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第一部
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しおりを挟む聖女と辺境伯領
後発隊が合流を果たし、荷馬車から物資の補給を済ませると、枢機卿は聖騎士を連れて砦へ赴いた。
砦側では門兵が対応に難色を示していたが、件の通行手形に記された後発隊の到着を告げると、門兵では対応できず上司が呼び出される。
「これは枢機卿。お久しぶりでございます。」
どこか低姿勢の兵士を訝しみながら、要件を告げると通行は承認された。
以前とは比べられないほどのスムーズ差に、枢機卿は邪推したが問題視することなく、許可証をもらって野営地へ戻る。
その間も砦内は会議が白熱しているのか、役職持ちの兵士が慌てている。
終始、砦の内外で何を騒いでいるのか悟ることができず、枢機卿は門兵の案内で砦の外へ出てきた。
外で待機していた聖騎士を連れて、野営地へ戻る最中、砦を振り返るが何も分からなかった。
野営地では、天幕の外で小鳥と子犬が戯れていた。
(辺境伯領で何かあったらしいな。)
(ネリ、メリシャ様へ伝えるか?)
(いや不確かなことで心配をかけることはない。砦へ赴いた枢機卿が何か掴んでいるだろう。)
(それもそうだ。)
砦にいる鳥や風から情報を集めたネリが、子犬になっているルーを突く。
その周りは自然界ならありえない光景を目の当たりにして、作業が滞るほど気が緩んでいた。
実際には聖獣なので、信徒から敬われる存在なのだが。
その近くでメリシャは神官と協力して、ルーのブラシを手入れしている。
たまにネリから注意を受けるほど、ルーは寝癖が酷い。
そのため、メリシャが定期的にブラッシングすることが日課となっていた。
最近はメリシャが学園に通う日が多く、神官たちが交代制で取り組んでいたが、メリシャ不在中は神官から逃げるため、ネリが睨みを効かせることもあった。
「ルー、おいで。ブラッシングしようね。」
呼ばれたルーはネリとの戯れを止めて、メリシャの側へ駆け寄る。
メリシャの背後で、専用のブラシを持った状態で尊さに悶える神官から日頃の苦労が窺える。
寝転がるルーのブラッシングは体格が小さくなっても役割は変わらず、メリシャが背を担当して、他の部分は神官たちが手分けして取り組まれていた。
通常ありえない緩んだ聖獣の姿に呆れながら、ルーは砦側を観ていた。
(そろそろ枢機卿が戻ってくる頃か。もう暫し和ませてやろう。)
遠くから枢機卿を乗せた馬車がゆっくりと駆けているのが見えたが、振り返った先で微笑んでいるメリシャを気遣って報せを遅らせたのだった。
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※お知らせ※
次回更新日程:2025年4月4日 17:00・予定
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