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前編
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「アーネ・ナーカヨーシ。貴様との婚約を破棄させてもらうっ」
既にしんみりする時間も終わり、ただただ華やかな学園の卒業パーティーの宴もたけなわ、そう会場の真ん中でわたくしを指さして叫んだのは、わたくしと同じく主役である卒業生の一人、この国の第三王子たるボンクーラ・イーチ・コノクーニ殿下でした。わたくしの周りに決められた婚約者でもあります。
婚約破棄をしたいにしてもそれをここでやらなくとも。エスコートして下さる気もなかったようですし、せめてパーティーの前に済ませるべきでしょう? 相変わらず無粋で目立ちたがりですこと。
「そして私はこのマーイ・ナーカヨーシと新たに婚約を結ぶ」
その殿下に囲われるように手を回されているのはわたくしの一つ下の妹であるマーイです。震えていてとても緊張しているように見えますが、姉であるわたくしには分かります。あれは……。
辺りはさきほどまでの盛り上がりを忘れ、音楽すら止んでいます。
誰かの衣擦れの音すら聞こえそうなほどの静寂の中、息を殺しこちらの動向を見守られているのがわかります。
そんな中、殿下一人が意気揚々と声を張り上げます。
「貴様はマーイが心優しいことをいいことに仕事を押しつけこき使ったそうだな!?」
確かにわたくしは王族に嫁ぐ予定ために既に仕事もあり、他にもいろいろな理由で大変忙しい身ではありますが。
「そのくせ、問題があればそれをマーイのせいにし、自分の非は決して認めなかったそうだな」
失礼ですわ、わたくしがやった分ならばきちんと認めて反省しています。ええ、わたくしの分は。
「さらには私をバカにしてないがしろにしているだろう」
それはしてます、はっきり言って。取り繕うつもりもありません。
「その点マーイはいつも私を気遣って笑顔で接してくれた。よって、どこをどう見てもアーネよりマーイの方が私の婚約者にふさわしい」
殿下、あいにくですがわたくしにはその理論展開が理解出来ません。気遣って笑顔で接すれば婚約ならば赤子には大概婚約者がいることになってしまいますわ。
「どうだ。申し開きを出来るものならやってみろ」
殿下が勝ち誇ったような表情で笑います。確かに言葉は出ませんわね、呆れてですが。
「ならば言いたい事がございます」
そう言ったのはわたくしではございません。
「ま、マーイ?」
横で震えてるだけと思っていたであろう妹が発言したことに殿下が戸惑ってますわね。
「そうか。お前も酷い姉に文句の一つも言いたい事が――」
「姉は殿下が仕事を放置したため穴埋めに忙しかったのであり、わたくしはそれを見かねて問題ない部分を少し手伝ったに過ぎません」
マーイが自分ではなくわたくしの擁護をしたことに殿下は固まっています。
……やっぱり怒ってましたのね。
マーイは確かに優しい子ですが、怒るときは怒ります。それでもまだ最悪までは怒ってませんけれど。
「失敗をマーイのせいにされたのでは……」
「殿下が間違えた部分は報告の義務があるためそうしただけで姉が間違えたわけではないと聞いておりますが?」
間違いやすいところを周りが把握ししておけば訂正が楽になるでしょうからそうなっております。分かりやすく言いつけたわけではございません。ほとんど仕事をやっていないのに間違う余地はあるのですから不思議ですわね。
「マーイ、お前はアーネに騙されているんだ」
「おっしゃったのは叔母様です」
平たく言うと王妃殿下なのですが。お子に恵まれていなかったためかわたくし達をよくかわいがって下さりよほどの公の場でもない限り叔母様と呼んでも許して下さいます。
ちなみに殿下は側妃殿下のお子です。
さすがに王妃殿下が騙しているとはいえず――現状、それでも幾人かいる側妃殿下の子供よりも次代の王太子殿下を優先指名できる王妃殿下の方が立場が強く、仮に事実と反していたとしても、王妃殿下が肯定しているのならそれが殿下にとっても真実としなければ機嫌を損ねると考えているのでしょう――殿下は言葉に詰まりました。
既にしんみりする時間も終わり、ただただ華やかな学園の卒業パーティーの宴もたけなわ、そう会場の真ん中でわたくしを指さして叫んだのは、わたくしと同じく主役である卒業生の一人、この国の第三王子たるボンクーラ・イーチ・コノクーニ殿下でした。わたくしの周りに決められた婚約者でもあります。
婚約破棄をしたいにしてもそれをここでやらなくとも。エスコートして下さる気もなかったようですし、せめてパーティーの前に済ませるべきでしょう? 相変わらず無粋で目立ちたがりですこと。
「そして私はこのマーイ・ナーカヨーシと新たに婚約を結ぶ」
その殿下に囲われるように手を回されているのはわたくしの一つ下の妹であるマーイです。震えていてとても緊張しているように見えますが、姉であるわたくしには分かります。あれは……。
辺りはさきほどまでの盛り上がりを忘れ、音楽すら止んでいます。
誰かの衣擦れの音すら聞こえそうなほどの静寂の中、息を殺しこちらの動向を見守られているのがわかります。
そんな中、殿下一人が意気揚々と声を張り上げます。
「貴様はマーイが心優しいことをいいことに仕事を押しつけこき使ったそうだな!?」
確かにわたくしは王族に嫁ぐ予定ために既に仕事もあり、他にもいろいろな理由で大変忙しい身ではありますが。
「そのくせ、問題があればそれをマーイのせいにし、自分の非は決して認めなかったそうだな」
失礼ですわ、わたくしがやった分ならばきちんと認めて反省しています。ええ、わたくしの分は。
「さらには私をバカにしてないがしろにしているだろう」
それはしてます、はっきり言って。取り繕うつもりもありません。
「その点マーイはいつも私を気遣って笑顔で接してくれた。よって、どこをどう見てもアーネよりマーイの方が私の婚約者にふさわしい」
殿下、あいにくですがわたくしにはその理論展開が理解出来ません。気遣って笑顔で接すれば婚約ならば赤子には大概婚約者がいることになってしまいますわ。
「どうだ。申し開きを出来るものならやってみろ」
殿下が勝ち誇ったような表情で笑います。確かに言葉は出ませんわね、呆れてですが。
「ならば言いたい事がございます」
そう言ったのはわたくしではございません。
「ま、マーイ?」
横で震えてるだけと思っていたであろう妹が発言したことに殿下が戸惑ってますわね。
「そうか。お前も酷い姉に文句の一つも言いたい事が――」
「姉は殿下が仕事を放置したため穴埋めに忙しかったのであり、わたくしはそれを見かねて問題ない部分を少し手伝ったに過ぎません」
マーイが自分ではなくわたくしの擁護をしたことに殿下は固まっています。
……やっぱり怒ってましたのね。
マーイは確かに優しい子ですが、怒るときは怒ります。それでもまだ最悪までは怒ってませんけれど。
「失敗をマーイのせいにされたのでは……」
「殿下が間違えた部分は報告の義務があるためそうしただけで姉が間違えたわけではないと聞いておりますが?」
間違いやすいところを周りが把握ししておけば訂正が楽になるでしょうからそうなっております。分かりやすく言いつけたわけではございません。ほとんど仕事をやっていないのに間違う余地はあるのですから不思議ですわね。
「マーイ、お前はアーネに騙されているんだ」
「おっしゃったのは叔母様です」
平たく言うと王妃殿下なのですが。お子に恵まれていなかったためかわたくし達をよくかわいがって下さりよほどの公の場でもない限り叔母様と呼んでも許して下さいます。
ちなみに殿下は側妃殿下のお子です。
さすがに王妃殿下が騙しているとはいえず――現状、それでも幾人かいる側妃殿下の子供よりも次代の王太子殿下を優先指名できる王妃殿下の方が立場が強く、仮に事実と反していたとしても、王妃殿下が肯定しているのならそれが殿下にとっても真実としなければ機嫌を損ねると考えているのでしょう――殿下は言葉に詰まりました。
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