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01 招待状
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「次は、何処の夜会へ参加しようかしら……迷うわ」
机の上に何通もに重なっていた招待状を手に取り、まるで扇のようにして広げると、流麗な飾り文字で書かれたエレイン・バーンスワースの宛名を見て、彼女は小さくため息をついた。
だからと言ってエレインは夜会へと出席することを、憂鬱だとか後ろ向きに思っている訳ではない。
若い未婚女性として良き求婚者との出会いを求めているため、どの夜会に出席すべきかを選び切れずに招待状を選ぶ際には常にどうしようと悩んでいた。
噂ではこの夜会には有名な貴公子が出席するらしいと聞いても、噂は噂に過ぎないし、また出席する予定であったとしても本人の気が変わってしまうことはままあった。
(出来たらすべての夜会に参加したいけど、そういう訳にもいかないわ。だって、こんなにたくさんの招待状があっても、私の体はひとつしかないんだもの)
こうして悩めるほどに多数の招待状が届くことに対し、聡明なエレイン・バーンスワース伯爵令嬢は、自分が社交界で人気者だからという訳ではないことを知っていた。
婚約者の居ない若い令嬢たちが多数参加するらしいと聞けば、そういった女性と出会いたい貴公子たちもこぞってやって来る。そうしたら、彼ら狙いで若い令嬢もやって来る。そうした交友関係の好循環が回るのだ。
ただ、夜会の主催者は出席者が多ければ多いだけ、自身の交友関係や権威を主張出来るために、方々へと招待状を送ることになる。
そういった意味で、若くて美しいエレインは夜会の主催者より強く望まれている存在だった。
なんとなく招待状を見つめ、机の側に立ったままエレインが何通かの招待状の差出人を眺めていれば、とある懐かしい名前に気がついた。
「あら? まあ。ユアンだわ……懐かしい名前ね」
差出人の名前の主ユアン・ナバルはバーンスワース伯爵家にとって、格上のナバル侯爵家の嫡男だ。ユアンはエレインの兄カールの友人だった。それはもう、今では過去形の関係なのだが。
(ユアンったら、私に夜会の招待状を送ってくれるなんて! ……喧嘩したお兄様と、ようやく仲直り出来たのかしら? そういえば、彼に会ってなくて……もう、丸三年にもなるんだわ)
エレインは三年前に見た、ユアンの最後の姿を思い出した。カールと貴族学校で親しくなったという彼は、黒髪黒目を持つ姿形の整った美青年だった。
エレインは求婚者と出会うために社交界デビューを済ませてはいるが、兄からは仲違いしたユアンに会うことを厳しく禁じられていた。家の後継者たる長兄に禁じられていれば、バーンズワース家に属する娘エレインに否やは言えない。
(そういえば……なんで、喧嘩していたのかしらね……お兄様も彼と何があったかなんて、私には教えてくれないし)
とにかく、エレインが今も覚えているのは、カールを訪ねて良く家に出入りしていたはずのユアンがピタリと来なくなり、とても寂しいと思ったことだけだ。
(けどこうして、私に招待状を送ってくれているのだもの。もしかしたら、ユアンは私に会いたいと思ってくれているのかもしれない……お互いに、大人になったのだもの。私のことも一人の異性として見てくれるかもしれないわ……)
紳士的な性格だったユアンはエレインのことを可愛がってくれてはいたが、それはあくまで友人の妹としての扱いだった。今成長したエレインに会ったなら彼は、もしかしたら自分を恋愛対象として見てくれるのかもしれない。
そう思ったエレインは、今夜行く夜会を決めた。
「久しぶりにユアンに会えるなんて、とっても嬉しいわ。ナバル家の夜会へ行きましょう。決めたわ」
積み重なる招待状の束からエレインはナバル侯爵家からの招待状を一通取り出し、今夜出席する夜会を決めた。
(早く結婚して、家を出たいわ。お兄様はああしろこうしろとうるさいもの。さっさと婚約者を決めろという癖に、踊った人の名前を言えば、あいつはこういうところが良くないと言い出すし、私は誰とも付き合えもしないじゃない! ……もしかしたら、私は一生結婚出来ないかもしれないもの!)
ユアンは単に名前を知っているだけに過ぎない友人の妹エレインを招待してくれただけかもしれないが、類は友を呼ぶというし彼の良い友人を紹介して貰えるかもしれない。
美男子ユアンの前では必要以上に良い子で居たはずだから印象は良いはずと言い聞かせ、エレインは目一杯のお洒落をするためドレス選びに取り掛かった。
机の上に何通もに重なっていた招待状を手に取り、まるで扇のようにして広げると、流麗な飾り文字で書かれたエレイン・バーンスワースの宛名を見て、彼女は小さくため息をついた。
だからと言ってエレインは夜会へと出席することを、憂鬱だとか後ろ向きに思っている訳ではない。
若い未婚女性として良き求婚者との出会いを求めているため、どの夜会に出席すべきかを選び切れずに招待状を選ぶ際には常にどうしようと悩んでいた。
噂ではこの夜会には有名な貴公子が出席するらしいと聞いても、噂は噂に過ぎないし、また出席する予定であったとしても本人の気が変わってしまうことはままあった。
(出来たらすべての夜会に参加したいけど、そういう訳にもいかないわ。だって、こんなにたくさんの招待状があっても、私の体はひとつしかないんだもの)
こうして悩めるほどに多数の招待状が届くことに対し、聡明なエレイン・バーンスワース伯爵令嬢は、自分が社交界で人気者だからという訳ではないことを知っていた。
婚約者の居ない若い令嬢たちが多数参加するらしいと聞けば、そういった女性と出会いたい貴公子たちもこぞってやって来る。そうしたら、彼ら狙いで若い令嬢もやって来る。そうした交友関係の好循環が回るのだ。
ただ、夜会の主催者は出席者が多ければ多いだけ、自身の交友関係や権威を主張出来るために、方々へと招待状を送ることになる。
そういった意味で、若くて美しいエレインは夜会の主催者より強く望まれている存在だった。
なんとなく招待状を見つめ、机の側に立ったままエレインが何通かの招待状の差出人を眺めていれば、とある懐かしい名前に気がついた。
「あら? まあ。ユアンだわ……懐かしい名前ね」
差出人の名前の主ユアン・ナバルはバーンスワース伯爵家にとって、格上のナバル侯爵家の嫡男だ。ユアンはエレインの兄カールの友人だった。それはもう、今では過去形の関係なのだが。
(ユアンったら、私に夜会の招待状を送ってくれるなんて! ……喧嘩したお兄様と、ようやく仲直り出来たのかしら? そういえば、彼に会ってなくて……もう、丸三年にもなるんだわ)
エレインは三年前に見た、ユアンの最後の姿を思い出した。カールと貴族学校で親しくなったという彼は、黒髪黒目を持つ姿形の整った美青年だった。
エレインは求婚者と出会うために社交界デビューを済ませてはいるが、兄からは仲違いしたユアンに会うことを厳しく禁じられていた。家の後継者たる長兄に禁じられていれば、バーンズワース家に属する娘エレインに否やは言えない。
(そういえば……なんで、喧嘩していたのかしらね……お兄様も彼と何があったかなんて、私には教えてくれないし)
とにかく、エレインが今も覚えているのは、カールを訪ねて良く家に出入りしていたはずのユアンがピタリと来なくなり、とても寂しいと思ったことだけだ。
(けどこうして、私に招待状を送ってくれているのだもの。もしかしたら、ユアンは私に会いたいと思ってくれているのかもしれない……お互いに、大人になったのだもの。私のことも一人の異性として見てくれるかもしれないわ……)
紳士的な性格だったユアンはエレインのことを可愛がってくれてはいたが、それはあくまで友人の妹としての扱いだった。今成長したエレインに会ったなら彼は、もしかしたら自分を恋愛対象として見てくれるのかもしれない。
そう思ったエレインは、今夜行く夜会を決めた。
「久しぶりにユアンに会えるなんて、とっても嬉しいわ。ナバル家の夜会へ行きましょう。決めたわ」
積み重なる招待状の束からエレインはナバル侯爵家からの招待状を一通取り出し、今夜出席する夜会を決めた。
(早く結婚して、家を出たいわ。お兄様はああしろこうしろとうるさいもの。さっさと婚約者を決めろという癖に、踊った人の名前を言えば、あいつはこういうところが良くないと言い出すし、私は誰とも付き合えもしないじゃない! ……もしかしたら、私は一生結婚出来ないかもしれないもの!)
ユアンは単に名前を知っているだけに過ぎない友人の妹エレインを招待してくれただけかもしれないが、類は友を呼ぶというし彼の良い友人を紹介して貰えるかもしれない。
美男子ユアンの前では必要以上に良い子で居たはずだから印象は良いはずと言い聞かせ、エレインは目一杯のお洒落をするためドレス選びに取り掛かった。
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