限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

待鳥園子

文字の大きさ
28 / 60

28 執着

しおりを挟む
「久しぶりね。ローレン。随分とギャレットが、貴女を気に入ったようね。驚いたわ」

 それはもう何ヶ月か前にも報告したことだけど、お前程度が自惚れるなと一蹴したのは貴女ですよね?

 私たちの関係性でそんな生意気な返しを出来るはずもなく、私は黙ったままで頭を下げた。

「アニータ様。今のままでは、計画に支障があるのでは? 僕の目から見るとローレンは必死で距離を置こうとしていましたが、彼の方から距離を詰めていたようでした」

 イーサンは私の隣で跪き、頭を下げたままでそう言った。彼は平民なので、王妃に許されるまでは頭を上げられないのだ。本来なら王族にこうして拝謁が許されるのは、貴族だけだから。

 待って。ということは、イーサンは先ほどの私たちを見ていたってことかしら。

「……そうね。あの子がローレンにこれ以上執着すると、厄介だわ。デビュタントの日まで待てないわね。ベルセフォネの誕生日がもし来れば、あの子が王太子妃に内定していると言いやすいわ。もう少し、辛抱なさい。良いわね。ローレン」

 王妃は一方的にそう言ってから立ち上がると、こちらからの答えを待つことなく去って行った。

「……婚約者でなくなる時期が早まったのは、ローレンにとって良いこと?」

 完全に足音がなくなってから、イーサンは顔を上げてから悪戯っぽく笑った。

 この人もこういう、子どものような無邪気な笑顔を見せるんだ。

 非情で自分の利にならないものは容赦なく切り捨てているようだから、こういった可愛らしい表情を見せるとは思わなかった。

「はい……正直、このまま……ギャレット様の傍に居ることは、辛いです。いずれ裏切らなければならないから」

「そのまま、婚約者で居れば? あの色ボケ王子に全部話して、味方になって貰えば良い。王妃とて、王には逆らえまい」

 なんでもないことのように言ったイーサンが信じられなくて、私は驚いた。

 彼は何を言っているんだろう。

 だって、それって……姪を王太子妃にしたい王妃様を裏切り、報酬を貰えなくなることを意味している。

 借金は、確かにどうにかなるのかもしれない。君主たる王族であれば、見たこともないような財産を手にしているだろう。

 それで、助けて貰えるかしら?

 ……ううん。王妃様はクインが侯爵となるまで援助してくれることも約束してくれた。

「……いいえ。私は約束された報酬が欲しいです。もし、王から王太子を騙した罪で、メートランド侯爵家へ罰が下されれば? それを試してみるには、あまりに未確定な要素が多すぎます」

「やれやれ。素直にならない子は、素直な子には勝てないよ」

 イーサンはきっと、王妃様の企みもどうでも良いのだろう。ここで男爵位を貰えなくても、いずれどうとでもなると思っている。彼にはそれだけの実力があるから。

 私には、何もない。

「……私は父や弟を自分のために、踏みつけにすることはありえません」

「そう? まあ、俺は別にどっちでも良いけどね」

 イーサンはそう言い残して、去って行った。

 庭園の中は花盛りで、もうすぐ冷たい冬がやって来る。私は心を凍らせて、自分に与えられている役目を果たす。

 家族だけのためでもない。何よりも、自分が助かるために。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】異世界転移したら騎士団長と相思相愛になりました〜私の恋を父と兄が邪魔してくる〜

伽羅
恋愛
愛莉鈴(アリス)は幼馴染の健斗に片想いをしている。 ある朝、通学中の事故で道が塞がれた。 健斗はサボる口実が出来たと言って愛莉鈴を先に行かせる。 事故車で塞がれた道を電柱と塀の隙間から抜けようとすると妙な違和感が…。 気付いたら、まったく別の世界に佇んでいた。 そんな愛莉鈴を救ってくれた騎士団長を徐々に好きになっていくが、彼には想い人がいた。 やがて愛莉鈴には重大な秘密が判明して…。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

祝福のキスで若返った英雄に、溺愛されることになった聖女は私です!~イケオジ騎士団長と楽勝救世の旅と思いきや、大変なことになった~

待鳥園子
恋愛
世界を救うために、聖女として異世界に召喚された私。 これは異世界では三桁も繰り返した良くある出来事のようで「魔物を倒して封印したら元の世界に戻します。最後の戦闘で近くに居てくれたら良いです」と、まるで流れ作業のようにして救世の旅へ出発! 勇者っぽい立ち位置の馬鹿王子は本当に失礼だし、これで四回目の救世ベテランの騎士団長はイケオジだし……恋の予感なんて絶対ないと思ってたけど、私が騎士団長と偶然キスしたら彼が若返ったんですけど?! 神より珍しい『聖女の祝福』の能力を与えられた聖女が、汚れてしまった英雄として知られる騎士団長を若がえらせて汚名を晴らし、そんな彼と幸せになる物語。

次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ
恋愛
過去の恋愛から恋をすることに憶病になっていた河野梨音は、会社の次期社長である立花翔真が女性の告白を断っている場面に遭遇。 なりゆきで彼を助けることになり、お礼として食事に誘われた。 その時、お互いの恋愛について話しているうちに、梨音はトラウマになっている過去の出来事を翔真に打ち明けた。 話を聞いた翔真から恋のリハビリとして偽装恋愛を提案してきて、悩んだ末に受け入れた梨音。 偽恋人として一緒に過ごすうちに翔真の優しさに触れ、梨音の心にある想いが芽吹く。 だけど二人の関係は偽装恋愛でーーー。 *他サイト様でも公開中ですが、こちらは加筆修正版です。 性描写も予告なしに入りますので、苦手な人はご注意してください。

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...