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第一部
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しおりを挟む枢機卿がルーに平手打ちされるという奇妙な出来事が起きた後。
意識を取り戻した枢機卿に状況が伝えられると、大きな天幕の中で作戦会議が開かれることとなった。
衝撃を受けたことで兵士長が正気に戻り、魔物を前に兵士の陣頭指揮を執っている。
会議に参列できる者は、主に聖魔法が扱えることを前提として神官や聖騎士が中心と決められている。
その中に、聖女であるメリシャの姿も枢機卿の近くで佇む。
「先程、聖獣様より敵の情報を賜った。敵は中程度の聖魔法で撃退が可能とのことである。」
枢機卿の言葉を誰も疑うことなく、耳を傾けるその姿勢は完璧であった。
枢機卿自身が威厳を保とうと内心で、冷や汗を掻いていることを除けばーー。
「現在は聖獣様の結界により、敵の進軍が一時的に停滞している。被害を増やさないために、早急に退いてもらう方が良いだろう。諸君らには交代で敵を撃退してもらいたい。以上。」
その後、事前に決められた班で準備が整った順に前線へと向かっていく。
後から向かう班は、物資や道具の補給が行われる天幕へ向かう。
会議場となった天幕には、枢機卿とメリシャとルーのみとなった。
ネリは外で羽休めをしているため、今ここにはいない。
「お養父様。お疲れではないですか。」
『休める内に休んでおくと良いぞ。まだ先は長そうだからな。』
天幕から誰も居なくなると、素で枢機卿へメリシャとルーが問いかけた。
「いえいえ。お恥ずかしい御姿を見せましたが、体調に問題はありません。…メリシャにも、迷惑を掛けてすまなかった。」
枢機卿は申し訳なさそうな表情で頭を掻いているが、ルーへ向ける視線は何かを訴えたいような淡い雰囲気を纏っている。
それは先程の件に対してなのか、メリシャへ寄り添って煽るような言動に対してなのか、正確に判断ができないため声に出す気はなさそうだった。
そんな枢機卿の視線を気にした感じもなく、ルーはただメリシャに優しく擦り寄っていた。
魔物との交戦が始まったのか、聖騎士の怒声や喧騒が天幕の中まで聞こえてくる。
耳を澄ませなくても聞こえてしまうほど、激しい攻防戦だという実感と緊張が生まれる。
ルーの背に寄り添うことで緊張を解すメリシャの姿に、枢機卿は掛ける言葉を忘れてしまった。
その間、神官の放った聖魔法が着弾したことによる爆音と爆風に曝され、聖騎士の武具による金属音が外では鳴り響いていた。
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※お知らせ※
次回更新日程:2025年10月10日 17:00・予定
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