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04 夢みたい
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「まあ……! そんなこと! ある訳がないわ。もし、ユアンが私の想いに応えてくれたという記憶があったなら、きっとこのナバル邸へすぐさま走って来ていたはずだもの」
エレインはユアンが自分のことをずっと気にかけてくれていたと知り 、本当に嬉しかった。ただ、彼が自分の気持ちを受け入れていてくれたという記憶さえあれば、こんなにも二人はすれ違うこともなかっただろう。
(そうよ……だとしたら、私はもう求婚してくれる相手を探し回らなくても良いのだわ! だって、ユアンがこう言ってくれているのであれば、彼は私と結婚したいと思ってくれているということだもの。嬉しい。きっと、幸せになれるわ)
エレインが社交界デビューしてからというもの、ずっと良き相手を探して彷徨う日々だった。けれど、もうこれからは無理をして合わない相手に社交することもないし、初対面で探り探りで緊張する会話からもこれで解放されるのだ。
「ありがとう。エレイン……僕も好きだ。君を愛している」
「嬉しい。ユアン、私も……愛しているわ」
照れながら彼の言葉をそのまま返せば、ユアンは嬉しそうに微笑んだ。
「実は……ここ三年間夢だったことがあるんだけど、聞いてもらえる?」
「ええ! もちろんよ。言ってみて。ユアン」
エレインが頷いたので、ユアンは後ろで待機していた楽団に軽く指で合図をした。軽やかに流れる音楽は軽いステップを用いるダンスに使う曲だ。練習曲にも良く使われるので、エレインは良く聞いたことがある。
「君と踊りたかったんだ。良い?」
「まあ……いつでもお相手するわ。ユアン」
(ユアンったら……私と踊りたかったなんて! こんなに素敵な人と婚約して結婚出来るなんて、夢みたいだわ)
優雅なダンスの中二人はじっと見つめ合い話すこともなく、お互いの心を示した。そして、大広間で二人しか居ないダンスは終わり、礼をしたところでユアンはエレインの手を取った。
「ねえ……エレイン。僕たちが恋仲になることはあまり、君のお兄さんカールの望むものではないと思うんだ」
「そうね。どうして、あんなにわからずやなのかしら。大丈夫よ! そろそろお父様が帰ってくるはずだし、お父様にお兄様は敵わないから」
エレインの父バーンスワース伯爵は、外交関係の高官であまりこの国には居ない。だから、兄カールがエレインのことには口を出して来るのだ。
(お父様だってユアンが婚約者になるなら、喜んでくれるはずよ。なんたって、彼は未来の侯爵なのだから)
バーンズワース家には兄カールが跡継ぎで居るため、エレインはどこかの家へと必ず嫁がねばならない。だが、政略目的としても上々な相手を見つけ、父はきっと喜んでくれるはずだと、目を輝かせた。
「けど……それまで、君と会えないなんて……嫌だよ」
ユアンは長い前髪の奥にある、黒い目を潤ませた。辛そうにしているのを見て、エレインはどうしたものかと悩んだ。
「そうね。けど、お兄様に見つからなければ、こうして会うことだって出来るから」
「連絡はどうするの? 僕がエレインへ宛てた手紙は、全部処分されてしまうんだろう?」
ユアンが主張する通り、エレインはこれまでユアンからの手紙を見たことがなかった。
「けど、どうすれば良いの? ユアン……」
「君と繋がりたい。エレイン」
直接的な言葉を聞いて、エレインはうろたえて顔を赤くした。
「な! なんですって! ユアン……それは」
「そうなんだ。僕は君の処女が欲しいんだ……今夜、どうしても……エレイン。そうすれば、カールも何も言えない。君は僕に嫁ぐしか道は無くなってしまうから……君が欲しいんだ。エレイン」
ユアンの言い分は貴族令嬢としてエレインが処女を捧げてしまえば、結婚相手は彼しか居なくなると言いたいらしい。
「ユアン……私だって、ユアンと結婚したい。お兄さまに邪魔されるなんて、もう嫌よ。わかったわ。どうすれば良いの?」
エレインは真剣に跪いて愛を乞うようなユアンの言葉を聞いて、心を決めた。
(どうせ結婚するのなら、同じことだわ。ユアンもこんな手段で私を汚したとしても、娶らねばならないことは一緒だもの)
彼だってこれを明かされれば言い訳の利かない過ちとなるのだが、それでもそうしたいのならとエレインは頷いた。
「良かった! エレイン。君ならそう言ってくれると思って、部屋を用意していたんだ」
「え! 待って。ユアンっ……もうっ」
子どものように嬉しそうな表情になったユアンは、エレインの手を取って早足で移動した。先ほどまで大人っぽく色気ある表情だったので、まるで正反対の顔を見せた彼に驚いた。
「ここだよ」
大広間のほど近く、休憩室には広い部屋に通されて、エレインはぽかんとした。部屋には美しい花が飾られて天蓋付きの寝台には豪華な寝具が敷かれ飲み物と果物も用意されていた。
(これって……まるで結婚式の後の、初夜のための部屋みたい……嘘でしょう)
エレインはユアンが自分のことをずっと気にかけてくれていたと知り 、本当に嬉しかった。ただ、彼が自分の気持ちを受け入れていてくれたという記憶さえあれば、こんなにも二人はすれ違うこともなかっただろう。
(そうよ……だとしたら、私はもう求婚してくれる相手を探し回らなくても良いのだわ! だって、ユアンがこう言ってくれているのであれば、彼は私と結婚したいと思ってくれているということだもの。嬉しい。きっと、幸せになれるわ)
エレインが社交界デビューしてからというもの、ずっと良き相手を探して彷徨う日々だった。けれど、もうこれからは無理をして合わない相手に社交することもないし、初対面で探り探りで緊張する会話からもこれで解放されるのだ。
「ありがとう。エレイン……僕も好きだ。君を愛している」
「嬉しい。ユアン、私も……愛しているわ」
照れながら彼の言葉をそのまま返せば、ユアンは嬉しそうに微笑んだ。
「実は……ここ三年間夢だったことがあるんだけど、聞いてもらえる?」
「ええ! もちろんよ。言ってみて。ユアン」
エレインが頷いたので、ユアンは後ろで待機していた楽団に軽く指で合図をした。軽やかに流れる音楽は軽いステップを用いるダンスに使う曲だ。練習曲にも良く使われるので、エレインは良く聞いたことがある。
「君と踊りたかったんだ。良い?」
「まあ……いつでもお相手するわ。ユアン」
(ユアンったら……私と踊りたかったなんて! こんなに素敵な人と婚約して結婚出来るなんて、夢みたいだわ)
優雅なダンスの中二人はじっと見つめ合い話すこともなく、お互いの心を示した。そして、大広間で二人しか居ないダンスは終わり、礼をしたところでユアンはエレインの手を取った。
「ねえ……エレイン。僕たちが恋仲になることはあまり、君のお兄さんカールの望むものではないと思うんだ」
「そうね。どうして、あんなにわからずやなのかしら。大丈夫よ! そろそろお父様が帰ってくるはずだし、お父様にお兄様は敵わないから」
エレインの父バーンスワース伯爵は、外交関係の高官であまりこの国には居ない。だから、兄カールがエレインのことには口を出して来るのだ。
(お父様だってユアンが婚約者になるなら、喜んでくれるはずよ。なんたって、彼は未来の侯爵なのだから)
バーンズワース家には兄カールが跡継ぎで居るため、エレインはどこかの家へと必ず嫁がねばならない。だが、政略目的としても上々な相手を見つけ、父はきっと喜んでくれるはずだと、目を輝かせた。
「けど……それまで、君と会えないなんて……嫌だよ」
ユアンは長い前髪の奥にある、黒い目を潤ませた。辛そうにしているのを見て、エレインはどうしたものかと悩んだ。
「そうね。けど、お兄様に見つからなければ、こうして会うことだって出来るから」
「連絡はどうするの? 僕がエレインへ宛てた手紙は、全部処分されてしまうんだろう?」
ユアンが主張する通り、エレインはこれまでユアンからの手紙を見たことがなかった。
「けど、どうすれば良いの? ユアン……」
「君と繋がりたい。エレイン」
直接的な言葉を聞いて、エレインはうろたえて顔を赤くした。
「な! なんですって! ユアン……それは」
「そうなんだ。僕は君の処女が欲しいんだ……今夜、どうしても……エレイン。そうすれば、カールも何も言えない。君は僕に嫁ぐしか道は無くなってしまうから……君が欲しいんだ。エレイン」
ユアンの言い分は貴族令嬢としてエレインが処女を捧げてしまえば、結婚相手は彼しか居なくなると言いたいらしい。
「ユアン……私だって、ユアンと結婚したい。お兄さまに邪魔されるなんて、もう嫌よ。わかったわ。どうすれば良いの?」
エレインは真剣に跪いて愛を乞うようなユアンの言葉を聞いて、心を決めた。
(どうせ結婚するのなら、同じことだわ。ユアンもこんな手段で私を汚したとしても、娶らねばならないことは一緒だもの)
彼だってこれを明かされれば言い訳の利かない過ちとなるのだが、それでもそうしたいのならとエレインは頷いた。
「良かった! エレイン。君ならそう言ってくれると思って、部屋を用意していたんだ」
「え! 待って。ユアンっ……もうっ」
子どものように嬉しそうな表情になったユアンは、エレインの手を取って早足で移動した。先ほどまで大人っぽく色気ある表情だったので、まるで正反対の顔を見せた彼に驚いた。
「ここだよ」
大広間のほど近く、休憩室には広い部屋に通されて、エレインはぽかんとした。部屋には美しい花が飾られて天蓋付きの寝台には豪華な寝具が敷かれ飲み物と果物も用意されていた。
(これって……まるで結婚式の後の、初夜のための部屋みたい……嘘でしょう)
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