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10 未来の話
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人目を避け客席の裏側の廊下へと行き振り向けば、イーサンは予想通り私の後を追って来た。
「……イーサン。良い加減にして。私たち、まだ他人のはずだけど?」
私は王太子ギャレット殿下の婚約者……そして、爵位を叙爵されたばかりの目の前のイーサンに恋をして、涙ながらに彼を捨てるはずの女。
けれど、それはまだ未来の話のはずだ。
今こんな場所で会っているのが知られてしまうと、良くない。
「ああ。まだ他人だ。だが、未来の妻の体に傷が付いてしまうのは、とても見ていられなくてね」
イーサンは無遠慮に私に近づき、首に掛けてあるネックレスを持ち上げた。
私自身には見えないけれど金に反応して、肌が炎症を起こし赤くなっていると思う。いつもは化粧室でおしろいをはたいて誤魔化すのだけど、めざとい彼には見つかってしまったようだ。
「これは、いけない。こうなれば無理もないが、体調も悪いだろう。隠そうとしていたようだが、気分も悪そうにしていたな……金が肌に合わないのであれば、俺が何か同じようなものを贈ろうか?」
「いいえ……結構よ。仕事の報酬としてのお金なら、頂くわ。けれど、貴方から施しを受け取るなど、私はしたくないわ」
イーサンは大富豪で私が今付けているような高価なネックレスも、同じようなものだって、何個でも望み通り贈ってくれることだろう。
けれどそれは、彼の恋人でも妻でも愛人でもないのなら、むやみやたらと高価な物を貰うべきではない。
借りはいつか、返さなければならないのだから。返せなくなって首が回らなくなるのは、借金だけでもうこりごりよ。
彼のような金勘定にうるさい男においては、特にそう思う。今まさにお金に困っている私であっても、無料より怖いものはないって思うもの。
イーサンはこのまま予定通り私と恋に落ちる演技をし結婚すれば、王妃から報酬に男爵位を賜り、落ちぶれていると言えど侯爵令嬢を妻に出来る。
唸るほどにお金を稼ぎ、貴族としての爵位が喉が出るほど欲しがっていた商人の彼だって、悪くない取引だと踏んだのだろう。
未来の王の怒りを一時的に買ったところで、彼とて次の相手が出来ればすぐに冷めてしまうだろうと。
「何故……そうなるとわかっていて、そのネックレスを身に付ける? 体を痛めつけたいのか? 美しい白い肌なのに、跡が残ってしまうだろう……」
「何故ですって? イーサンだって、良く知っているのではないかしら。私の肌に合わないからと、婚約者の証として貰ったネックレスの作り直しをお願い出来る身分ではないことを」
何もかもをすべて知る共犯者のくせに何を今更と私が眉を寄せれば、イーサンはわざとらしいくらい眉を下げ悲しそうな顔をして言った。
「それでもだ。自分の婚約者の情報だって、良く調べないとは……ローレンが我慢を重ねていることは、君を良く見ていればわかることだろうに」
そういった鈍いところのあるギャレット様のおかげで、私の下手な演技だってバレていない。それは、私たちのような後ろぐらい立場にあるのならば、喜ぶべきことのはずなのに。
喜べるはずもない。
面白がっているイーサンの言いようが癇に障った私は、彼から距離を取って睨んだ。
「ギャレット様は何も悪くありません。私が何も言わないのだから……これも何もかも、私の事情よ」
「おいっ……そこのお前、俺の婚約者に何をしている」
イーサンの向こう側からギャレット様の声が、聞こえて。
私とイーサンの二人は目を合わせ、すぐに離れると他人を見るような表情へと戻った。いけない。ここで下手を踏めば今までの苦労、何もかもが無駄になってしまう。
「……イーサン。良い加減にして。私たち、まだ他人のはずだけど?」
私は王太子ギャレット殿下の婚約者……そして、爵位を叙爵されたばかりの目の前のイーサンに恋をして、涙ながらに彼を捨てるはずの女。
けれど、それはまだ未来の話のはずだ。
今こんな場所で会っているのが知られてしまうと、良くない。
「ああ。まだ他人だ。だが、未来の妻の体に傷が付いてしまうのは、とても見ていられなくてね」
イーサンは無遠慮に私に近づき、首に掛けてあるネックレスを持ち上げた。
私自身には見えないけれど金に反応して、肌が炎症を起こし赤くなっていると思う。いつもは化粧室でおしろいをはたいて誤魔化すのだけど、めざとい彼には見つかってしまったようだ。
「これは、いけない。こうなれば無理もないが、体調も悪いだろう。隠そうとしていたようだが、気分も悪そうにしていたな……金が肌に合わないのであれば、俺が何か同じようなものを贈ろうか?」
「いいえ……結構よ。仕事の報酬としてのお金なら、頂くわ。けれど、貴方から施しを受け取るなど、私はしたくないわ」
イーサンは大富豪で私が今付けているような高価なネックレスも、同じようなものだって、何個でも望み通り贈ってくれることだろう。
けれどそれは、彼の恋人でも妻でも愛人でもないのなら、むやみやたらと高価な物を貰うべきではない。
借りはいつか、返さなければならないのだから。返せなくなって首が回らなくなるのは、借金だけでもうこりごりよ。
彼のような金勘定にうるさい男においては、特にそう思う。今まさにお金に困っている私であっても、無料より怖いものはないって思うもの。
イーサンはこのまま予定通り私と恋に落ちる演技をし結婚すれば、王妃から報酬に男爵位を賜り、落ちぶれていると言えど侯爵令嬢を妻に出来る。
唸るほどにお金を稼ぎ、貴族としての爵位が喉が出るほど欲しがっていた商人の彼だって、悪くない取引だと踏んだのだろう。
未来の王の怒りを一時的に買ったところで、彼とて次の相手が出来ればすぐに冷めてしまうだろうと。
「何故……そうなるとわかっていて、そのネックレスを身に付ける? 体を痛めつけたいのか? 美しい白い肌なのに、跡が残ってしまうだろう……」
「何故ですって? イーサンだって、良く知っているのではないかしら。私の肌に合わないからと、婚約者の証として貰ったネックレスの作り直しをお願い出来る身分ではないことを」
何もかもをすべて知る共犯者のくせに何を今更と私が眉を寄せれば、イーサンはわざとらしいくらい眉を下げ悲しそうな顔をして言った。
「それでもだ。自分の婚約者の情報だって、良く調べないとは……ローレンが我慢を重ねていることは、君を良く見ていればわかることだろうに」
そういった鈍いところのあるギャレット様のおかげで、私の下手な演技だってバレていない。それは、私たちのような後ろぐらい立場にあるのならば、喜ぶべきことのはずなのに。
喜べるはずもない。
面白がっているイーサンの言いようが癇に障った私は、彼から距離を取って睨んだ。
「ギャレット様は何も悪くありません。私が何も言わないのだから……これも何もかも、私の事情よ」
「おいっ……そこのお前、俺の婚約者に何をしている」
イーサンの向こう側からギャレット様の声が、聞こえて。
私とイーサンの二人は目を合わせ、すぐに離れると他人を見るような表情へと戻った。いけない。ここで下手を踏めば今までの苦労、何もかもが無駄になってしまう。
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