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11:長閑な監視
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銀髪の騎士は、レイたちを連れて鐘楼から降りたあと、物言いたげな周囲の視線に構うことなく歩き続けた。
やがて、銀髪の騎士と同じ騎士服を纏う男の前で立ち止まった。集団から離れ、周囲を見通せる場所で木にもたれている。
遠目で確認した限り、時折口を動かしては空気の塊をそこかしこに飛ばしている。恐らく全体の監督をしているのだろう。その器用な風の使い方と魔力の質を見て、先ほどの竜巻を起こした人物は彼だと確信した。
全体の監督しているところを見ると、この騎兵団の中でも地位の高い人物らしい。
「ヘル。今からこの2人の監視を命じる。旅人だ。隔離して他の者を近づけさせるな」
銀髪の騎士がレイたちの監視を命じた相手は、周囲の騎士よりも飛び抜けて小柄な少年である。
「隊長自ら残党探し赴いたかと思えば、拾い者ね……。分かった。引き受けるよ。隊長が戻るまで色々と聞きたいことも我慢しておく」
その言葉から察するに上官である銀髪の騎士に対する少年騎士の態度は、外見からして部下だと言うのに、上官に対するというより対等で気安いものだった。
少年騎士の言動はいつもこうなのだろうと想像できるほど堂に入っていて、違和感すら抱かせない。
銀髪の騎士は「ヘル」と呼んだ少年騎士にレイたちの監視を任せると、踵を返し、髪を揺らして賊が拘束されている場所へ颯爽と走り去る。
その後ろ姿をレイはしばらく見つめていた。
少年騎士に声を掛けられ、レイとファラルが案内されたのは騎士や賊が乗っていた馬が繋がれている場所だった。ここはなら賊たちが拘束されている場所からも施設の人間が集っている場所からも距離がある。
微妙な立場の人間を隔離するにはうってつけの場所なのだろう。
少年騎士は、レイとファラルを監視というよりも観察と言った方が正しい興味深そうな目を向けてきたが、宣言通りあれこれと話しかけてはこなかった。もし、レイの方から話しかけたとしても、恐らく会話に発展することはないだろう。
のんびりと草を食む馬たちは、昨夜の強行軍をものともしていないらしい。到着してからは突入までの間にしっかりと休み手入れをして貰ったのか、毛艶が良く興奮している様子もない。
これが日頃から訓練を受けている騎士の馬だけであったのならレイも疑問に思わなかったが、騎士の人数よりも馬の頭数の方が多い。恐らく昨夜、賊によって乗り潰されて蹲っていた馬もここに居るのだろう。ろくに訓練などされていないであろう賊の馬まで騎士の馬と変わらない様子に見えた。
そうなるとその不自然さの方が気になってしまう。安定した集団であることに感化されて興奮していないとも考えられるが、どの馬も例外なく落ち着いているというより安心していた。
興味の赴くままに草を食む馬たちの中にそっと入ってみた。少年騎士は制止せず、ファラルも視線を向けるだけで付いて来なかった。
監視役の少年騎士が制止しなかったのは、レイが馬に危害を加えないと判断したからだろう。ファラルの場合は、彼が馬に近づいていくと馬の方が本能的に恐れられてしまうことが多いからという理由である。
昨夜の無理に走らされた状態を見て衰弱死してもおかしくないと思っていた賊の馬たちが、一日と経たずここまで元気かつ穏やか、見知らぬ馬の集団に混じっている状況をにわかには信じがたい。
頭の中でその理由の予想立てをしていると、近くに居た馬がレイにすり寄って来たので、その体を撫でてやる。
ふと見やるとファラルを気にして、その周りをうろついている勇気ある馬も居た。
それを見て、レイは自分の仮説を確信する。
(今ではほとんど居なくなったと聞いていたけど)
あの特質をこれほど受け継いでいる人間が、まだ残っているとは知らなかった。
ただ、わざわざ伝えてもらうほどの情報でもないことは分かっている。
(訳ありの人ばかりみたい)
あの銀髪の騎士も、監視役の少年騎士も、この馬を手入れした者も。
きっと他にも、訳ありの人たちと出会うだろう。
自然な状況で不自然に。
それは、彼らによって決められること。
これは、私が受け入れたこと。
レイと彼らの間にあるのは、利害の一致で十分だった。
やがて、銀髪の騎士と同じ騎士服を纏う男の前で立ち止まった。集団から離れ、周囲を見通せる場所で木にもたれている。
遠目で確認した限り、時折口を動かしては空気の塊をそこかしこに飛ばしている。恐らく全体の監督をしているのだろう。その器用な風の使い方と魔力の質を見て、先ほどの竜巻を起こした人物は彼だと確信した。
全体の監督しているところを見ると、この騎兵団の中でも地位の高い人物らしい。
「ヘル。今からこの2人の監視を命じる。旅人だ。隔離して他の者を近づけさせるな」
銀髪の騎士がレイたちの監視を命じた相手は、周囲の騎士よりも飛び抜けて小柄な少年である。
「隊長自ら残党探し赴いたかと思えば、拾い者ね……。分かった。引き受けるよ。隊長が戻るまで色々と聞きたいことも我慢しておく」
その言葉から察するに上官である銀髪の騎士に対する少年騎士の態度は、外見からして部下だと言うのに、上官に対するというより対等で気安いものだった。
少年騎士の言動はいつもこうなのだろうと想像できるほど堂に入っていて、違和感すら抱かせない。
銀髪の騎士は「ヘル」と呼んだ少年騎士にレイたちの監視を任せると、踵を返し、髪を揺らして賊が拘束されている場所へ颯爽と走り去る。
その後ろ姿をレイはしばらく見つめていた。
少年騎士に声を掛けられ、レイとファラルが案内されたのは騎士や賊が乗っていた馬が繋がれている場所だった。ここはなら賊たちが拘束されている場所からも施設の人間が集っている場所からも距離がある。
微妙な立場の人間を隔離するにはうってつけの場所なのだろう。
少年騎士は、レイとファラルを監視というよりも観察と言った方が正しい興味深そうな目を向けてきたが、宣言通りあれこれと話しかけてはこなかった。もし、レイの方から話しかけたとしても、恐らく会話に発展することはないだろう。
のんびりと草を食む馬たちは、昨夜の強行軍をものともしていないらしい。到着してからは突入までの間にしっかりと休み手入れをして貰ったのか、毛艶が良く興奮している様子もない。
これが日頃から訓練を受けている騎士の馬だけであったのならレイも疑問に思わなかったが、騎士の人数よりも馬の頭数の方が多い。恐らく昨夜、賊によって乗り潰されて蹲っていた馬もここに居るのだろう。ろくに訓練などされていないであろう賊の馬まで騎士の馬と変わらない様子に見えた。
そうなるとその不自然さの方が気になってしまう。安定した集団であることに感化されて興奮していないとも考えられるが、どの馬も例外なく落ち着いているというより安心していた。
興味の赴くままに草を食む馬たちの中にそっと入ってみた。少年騎士は制止せず、ファラルも視線を向けるだけで付いて来なかった。
監視役の少年騎士が制止しなかったのは、レイが馬に危害を加えないと判断したからだろう。ファラルの場合は、彼が馬に近づいていくと馬の方が本能的に恐れられてしまうことが多いからという理由である。
昨夜の無理に走らされた状態を見て衰弱死してもおかしくないと思っていた賊の馬たちが、一日と経たずここまで元気かつ穏やか、見知らぬ馬の集団に混じっている状況をにわかには信じがたい。
頭の中でその理由の予想立てをしていると、近くに居た馬がレイにすり寄って来たので、その体を撫でてやる。
ふと見やるとファラルを気にして、その周りをうろついている勇気ある馬も居た。
それを見て、レイは自分の仮説を確信する。
(今ではほとんど居なくなったと聞いていたけど)
あの特質をこれほど受け継いでいる人間が、まだ残っているとは知らなかった。
ただ、わざわざ伝えてもらうほどの情報でもないことは分かっている。
(訳ありの人ばかりみたい)
あの銀髪の騎士も、監視役の少年騎士も、この馬を手入れした者も。
きっと他にも、訳ありの人たちと出会うだろう。
自然な状況で不自然に。
それは、彼らによって決められること。
これは、私が受け入れたこと。
レイと彼らの間にあるのは、利害の一致で十分だった。
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