14 / 15
すとんと胸に落ちた
しおりを挟む
けど。
「恋じゃないかもしれなかったのに?」
周りへの興味を取り戻したときにたまたま側にいたから錯覚したのかもしれない。
あるいはただ長く一緒にいたことを。
それとも嫌なことからの逃避で。
過去を知らないはずなのにそんなことばかりを思いつく。
それはもしかしなくともあたし自身がそうじゃないかと疑ったせいかもしれない。
「なのに結婚したの?」
「ずいぶんとこだわるね」
困ったような微笑を見て、確かに無茶を言っているなと思う。
気持ちを他人に示すなんて言葉か態度かそういうものになるだろうし。
器用な人ならばそれすら偽れてしまう。
そもそも普段の態度なんてまだまだ知らないことが多いだろうし。
……ゲームで知ったアレが恋をしている状態ではなかったんだろうって事は分かったけど。
たとえばツンデレだったとしたら、優しいとデレた後か、まるでそういう対象でないかのどちらかになってしまう。
そして援助を盾にしたという噂を考えると……いや、そもそもツンデレ自体がたとえだから意味がない考えだけど。
そもそも気持ちを上手く形に出来ないとか、自分でも分からない事があるなんてあたしが一番知っているのに。
もしかしたら愛の言葉が欲しくてこんな事を言ったのかもしけないけど。
いくら慣れてきていようと、いくら転生の可能性か高くても。
今あたしがこの身体を使っているというだけで、過去には別の人格が宿っていたし、未来もこのままだとは限らない。
望んだ言葉が聞けたとしても、それが過去の人格に向かっているのなら、本当に嬉しいと思う?
そして過去の人格は本当に消えていると思う?
少なくともあちこちに影響は残している。
彼のことは好きだけど、好きだと思っているけれど。
影響が絶対なかったと言い切ることはきっと出来ない。
聞きたがっているのは本当にあたしだろうか?
「正直に言うのなら僕は今でもそういう事に疎いから、自信をもって恋情とはとは言いづらい」
今、痛んだのは誰の胸だろう。
「それでも彼女に持っている感情は――」
そう言いながら彼はちらりと絵に視線を向ける。
「作品をある程度完成させればとりあえずは満足してしまうものだと思う」
それからあたしに視線を戻す。
「けれど君には絵に残すより本物と近くでずっと一緒にいたいと思う」
その言葉がすとんと胸に落ちた。
あたしのじゃない。
あたしは徐々に薄くなる意識をつなぎ止めるのに必死になっていた。
「だから――」
身体が彼に覆い被さる勢いで飛びついた。
それを抱き止められた感触は確かにするのに、遠い。
……そんな風にふれ合える関係なんだ。
あたしの知らないあたしのことを身体が話す。
ううん、もうあたしじゃない。
この身体の本来の、仮にあたしが前世だとしても、それでも今を生きている人格が動かしている。
あの言葉がそこまで響くものなのかあたしには分からない。
きっと本来の人格に向けられたものだからだろう。
やっぱりあたしが愛されている訳じゃなかった。
分かっていたのに悲しい。
身体からあふれている涙はあたしの感情だろうか?
それとも本来の人格の流す嬉し涙だろうか?
きっと、後者なのだろう。
溶けかかっているせいか考えがまとまらない。
あたしがいなくった事に少しは気づいてくれるだろうか?
それは望んでいいことなのだろうか?
それはあたしにとっての幸せだろうか?
彼にとって幸せなのだろうか?
彼は今、本当に幸せそうだった。
「恋じゃないかもしれなかったのに?」
周りへの興味を取り戻したときにたまたま側にいたから錯覚したのかもしれない。
あるいはただ長く一緒にいたことを。
それとも嫌なことからの逃避で。
過去を知らないはずなのにそんなことばかりを思いつく。
それはもしかしなくともあたし自身がそうじゃないかと疑ったせいかもしれない。
「なのに結婚したの?」
「ずいぶんとこだわるね」
困ったような微笑を見て、確かに無茶を言っているなと思う。
気持ちを他人に示すなんて言葉か態度かそういうものになるだろうし。
器用な人ならばそれすら偽れてしまう。
そもそも普段の態度なんてまだまだ知らないことが多いだろうし。
……ゲームで知ったアレが恋をしている状態ではなかったんだろうって事は分かったけど。
たとえばツンデレだったとしたら、優しいとデレた後か、まるでそういう対象でないかのどちらかになってしまう。
そして援助を盾にしたという噂を考えると……いや、そもそもツンデレ自体がたとえだから意味がない考えだけど。
そもそも気持ちを上手く形に出来ないとか、自分でも分からない事があるなんてあたしが一番知っているのに。
もしかしたら愛の言葉が欲しくてこんな事を言ったのかもしけないけど。
いくら慣れてきていようと、いくら転生の可能性か高くても。
今あたしがこの身体を使っているというだけで、過去には別の人格が宿っていたし、未来もこのままだとは限らない。
望んだ言葉が聞けたとしても、それが過去の人格に向かっているのなら、本当に嬉しいと思う?
そして過去の人格は本当に消えていると思う?
少なくともあちこちに影響は残している。
彼のことは好きだけど、好きだと思っているけれど。
影響が絶対なかったと言い切ることはきっと出来ない。
聞きたがっているのは本当にあたしだろうか?
「正直に言うのなら僕は今でもそういう事に疎いから、自信をもって恋情とはとは言いづらい」
今、痛んだのは誰の胸だろう。
「それでも彼女に持っている感情は――」
そう言いながら彼はちらりと絵に視線を向ける。
「作品をある程度完成させればとりあえずは満足してしまうものだと思う」
それからあたしに視線を戻す。
「けれど君には絵に残すより本物と近くでずっと一緒にいたいと思う」
その言葉がすとんと胸に落ちた。
あたしのじゃない。
あたしは徐々に薄くなる意識をつなぎ止めるのに必死になっていた。
「だから――」
身体が彼に覆い被さる勢いで飛びついた。
それを抱き止められた感触は確かにするのに、遠い。
……そんな風にふれ合える関係なんだ。
あたしの知らないあたしのことを身体が話す。
ううん、もうあたしじゃない。
この身体の本来の、仮にあたしが前世だとしても、それでも今を生きている人格が動かしている。
あの言葉がそこまで響くものなのかあたしには分からない。
きっと本来の人格に向けられたものだからだろう。
やっぱりあたしが愛されている訳じゃなかった。
分かっていたのに悲しい。
身体からあふれている涙はあたしの感情だろうか?
それとも本来の人格の流す嬉し涙だろうか?
きっと、後者なのだろう。
溶けかかっているせいか考えがまとまらない。
あたしがいなくった事に少しは気づいてくれるだろうか?
それは望んでいいことなのだろうか?
それはあたしにとっての幸せだろうか?
彼にとって幸せなのだろうか?
彼は今、本当に幸せそうだった。
21
あなたにおすすめの小説
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?
白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。
王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。
だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。
順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。
そこから始まる物語である。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました
朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。
夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。
ゆずこしょう
恋愛
女騎士として働いてきて、やっと幼馴染で許嫁のアドルフと結婚する事ができたエルヴィール(18)
しかし半年後。魔物が大量発生し、今度はアドルフに徴集命令が下った。
「俺は魔物討伐なんか行けない…お前の方が昔から強いじゃないか。か、かわりにお前が行ってきてくれ!」
頑張って伸ばした髪を短く切られ、荷物を持たされるとそのまま有無を言わさず家から追い出された。
そして…5年の任期を終えて帰ってきたエルヴィールは…。
悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた
ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。
シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。
そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。
恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。
気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる