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第一部
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しおりを挟む会議用の天幕にいるのは枢機卿、兵士長、メリシャ、ネリ、ルーである。
「ネリ様。迷宮から襲撃があるのですか。」
『いいえ。襲撃の意図が分かりませんが、その線は薄いと思われる。』
兵士たちを予行練習へ誘っていた兵士長が枢機卿から呼び出され、大きな狼姿のルーの懐でお昼寝中だったメリシャは枢機卿によって運ばれた。
天幕に全員が集まった頃、メリシャが起きたことで会議が始められた。
天幕の中に置かれた机の卓上にはネリが佇み、枢機卿がネリに尋ねるのを静かに見守る、メリシャと兵士長という構図。
「では、何か別の魔物が来るのでしょうか。」
『それは不明だ。ただ周辺を飛び回った結果、魔素の奔流を見る限り、大型の何かが迷宮から出てくる可能性がある。』
枢機卿と兵士長の間で緊張が走る。
メリシャはネリを見守りつつ、ほんのり不機嫌そうなルーを宥めている。
「ーー先の魔物を知る限り、碌な魔物でないだろうと予測できるが。大型ともなれば領都を戦場にすべきではないかもしれない。」
「それもそうですね。どの道、いくら討伐隊が間引いたとしても魔物が減る兆候がありませんからね。」
兵士長は現状を整理するかのように、顎を手で摩りつつ、眉間の皺を深める。
枢機卿はそんな兵士長を一瞥する一方で、メリシャとルーの戯れを垣間見て平静を保つ。
ルーはメリシャから宥められるうちに、その気持ち良さに根負けしてリラックスしてしまっている。
そしてネリは誰の目も定まっていない時から、ルーのだらしない姿に呆れ返っていた。
あとで小言を言われる可能性が高まっていることをルーは気付かないふりを決め込んだ。
『既に手駒の消滅や魔物の掃討戦で、こちらの人員が知られている可能性もある。退路の確保を済ませながら領都を離れることが第一優先だろう。』
「それが良いでしょう。兵士長も、それで構いませんか。」
ネリは会議の決断を促し、その意図を汲み取った枢機卿が確認を取る。
兵士長は枢機卿とネリへ交互に視線を向かながら口を開く。
「私に決定権はないので問題はないだろう。この件、聖女様はどうお考えですか。我らは現場指揮官であるが、形式上であれ事実上のトップは貴女だ。」
突然話を振られたメリシャは立ち上がり、横槍を入れられたルーは兵士長への警戒と威圧を強める。
兵士長は無言で視線を固めるが、その内心で聖獣の怒りを買ったという失態を感じ取っていた。
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※お知らせ※
次回更新日程:2025年12月10日 17:00・予定
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