祝福のキスで若返った英雄に、溺愛されることになった聖女は私です!~イケオジ騎士団長と楽勝救世の旅と思いきや、大変なことになった~

待鳥園子

文字の大きさ
8 / 38

08 内緒にしましょう

しおりを挟む
「聖女様……大丈夫ですか」

 パッと目を覚ました時に、キリッとした表情が印象的な美男……が顔を覗き込むようにしてすぐ傍に居た。

「えっ、わっ、ゆっ、ゆめじゃなかった……だんちょう、すごい……わかがえってる」

 勝手に焦って走り何もない地面でこけて受け止めてくれようとした団長の唇を奪い、そのまま気絶してしまうというとんでもないやらかしをした私は、意識を失う前の自分の行いを思い出して呆然とした。なんてことしたの。

 慌てて口早な片言になってしまった私の言葉を聞いて、困ったように微笑んだので、やっぱりこれは……あのイケオジ団長が若返った姿なのだ。

 若返る前だって際立って容姿が良い人だったけど、こうして若返ってしまうと破壊力がとても凄い。

 物憂げな雰囲気がある美男で、どう形容して良いか迷うくらい格好良い。きらめく金髪の前髪だけ少し長いのも、なんだか私得過ぎて。

「聖女様。身体などには、特に異常はありませんか?」

「ありません……本当にごめんなさい。団長。私とキスしてまさか、こんな風に若返ってしまうなんて……」

 私は手を合わせて謝り、彼は顎に手を当てて頷いた。

「……おそらく、キスをすると若返りをする能力が聖女様に与えられた『祝福』のようですね。しかし、これは誰にも言わない方が良いように思います」

「え? けど、それでは団長は……」

 団長の言葉を不思議に思った私のテントの幕が上げられて、馬鹿王子エセルバードが現れた!
 
 しっ……信じられない。普通なら今は、絶対こいつとエンカウントしないはずなのに。

 うら若き乙女のテントの幕を断りもなく上げるなんて……着替え中だったらどうするつもりなのよ!

「あれ? ジュリアスは、ここには居ないのか? こいつは誰だ……なんだ。ジュリアスにやけに良く似ているが……」

 ずかずかと無遠慮に私のテントに入り眉間に皺を寄せつつ若返った団長をしげしげと見たエセルバードに、私は「どう説明したら良いんだろう」と冷や汗をかきつつ考えていた。

「父は急用で城へと。僕は彼の代理として参りました。ジュリアスの息子です」

 団長がここで堂々と嘘をついたので、私はぽかんとしてしまった。え。だって、私の『聖女の祝福』の能力がこれでようやくわかったのだから、それをエセルバードに伝えれば良いだけなのに……。

「なんだと……俺は聞いてないぞ! あいつは今まで一度も結婚もしていないし、子どもの話だって聞いたことはない。だが……親子と言えるほどに似ているな。そっくりだ」

 そりゃそうだよ! それって若返った本人なんだもん!

 私は心の中でスリッパで頭を叩いてエセルバードにツッコミを入れたくなる衝動と戦っている中で、団長は素知らぬ顔をしてしれっと頷いた。

「母は僕を一人で産み育てました……僕の存在を父が知ったのは、最近のことです」

 形の良い唇からよどみなくすらすらと出てくる嘘に、私の前では素敵で温厚な姿しか見せていない団長の持つ老獪さを感じた。

「ふんっ……人には偉そうな説教をしていた癖に、あいつもただの男だったということか。もう良いっ……いや、待て。そこのお前が、本当にジュリアスの代わりになるのか」

 馬鹿王子も団長が居ないと、この旅が無事には済まないことは理解しているらしい。息子に代わりが出来るのかと確認するように聞いたので、団長は大きく頷いた。

「……僕は父と同等程度の能力は持っています。でなければ、あの人は殿下を残して城へは帰りません」

「それもそうか……それならば、別に良い」

 いきなり現れたエセルバードは勝手なことを言い残し、来た時と同じように唐突に去っていった。

 団長はエセルバードがテントの外に出て彼の荒い足音が聞こえなくなるのを確認してから、何も言えなかった私へと意味ありげに微笑んだ。

「女性のテントへ了承もなしに入ってくるとは……元の姿に戻れば長時間の説教ですね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

【完結】『運命』を『気のせい』と答えたら、婚姻となりまして

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 ヴォレッカ・サミレットは、領地の危機をどうにかするために、三年ぶりに社交界へと婚姻相手を探しにやってきた。  第一にお金、次に人柄、後妻ではなく、できれば清潔感のある人と出会いたい。 そう思っていたのだが──。 「これは、運命だろうか……」 誰もが振り返るほどの美丈夫に、囁かれるという事態に。 「気のせいですね」 自身が平凡だと自覚があり、からかって遊ばれていると思って、そう答えたヴォレッカ。  だが、これがすべての始まりであった。 超絶平凡令嬢と、女性が苦手な美丈夫の織りなす、どこかかみ合わない婚姻ラブストーリー。 全43話+番外編です。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...