです
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
【完結】初恋相手に失恋したので社交から距離を置いて、慎ましく観察眼を磨いていたのですが
藍生蕗
恋愛
子供の頃、一目惚れした相手から素気無い態度で振られてしまったリエラは、異性に好意を寄せる自信を無くしてしまっていた。
しかし貴族令嬢として十八歳は適齢期。
いつまでも家でくすぶっている妹へと、兄が持ち込んだお見合いに応じる事にした。しかしその相手には既に非公式ながらも恋人がいたようで、リエラは衆目の場で醜聞に巻き込まれてしまう。
※ 本編は4万字くらいのお話です
※ 他のサイトでも公開してます
※ 女性の立場が弱い世界観です。苦手な方はご注意下さい。
※ ご都合主義
※ 性格の悪い腹黒王子が出ます(不快注意!)
※ 6/19 HOTランキング7位! 10位以内初めてなので嬉しいです、ありがとうございます。゚(゚´ω`゚)゚。
→同日2位! 書いてて良かった! ありがとうございます(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。
乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。
唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。
だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。
プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。
「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」
唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。
──はずだった。
目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。
逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる