血の契約

吉村巡

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2:岬にある歴史

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 岬の建物に辿り着いたふたりの目の前には、柔らかい笑みを浮かべる男性が居た。

「私はここの院長のグラハムです。ここは旅人の滞在も歓迎しております。その代わりと言っては何ですが、子供達に旅の途中で聞いた話などを聞かせてやってくれませんか? それから、この施設は私の他には女手ばかりですから薪割りなどを手伝っていただけると、ありがたいのですが」

 初老ゆえに白髪が混じった髪をしたグラハムにそう言った。
 前半はレイに、後半はファラルに向けられた言葉だろう。マントは着たままだが礼儀としてフードは脱いでいたレイは、

「私の様な若輩者の語る話で、子供たちが楽しんでくれるなら喜んで。それに、ファラルは力持ちですから、薪割りは得意です」

 と、人好きのする笑顔で答えた。

「期待しております」

 グラハムはその柔和な顔に微笑みを浮かべると、魔道具を使って人を呼んだ。
 呼ばれたのは、グラハムより一回りほど歳下らしい中年の女性だった。

 院長の顔を見て、すぐに状況を察したのか彼女はにこやかな顔でレイたちに自己紹介をした。

「セシルです。分らない事があれば、なんでも聞いて下さいね」

 港町という風土ゆえか、ここの人たちは想像以上にあっさりとレイたち滞在を受け入れた。
 院長室を出て、セシルに空いている部屋へと案内される道すがらレイは彼女に、

「あの、セシルさん。この施設が建てられたのは何のためですか? 町で、泊まるならここに向かうように言われましたが、教会とは違う目的の施設のようですし」

 と、さっそく質問した。すると、セシルは快く答えてくれた。

「何のため、と一口にいうのは難しくて……。託児所と診療所、避難所、交流所なんかをひっくるめた施設なんです。町の教会が古くて小さいので、教会の代わりに誰もが泊まれる宿泊所にもなってますね。こう見えても歴史は結構古いんですよ。大陸にある国が帝国ひとつだった頃、帝国の指示で建てられた施設の流れを汲んでいますから」
「そんなに昔からあるんですか?」
「施設自体は、老朽化の度に建て直していますけどね」

 親が育てられない子供を育てるのだから孤児院かと思っていたが、違ったらしい。詳しく聞いていなかったので分からなかった。

「元々は、天変地異によって大陸が2つに分かれてしまったとき、大陸が分かたれたことで離れ離れになりながらも、再会を願って決死の覚悟であちらの大陸から海を渡り、この地へ辿り着いた人々を保護する施設だったと聞いています」

 思っていたよりも壮大な話に、好奇心が刺激された。

「時代は変わり、あちらの大陸からここへやってくる人はいなくなりましたが、ここは海が近いこともあって、漁が盛んになりました。漁の中には海へ出たまま何日も帰らないほど、遠くでする漁もあるんです。ですがその分、命の危険もあります。親や働き手を失って生活が難しくなった人たちが身を寄せる場所が必要だということで、今のような形になっていったんですよ」
「そんな経緯が……。教えてくださって、ありがとうございます」

 名目上は託児所だが、事情によっては孤児でも家族でも丸ごと引き受ける場所らしい。
 そこに診療所や宿泊所も合わせるとなると、託児所だけだと思えば大きすぎると思った建物の規模に納得がいった。
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