【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩

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第四部 

40 エレナと毒花令嬢からの贈り物

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 ネリーネ様は侍女を呼び耳打ちする。
 下がった侍女が持って戻ってきたのは、白いブラウスに紺のスカートが切替になったデイ・ドレスだった。
 装飾はあまりついておらず、肩についた大きなリボンがアクセントになって可愛らしい。

「まあ、可愛いらしい! もしかしてこのデイ・ドレスもネリーネ様が出資された服飾店メゾンのものなの?」
「ええ」

 わたしとベリンダさんはうっとりする。
 ネリーネ様のお持ちいただいた目録カタログも素敵だけど、大人っぽすぎたもの。
 可愛らしいデイ・ドレスはさっきまでの重たい空気を少し軽くした。

「このデイ・ドレスはわたくしからエレナ様への贈り物ですわ」
「……わたしにですか?」
「ええ! エレナ様に是非着ていただきたく思ってますの。これを着ればもっと大きな噂が流れるはずですわ! よろしければいま試着していただけないかしら? わたくしの侍女がお召替えさせていただきますわ。今日は新たな店の女主人マダムになる針子も控えておりますのでサイズの直しが必要でしたらすぐお直ししてお渡しできますのよ」

 嬉しそうにキラキラしてるネリーネ様の後ろでネリーネ様の侍女は再びデイ・ドレスを抱え、わたしが立ち上がるのを待っていた。
 何度かお会いしているのでネリーネ様のことはいい人だと思っている。
 きっと新進気鋭の服飾店メゾンのドレスを真っ先に手に入れたりしたら社交界で噂の的になると信じてるんだろう。
 残念ながらそれくらいじゃわたしの悪評も払拭されることはない。

 そんな事を素直に考えて信じちゃうようないい人だとは思ってるけど、でも、ネリーネ様は転生者かもしれない。
 なんならヒロインで、物語の結末を知っているんじゃないかって疑いも晴れていない。
 何かされるとは思ってないけれど油断は禁物だ。
 試着と言いながらネリーネ様の侍女と二人きりにされ何かされるかもしれない。味方がいないのは避けたい。
 今日はメリーとユーゴがついてきてくれているけど、馬車で待機している。
 呼びつけるのは不自然かしら……

「もしよろしければ、わたしもお手伝いさせていただけませんか」

 わたしの不安を感じてくれたのか、メアリさんが手を上げる。
 メアリさんは周りが驚いた顔をするのを見回し「王太子妃殿下の侍女になるべく、現在わたしは王宮に出仕しエレナ様のおそばに置いていただいております」と言い訳を口にする。
 もちろんメアリさんが侍女になる予定はないし、そもそもかりそめの婚約者でしかないわたしが、王太子妃になんてなれるわけがない。
 それでもわたしはメアリさんの狂言に乗るしかない。
 にっこりと優雅に微笑み、同行を依頼した。



 デスティモナ家の豪華な廊下を歩く。
 なんていうか、極彩色で目がチカチカする。調度品もいい品なのはわかるけど、お世辞にも趣味がいいとは言えない。
 ネリーネ様の侍女に通された部屋には使用人とは思えないほどフリルがたっぷりの派手なお仕着せを身にまとったデスティモナ家のメイドたちと肩身が狭そうな針子の女性が待ち構えていた。
 メアリさんの侍女が「開始!」と号令するや否や、メイド達はきゃっきゃしながら、わたしのデイ・ドレスを脱がし始める。
 なんのためらいもなさすぎて怖い。
 そのまま放置されるわけはもちろんなく、今度はさっきお披露目されたデイ・ドレスを着せる。
 ある程度はわたしの体型に合わせて作ってくれているみたいでそのままでも違和感はない。
 針子の女性が近寄り袖や裾の長さを確認し微調整が始まる。さっきまで借りてきた猫みたいだったのに、いまは水を得た魚みたい。
 わたしもメアリさんもデスティモナ家のメイド達と針子の勢いに圧倒される。

「エレナ様のような高貴な方に、ネリーネお嬢様の戯れにお付き合いいただき申し訳ないことにございます」

 デイ・ドレスの調整ということでされるがままに立ち尽くしているわたしに、ネリーネ様の侍女は頭を下げた。

「こちらこそこんな素敵なデイ・ドレスを贈っていただくなんて申し訳ないわ。シンプルに見えましたけど使っている生地はいいものばかりですし、これから服飾店メゾン女主人マダムになる方に自ら縫製いただくなんて……かなりお値段が張るんじゃないかしら」
「いえ、ネリーネ様にとってはこのデイ・ドレスの金額を払うことは瑣末なことにございます」

 そうきっぱり言い切ったネリーネ様の侍女はデイ・ドレスのサイズ調整が終わったのを確認し、メイド達と針子の女性に下がるように指示をする。

「もう少しだけお時間いただいても?」

 ──きた!

 わたしはメアリさんをこの場に残す事を条件に、その願いを受け入れた。
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