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第一部
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しおりを挟む「枢機卿殿。兵士長より、報告を伝達しにきました。聖女様も、お疲れ様でございます。」
ルーがメリシャに寄り添う、幸福な時間は一人の兵士が天幕へ入ってきたことで終わりを迎えた。
同時にネリも羽休めに入ってきたため、ルーが真面目そうな顔付きで出迎えた。
そんなルーをネリが訝しげに見咎めたが、メリシャの近くへ静かに舞い降りる。
「防壁を挟んでの防衛戦は順調とのこと。未だ魔物の減少は確認できておりません。倒した順に奥から押し寄せている模様です。」
「戦況は理解しました。兵士長に戦線維持と一時的な休息を挟むよう伝えてほしい。」
兵士は略式の敬礼をして、そそくさと天幕から去っていく。
ネリは第三者の兵士が天幕から完全に出ていくのを見計らい、口を開いた。
『メリシャ様。件の魔物は城壁の先に広がる森林から進軍しているようです。発生源は私の予測となりますが、迷宮である可能性があります。』
枢機卿は片眉を下げて、顎を摩った。
迷宮。
それは地中に生まれる魔物の一種であり、移動ができない代わりに魔素を用いて魔物を生み出す。
環境によって魔物の種類は大きく異なり、山や川などで様々な要因で変わることが教会によって知られている。
そして迷宮の魔物に共通することが、魔物を倒した際に死体が残らないという点だ。
迷宮の中であれば、迷宮に吸収され、再び魔物が生み出すために利用されるのだと言われている。
迷宮の外であれば、戦闘跡が残され、魔物が消失したように感じるらしい。
それと同じ状況が今回の救援要請に関わってくるのであれば、枢機卿は現状よりも恐ろしい事態へ陥るかもしれないと懸念する。
その傍らで、羽休め中のネリを労うメリシャと、その光景を眺めて若干羨ましそうなルーの姿がある。
枢機卿は万一のことがあっても、出来ることをやるだけだと言い聞かせた。
その後、ネリは再び魔物の偵察へ出掛けるため、天幕から空へ飛び立った。
メリシャと枢機卿の二人はネリの後ろ姿を見送ると、共に戦場を眺めるために移動することにした。
メリシャの若干後ろを歩くルーは人の腰くらいの大きい狼姿で、周囲に見せつける。
彼ら一行を見かけた、順番待ちをしていた交代組の聖騎士や兵士たちはその神聖さに惹かれて、その後ろ姿へ向かって、一人また一人と手を組んで拝むのだった。
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※お知らせ※
次回更新日程:2025年10月20日 17:00・予定
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