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12 朝の衝撃①
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私はその日の朝、自分の姿を念入りにチェックした。
モブ並みには違いないんだけど、モブなりの最高を目指したいというか……薄いけどお化粧もした。
休日用の透明のお粉にうっすらとしたチーク、あとピンク色のリップ。
「澪。遅れるわよ」
お母さんの声で、私ははっと気が付いた。いけない。私はもう遅刻寸前の時間になるまで、鏡の前であれこれしてたみたいだった。
「はーい」
ベッドの上に置いてあった通学バッグを持って返事しながら、ドアを開けて階段を駆け降りる。
「遅い」
私は声にビックリして、門の前に居る人を見た。
真っ黒な長めの髪に鷹羽くんほどではないけれど、高い背、格好良いというより可愛い系の仏頂面。
隣のクラス、例の夕凪さんと同じクラスの虎井くんだ。
上級生を中心に、女の子に人気がある。ぶっきらぼうな態度が、生意気そうなところがたまらないと噂の男子だ。
虎井くんは、サッカー部なんじゃなかったっけ? 朝練は? なんでここに居るの? と、私の頭の中に疑問符がぐるぐる回る。
「は? 寧々からは、何も聞いてない訳? くっそ。騙された」
「あ……寧々ちゃんが言ってたのって……虎井くんだったんだ」
そっか、寧々ちゃんは昨日の通話で、誰かに朝に迎えに行かせるって言ってた。
それが、虎井くんだってことなんだ。
「そう。俺は事情があって、お前と付き合ってるふりしろって言われてきたんだけど、違うの?」
私は言葉を出さずに、ぶんぶんと首を縦に振った。
そうだ、何してたんだろ?
だから朝の準備も気合い入れてしてたはずなのに、その相手がサッカー部の虎井くんだなんて思いもしなかった。
「虎井くんは、大丈夫なの?」
何も言わずに学校に向かって歩き出した虎井くんの後を、私は慌てて追いかけた。
「……何が?」
「私と付き合ってるふりするの、寧々ちゃんに言われたんでしょう?」
「俺は、別に良いけど……そっちの事情だって、一応聞いたし」
事情も、知ってるんだ。長い足でさっさと歩いてしまう虎井くんには、私の足の長さの問題でなかなか追いつけない。
「ごめん」
虎井くんは、急に立ち止まった。それを追いかけていた私は、勢い良くその大きな背中に額をぶつけてしまう。
「……わっ」
「俺。歩くの早い?」
今までが嘘だったように気遣うようにして、私の顔を覗き込んだ。
あまりにも顔が近くすぎて、戸惑ってしまった。顔が近い。近い。近くて、早く離して欲しい。
「う、うん」
虎井くんは、焦っている私の気持ちを知ってか知らずか、おもむろにパッと顔を離した。
モブ並みには違いないんだけど、モブなりの最高を目指したいというか……薄いけどお化粧もした。
休日用の透明のお粉にうっすらとしたチーク、あとピンク色のリップ。
「澪。遅れるわよ」
お母さんの声で、私ははっと気が付いた。いけない。私はもう遅刻寸前の時間になるまで、鏡の前であれこれしてたみたいだった。
「はーい」
ベッドの上に置いてあった通学バッグを持って返事しながら、ドアを開けて階段を駆け降りる。
「遅い」
私は声にビックリして、門の前に居る人を見た。
真っ黒な長めの髪に鷹羽くんほどではないけれど、高い背、格好良いというより可愛い系の仏頂面。
隣のクラス、例の夕凪さんと同じクラスの虎井くんだ。
上級生を中心に、女の子に人気がある。ぶっきらぼうな態度が、生意気そうなところがたまらないと噂の男子だ。
虎井くんは、サッカー部なんじゃなかったっけ? 朝練は? なんでここに居るの? と、私の頭の中に疑問符がぐるぐる回る。
「は? 寧々からは、何も聞いてない訳? くっそ。騙された」
「あ……寧々ちゃんが言ってたのって……虎井くんだったんだ」
そっか、寧々ちゃんは昨日の通話で、誰かに朝に迎えに行かせるって言ってた。
それが、虎井くんだってことなんだ。
「そう。俺は事情があって、お前と付き合ってるふりしろって言われてきたんだけど、違うの?」
私は言葉を出さずに、ぶんぶんと首を縦に振った。
そうだ、何してたんだろ?
だから朝の準備も気合い入れてしてたはずなのに、その相手がサッカー部の虎井くんだなんて思いもしなかった。
「虎井くんは、大丈夫なの?」
何も言わずに学校に向かって歩き出した虎井くんの後を、私は慌てて追いかけた。
「……何が?」
「私と付き合ってるふりするの、寧々ちゃんに言われたんでしょう?」
「俺は、別に良いけど……そっちの事情だって、一応聞いたし」
事情も、知ってるんだ。長い足でさっさと歩いてしまう虎井くんには、私の足の長さの問題でなかなか追いつけない。
「ごめん」
虎井くんは、急に立ち止まった。それを追いかけていた私は、勢い良くその大きな背中に額をぶつけてしまう。
「……わっ」
「俺。歩くの早い?」
今までが嘘だったように気遣うようにして、私の顔を覗き込んだ。
あまりにも顔が近くすぎて、戸惑ってしまった。顔が近い。近い。近くて、早く離して欲しい。
「う、うん」
虎井くんは、焦っている私の気持ちを知ってか知らずか、おもむろにパッと顔を離した。
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