ときめき♥沼落ち確定★婚約破棄!

待鳥園子

文字の大きさ
19 / 20

19 難易度高すぎミッション①

しおりを挟む
 ここは、デストレ城にある一室。私に会うために、彼女はわざわざ来てくれた。

「やっぱり……レティシア様は、転生をしていたんですね。あれから動きがおかしいと思いました。まさかとは思っていたんですけど」

 この世界で珍しい日本人らしい顔を隠すためか、目深に被ったフードを払い除けた聖女ミユさんは黒髪ボブの可愛らしい人だった。

「初めまして。あの、ミユさん? 私……婚約破棄のあの場で、前世の記憶を取り戻したの……状況からみて私が悪役令嬢だと思ったんだけど、これって一体、何がどうなっているの?」

 私の話を聞いてから、彼女は脱力したように、ソファにへたり込んだ。えっ……何。私、そこまで酷いこと言った?

「ああ。そういうことですか。レティシア様はこの異世界が何か知らず、乙女ゲームか何かだと勘違いされていたと?」

「そうです……よく見る婚約破棄シーンだと思って……」

 衝撃を受けたらしいミユさんは何度か深呼吸をして、私に話をしてくれた。

「えっとですね……何から説明すれば良いものか。まず、レティシア様は悪役令嬢でなんてある訳なく、この物語のヒロインです。きっと、何か誤解されていると思いますが、私は物語を盛り上げるためだけの単なるモブ聖女です」

 今までずっと『こうでしょう!』と意気揚々と思っていたこと、全てを否定される内容に、私は驚きおののくしかない。

「え。嘘でしょう。聖女様が、モブなの? どういうこと? これは、何の異世界なの?」

 私の記憶にはまったくないけれど、現代から異世界転移した彼女には、この世界が何かを知っているようだ。

 真面目な顔をして頷いたミユさんは、私の質問に答えてくれた。

「この異世界は、珍しい恋愛要素多めの女性視点ハイファンタジーで大人気な『双頭の竜』という長編小説の世界です。開始の婚約破棄シーンは、数多ある異世界転生もの名作に敬意あるオマージュで、物語に入りやすいと世間では好評でした」

 ……オマージュ? 異世界恋愛ものの婚約破棄シーンの入り、確かに多いけど……多いけど……あの冒頭は普通なら、恋愛ものだと思う人多いと思う。

「はっ……ハイファンタジーの小説世界なの? 異世界恋愛物ではなくて?」

 あのシーンから始まったら、誰だって異世界恋愛ものだと思うよ。ソースは私。

「ええ。何なら、リアムとヴィクトルの二人をメインヒーローとした、逆ハーものでもあります。後は、神官ローエングリンと魔剣士アッシュが居て……もし、レティシア様がまだ彼らに会っていないなら、早々に二人に会わないと物語が詰んでしまいます」

 こ、これが異世界転生もの伝説の『このままだと物語詰んじゃう』発言っ……そうなんだ! 私がもし、物語ヒロインだとして、自覚ないおかしな動きをすると、必須フラグ立てを取りこぼしてそうなるよね。

「まっ……待って。待って。少し待って。とは言え、ヒロインの私は、ラストで最終的には、どちらかを選ぶんだよね? リアムとヴィクトル、どちらと結ばれるの?」

 これを、まず聞いておきたい。だって、結局のところそちらと結ばれるなら、先に結ばれておいた方が誠実だと思うし。

 ミユさんは難しい表情で頷き、とんでもないことを教えてくれた。

「実は『双頭の竜』は、私がここに来る前もまだ続いていて、未完なんです。けど、レティシア様がもし物語途中でどちらかを選んでしまうと、片方が闇堕ちします」

 悲しそうなミユさんに、私は驚くことしか出来なかった。

「……え? けっ……けど、選んでないって、さっき」

 物語は、未完なんだよね? だとすると、誰かと一時でも結ばれていると、おかしいよね?

「IFルートで、そういう結末があったんです。途中でリアム様を選んでしまったら、ヴィクトルがリアムを殺してしまうんです。それは、夢オチだったんですが、レティシア様がそうすると、きっとそうなるだろうと思わせてしまうくらいのリアルな夢で……」

「……物語が終わる前に片方を選んでしまうと、そうなるぞって言う、創作者からの警告めいたものだったってこと?」

 創作者……異世界の神、こっ……怖いー! となると、問題解決するまでに、レティシアつまり私は、どちらも選べないってことなの?

「ええ。ですから、レティシア様はこれから巻き起こる国家転覆の危機を何とか凌ぎながら、あの二人の間をのらりくらりして乗り切ってください!」

 ありえない難易度高すぎ案件をお願いされた私は、慌ててぶんぶんと首を横に振った。

「あんな、近い距離感で? 無理! 無理っ……だって、今の段階で、かなり糖度高いこと言うんだよ? まともな恋愛経験ない私はときめき過ぎて、心臓発作起きちゃう寸前だよ? ここから、あの人たちと関係が進んだらどうするの?」

 しっ……死んじゃう。ときめき過ぎて死んじゃうなんて、ある意味幸せかもしれないけど、絶対に嫌なんだけど!

 確かに女性は昼ドラっぽいドロドロの恋愛模様が好きかもしれない……但し、ヒロインは自分でないに限る。

「ええ。そうです。けどそれは、恋愛要素を濃くして女性読者を取り入れるための物語の仕様なので、これはもう仕方ありません。レティシア様がそうしないと、世界が滅ぶんです。この異世界の生物全滅です。どうにかして、耐えてください」

 どうにかして……耐えてください? 完全なる三角関係っぽい微妙な状況を? この世界、全ての生き物のために?

 おかしいおかしいおかしい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はやめて、侯爵子息になります

立風花
恋愛
第八回 アイリス恋愛ファンタジー大賞 一次選考通過作品に入りました!  完結しました。ありがとうございます  シナリオが進む事のなくなった世界。誰も知らないゲーム後の世界が動き出す。  大崩落、王城陥落。聖女と祈り。シナリオ分岐の真実。 激動する王国で、想い合うノエルとアレックス王子。  大切な人の迷いと大きな決断を迫られる最終章! ーあらすじー  8歳のお誕生日を前に、秘密の場所で小さな出逢いを迎えたキャロル。秘密を約束して別れた直後、頭部に怪我をしてしまう。  巡る記憶は遠い遠い過去。生まれる前の自分。  そして、知る自分がゲームの悪役令嬢であること。  戸惑いの中、最悪の結末を回避するために、今度こそ後悔なく幸せになる道を探しはじめる。  子息になった悪役令嬢の成長と繋がる絆、戸惑う恋。 侯爵子息になって、ゲームのシナリオ通りにはさせません!<序章 侯爵子息になります!編> 子息になったキャロルの前に現れる攻略対象。育つ友情、恋に揺れる気持<二章 大切な人!社交デビュー編> 学園入学でゲームの世界へ。ヒロイン登場。シナリオの変化。絆は波乱を迎える「転」章<三章 恋する学園編> ※複数投稿サイト、またはブログに同じ作品を掲載しております

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

【完結】お父様(悪人顔・強面)似のウブな辺境伯令嬢は白い?結婚を望みます。

カヨワイさつき
恋愛
魔物討伐で功績を上げた男勝りの辺境伯の5女は、"子だねがない"とウワサがある王子と政略結婚結婚する事になってしまった。"3年間子ども出来なければ離縁出来る・白い結婚・夜の夫婦生活はダメ"と悪人顔で強面の父(愛妻家で子煩悩)と約束した。だが婚姻後、初夜で……。

なんと、世界を滅ぼすはずの魔王が仲間になりたそうに、こちらを見ています。仲間にしますか?→良い子に出来るなら、私が養ってあげる。

待鳥園子
恋愛
超長編ハイファンタジー小説ヒーローの幼馴染み役、彼には全く気がつかれることなく失恋する切ない担当いじらしいサブヒロインに転生してしまった。 どうせ勇者レックスは将来的には可愛い子ばかりのハーレム形成するし、幼馴染み魔法薬師デルフィーヌの主な役目と言えば恋のライバルメインヒロインの命を助ける魔法薬を作る程度。 だとしたら、私って居なくても大丈夫だよね? 物語に関係なく自分は幸せになろうと努力している途中、近い将来世界を滅ぼすはずの魔王ギュスターヴが道ばたに転がって居て……。 自分が居なくても物語が進むのなら早々に役目を抜けて勝手に幸せになろうと考えていた転生ヒロインが、無垢で純粋な魔王の心を無自覚に撃ち抜き、世界で一番についでに勇者にも溺愛されていることに気がつかない

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

逆転の花嫁はヤンデレ王子に愛されすぎて困っています

蜂蜜あやね
恋愛
女神の気まぐれで落ちた花嫁を、王子は決して手放さない――。 かつて“完璧少女リリアンヌ様”と称えられたリリーは、 ある日突然、神のいたずらによって何もできない“できない子”に逆転してしまった。 剣も、誇りも、すべてを失った彼女のそばに現れたのは、 幼馴染であり、かつて彼女の背を追い続けていた王子アシュレイ。 誰よりも優しく、そして誰よりも歪んだ愛を持つ男。 かつて手が届かなかった光を、二度と失いたくないと願った王子は、 弱ったリリーを抱きしめ、囁く。 「君を守る? 違うよ。君はもう、僕のものだ。」 元完璧少女リリアンヌと幼馴染のちょっと歪んだ王子アシュレイの逆転恋愛ストーリーです

婚約者が最凶すぎて困っています

白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。 そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。 最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。 *幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。 *不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。 *カクヨム。小説家になろうにも投稿。

処理中です...