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09 覚悟
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俺がなかなか聖女という特別な存在を諦められなかった王太子のことを毒付くと、魔法使いは苦笑した。
「まあ……聖女なら、身分はなくともありだろうが。だが、邪魔をした王太子も結婚し、お前と何年か前に帰ったはずの聖女が結婚しても、国民だって今は何も言わないだろう。だが、あちらに迎えに行く手立てを知っていて黙っていたなら、俺もお前も罰せられるだろう。見つかるなよ」
「だから、俺も王子が結婚するまで迎えに行くの我慢してたじゃん。その程度の罰なら、いくらでも受けてやるよ。王太子は第一子を迎え、側室を迎える線もなくなった。ようやく、時は来たれり……だ」
「それにしても、五年は長い。彼女の記憶は、なかなか戻らないかもしれない。もしかしたら……もう戻らないかも」
記憶を操作する魔法は、なかなかに繊細なものらしい。だから、消す時にも何度も確認された。
愛する女性が自分のことを忘れても、それでも良いのかと。
「……それでも、良い。ミフユと一緒にいられれば。記憶が戻らなくても、何度だって、上手くいかなくたってやり直すさ。この日を長い間待って、それだけの覚悟は出来た。なくなったなら、もう一回埋めれば良い」
共に苦難続きだった冒険をした彼は、苦笑して手を振った。
一緒に冒険をしていたので、彼こそが俺たち二人をずっと見てくれていた。だから、未来の王に背いてでも、こうして応援してくれたのだ。
「……幸運を祈る」
俺は異世界への転移魔法が発動したことを感じ、彼に手を振り返した。
ミフユ。どんな風に成長してるか、楽しみだなー……とにかく、さっさとこっちへと連れて帰るか。
Fin
「まあ……聖女なら、身分はなくともありだろうが。だが、邪魔をした王太子も結婚し、お前と何年か前に帰ったはずの聖女が結婚しても、国民だって今は何も言わないだろう。だが、あちらに迎えに行く手立てを知っていて黙っていたなら、俺もお前も罰せられるだろう。見つかるなよ」
「だから、俺も王子が結婚するまで迎えに行くの我慢してたじゃん。その程度の罰なら、いくらでも受けてやるよ。王太子は第一子を迎え、側室を迎える線もなくなった。ようやく、時は来たれり……だ」
「それにしても、五年は長い。彼女の記憶は、なかなか戻らないかもしれない。もしかしたら……もう戻らないかも」
記憶を操作する魔法は、なかなかに繊細なものらしい。だから、消す時にも何度も確認された。
愛する女性が自分のことを忘れても、それでも良いのかと。
「……それでも、良い。ミフユと一緒にいられれば。記憶が戻らなくても、何度だって、上手くいかなくたってやり直すさ。この日を長い間待って、それだけの覚悟は出来た。なくなったなら、もう一回埋めれば良い」
共に苦難続きだった冒険をした彼は、苦笑して手を振った。
一緒に冒険をしていたので、彼こそが俺たち二人をずっと見てくれていた。だから、未来の王に背いてでも、こうして応援してくれたのだ。
「……幸運を祈る」
俺は異世界への転移魔法が発動したことを感じ、彼に手を振り返した。
ミフユ。どんな風に成長してるか、楽しみだなー……とにかく、さっさとこっちへと連れて帰るか。
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