52 / 116
第一部
51
しおりを挟む教会では現地から得られた情報を基に、救援物資の搬送計画が練られていた。
近郊の教会へ協力要請の書簡を持たせ、早馬で急ぎで向かわせる。
「——以上であります。」
「ご苦労様です。下がって構いません。」
王宮から報告された内容に司祭は頭を抱える。
「王子は参加されないそうです。我々だけで動かねばなりません。」
それまで騒然としていた場は静まり、神官たちは顔色を悪くする。
数分に於ける沈黙は一時間のように感じられるほど体感を狂わせ、多くの者が立ち尽くした。
メリシャを連れたフォーロス枢機卿は少し哀れに思いつつ、目の前の光景に顔を背けたかった。
隠れてメリシャを護衛していた神官たちが家を出た、ルーによって数瞬の内に暴かれてしまい、表に集められていた。
隠密に長けていた自負心が打ち砕かれたからか、神獣に関われたからか、神官たちは放心状態にあった。
『さあ、邪魔者は居なくなったぞ。早う教会へ向かおうじゃないか。』
そんな彼らを前に立つ子犬の姿のルーが催促する。
枢機卿は神官たちを放置するべきか悩み、同行させる決断を下す。
ただ正気に戻すのに手間がかかってしまった事を少し後悔する枢機卿だが、全てを片付けた頃、メリシャが家を出てきた。
「お養父様。一通り済ませてきました。当分の間は問題ないかと思います。」
メリシャは枢機卿と救援へ行くため、家の整理を済ませ、ネリの結界を施していた。
出迎えた枢機卿の後ろでは、神官たちが立ち上がってお互いに身形を整えあっている。
「それでは参りましょうか、メリシャ。それから彼らも教会まで付いてくるそうですよ。」
メリシャが微笑み、枢機卿も緊張していた表情がほぐれて笑みを浮かべる。
——後日、空き家へ侵入を試みた盗人が結界で隔離され、教会の巡回が来るまで項垂れたのは別の話。
19
あなたにおすすめの小説
義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います
成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
婚約者を寝取った妹にざまあしてみた
秋津冴
恋愛
一週間後に挙式を迎えるというある日。
聖女アナベルは夫になる予定の貴族令息レビルの不貞現場を目撃してしまう。
妹のエマとレビルが、一つのベットにいたところを見てしまったのだ。
アナベルはその拳を握りしめた――
現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。
和泉鷹央
恋愛
聖女は十年しか生きられない。
この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。
それは期間満了後に始まる約束だったけど――
一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。
二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。
ライラはこの契約を承諾する。
十年後。
あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。
そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。
こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。
そう思い、ライラは聖女をやめることにした。
他の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる